前提:行政活動における基本原則&裁量判断と考慮されるべき法の一般原則

・法律の根拠に基づき、法律に従って行ない、法律に違反すれば取消し又は無効。

・内容的に正しいだけではなく、手続的にも適正なプロセスを経ること。

行政運営の透明性(意思決定の内容及び過程が明らかである)を確保し、説明の責務を負う

前提:行政における裁量権の限界

・法の解釈・適用における裁量的判断の妥当性を担保する必要。

①   当該判断の前提となる事実の認定に誤りがないこと

②   行政が当該判断や行為を行う必要性、合理性。

③   住民全体及び当該自治体に与える影響(公共性)。

 

前提:住民訴訟について

・地方自治法第242条の2の規定では、財務会計行為が違法・不当な場合に限られ、それに該当する場合しか住民訴訟を起こせない。

・原告弁護士が当初からお話になっておられましたが、住民が勝訴することが極めて難しい訴訟事案です。

 

私の判断:町買収価格について

行政における通常買収価格で、適正と私は判断した。

・原告が主張される農地並みの買収価格は、実社会、特に行政の世界では通用しない。全国の地方自治体が常態的に設定している、買収価格を否定することになる。

・猪名川町万膳道の駅用地買収時の価格、能勢町道の駅用地買収時の価格を前提とするなら、農地並み価格はありえない価格設定です。

・原告団の皆さんは訴訟中盤には、能勢道の駅用地買収価格(宅地見込み)はお知りになっていたはず。

同様に、万膳道の駅用地買収価格(宅地見込み)もお知りになっておられます。

しかしながら、その事実を乗り越えるだけの法的根拠を、公判の中でお示しになれなかった。

・原告団の中に農地をお持ちの方はおられませんか。ご自分の農地を町の活性化のためとして、農地並み価格で買い上げる話が町から出たとき、先祖伝来受け継いできた大切な農地を手放すことができますか。まして万膳道の駅用地買収価格をお知りになっていたら。お知りにならなければ、お調べになりませんか。

 

私の判断:農地法適用の妥当性

農地法に抵触しないと判断した。

・原告団も「本事業は土地収用法第3条32の収用適格事業に該当」と認識しており、ひょうご農林機構へ原告団弁護士と同様に私も確認したが、法的根拠として農地法第5条7を適用したとされている。収用適格事業の認識に誤りがなければ、農地法第5条7の適用に問題はない。

 

私の判断:行政における裁量権の行使について

年度内購入に関する一連の行政活動は、裁量権の範囲と判断した

・訴訟公判の中で、一連の裁量権行使を不当(違法)とする証明は出来ていない。

・裁判所が裁量権の行使として、以下4点をどのように判断されるのか。

①   令和2年10月頃に年度内購入を決定したが、そのプロセスを裏付ける書類(起案書等)が存在しない。

②   令和3年1月、地権者と取り結んだ覚書の2条と5条を、変更合意書締結により削除することで、町議会用地買収審議で否決されても、可決されるまで何度でも審議にかけ続けなければならない。変更合意書締結後の覚書の意味を前提に、変更合意書締結をどのように判断されるのか。

③   令和3年3月、用地買収予算執行審議において、PFI事業者参加見込み数を示さず、PFI事業者数ではなく、PFI事業者構成会社数を公表している。

④   令和3年2月、町議会議員の覚書に関する情報公開請求を、議会審議後に再請求するよう指示し覚書を隠蔽。同年3月町議会における用地買収予算執行審議において、覚書5条で規定されている、買戻し条件をひた隠しにしている。

※平成31年3~6月、住民による道の駅移転拡大計画反対運動があり、同年秋に町議会選挙が実施され、翌令和2年3月議会で用地買収に関する債務負担行為の現年度化審議において、道の駅全予算削除が1票差で否決されていることを考えれば、町民の意思は賛否伯仲していたはず。

にもかかわらず新型コロナの先行きも見通せない中、PFI事業者への事業参加意向調査(実施は同年11月)も実施せず、令和2年10月頃福田町長のTOPダウン指示として年度内購入を決定し、同年11月宮脇副町長が地権者に公約した。

事業推進にどれほどの実現性を担保されていたのかさえ、記録が残されていない。

地権者への年度内公約する直前から実施し、概ね半月後に回収したPFI事業参加意向調査に基づき、PFI事業収益の約半分を占める温浴施設を計画から外し、フィールドアスレチック等の施設に変更している。またその時、事業参加リスクを軽減する処置として、事業破綻時清算方法を大幅譲歩(事業者有利)している。

令和3年3月用地買収予算執行審議において、PFI事業参加者を誇大(事業体としての数値ではなく、個別企業数)に報告、また覚書5条(買戻し)を既に削除したことをひた隠しし、用地買収予算執行を可決させている。

昭和30年2村合併いらい町としての体裁は整えてきたのだろうが、今事案での行政活動は、村社会(旧村落のエゴ)を引きずっていると思えるのだが。

 

結論:道の駅移転に関する住民訴訟は原告勝訴か敗訴か

原告敗訴

買収価格(農地並み価格ではなく)・農地法5条7(特例)に関して何ら問題はない。年度内購入決定判断、変更合意書締結判断、議会審議等の全てに関して、行政手続き上の甘さ、不誠実さがある。

一言で言えば、何処を向いて行政活動を行っているのか、と言うことに尽きるのでは。

しかし、あくまで年度内購入決定は政治的判断であり、裁判所は政治判断に言及することを、避けられると考えている。

あえて指摘するなら、行政に与えられた裁量権は、最低でも起案書を担保することが前提。決定行為の経緯を文書で残し、後に争点となった時、証拠となる物。その起案書を中心とした書類が不存在ということは、行政のあるべき姿を大きく逸脱している。また、令和元年9月の町議会議員選挙への露骨なまでの町の介入、覚書5条(事業者未決時解除)を一貫して隠蔽、議会審議(予算執行審議)における一連の地域振興部長の不適切な答弁など、一般社会では通用しない事案が多々起こっている。

これらに関して、裁判所がどのように判断(評価)されるのかに、私は着目している。

 

原告団の方々へ

・初めての公判時に、原告弁護士へ時系列イベント表を提供し、その後事あるごとに書簡をお送りしてきた。特に、買収価格に関して、書簡のなかで指摘もし、公判説明会の席でも指摘している。

振り返って見れば、却って私の情報提供が原告弁護士のお手を煩わしたのでは、と申し訳なく思っている。

・訴訟人の訴訟目的を深くは理解できていないが、長期にわたり当時案に時間をさいてこられたことに、敬意を表します。

 

原告控訴はありえるのか

・残念ながら原告団の上告は出来えない、と私は考えている。なぜなら、神戸地裁で展開された主張の根っこの部分が、社会常識から大きく逸脱しているのです。また、公判の中で明らかにしてゆくとされた、多くのことが何ら明らかにされていない。控訴することによって、南田原に買ってしまった用地の土地活用を、議会で真剣に議論することすら出来ない状況を、これ以上引き延ばすことは許されない、と私は思うのです。勿論、南田原の元地権者の方々へこれ以上の迷惑をかけるべきではない。特に、町に農地を売却された地権者以外で、南田原に農地をお持ちになっておられる方々の、猪名川町の活性化ではなく、南田原地区の活性化と思う夢が、消えてしまっているのですから。

 

最後に

・原告敗訴と考えていますが、用地買収価格を基本に原告が勝訴されれば、実に画期的なことだと思えます。自治省、全国の地方自治体から、大ブーイングが起こることは必定。それこそ、新聞記事となるでしょう。

 

次回は、(令和7年11月末原告団提出文書&令和8年3月19日判決分を読んで)