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江戸老人のブログ

この国がいかに素晴らしいか、江戸から語ります。




(260) 「隼」をついだスバル360

 

 今から50年前、1958年(昭和33年)に画期的なクルマができた。てんとう虫との愛称を持つ軽自動車スバル360だ。日本が世界一の品質を誇るまでの自動車生産国に、長い道程があったが、戦後13年目に登場した軽自動車は高度な技術を結集し、現在を予感させた。ちなみにこの年8月にはいまや世界中で愛好されているインスタント・ラーメンが日清食品から発売された。戦後13年目に日本自動車史に残る名車が誕生した。
 
 1954年(昭和29年)に道路交通法が改正され、軽自動車の排気量制限が、250ccから360ccに拡大され、このエンジンをもとにスバル360だけが実用に耐え、かつ当時の国民所得からでも、なんとか手の届くクルマを完成させた。営業車はともかく、普通の人が自分の乗用車を持つなど、夢のまた夢だった。



 日本のモータリゼーションは、軽自動車から始まった。造ったのは富士重工、すぐれた技術力と生産能力をもち、日本のクルマの夜明けをもたらした。富士重工は旧中島飛行機であり、大東亜戦争中に一式戦闘機「隼(はやぶさ)」や、100式爆撃機「呑龍(どんりゅう)」を造っている。 なお隼は陸軍用であり、同じ機を海軍の艦上戦闘機にしたのがゼロ戦である。

 富士重工は終戦の翌年6月にはラビット・スクーターを造り、1945年(昭和24年)にはリア・エンジンのバス「ふじ号」を送り出し、1954年(昭和29年)にはアメリカのビーチクラフト・メンターT34初等練習機を国産化している。ゼロ戦などを送り出した技術者が生き残ってまだ頑張っていた。

 

 超小型車だとプロペラ・シャフトの重量とスペースの無駄を省きたい。すると前輪駆動にするか、リア・エンジンにするしかない。前輪駆動は機構が複雑でコストがかさむからリア・エンジンにするしか選択肢がなかった。

 フィアット600(1954)や、次のフィアット500の影響は否定できないが、エンジンが斬新で、二輪車に似た2ストロークの並列2気筒、またサスペンションに全く新しい日本独自の工夫があった。現在では信じられないだろうが、日本の悪路は進駐してきた米軍が驚いたほど酷かった。舗装が少なかった日本の悪路を見事に走った。スバル360のロードホールディングは素晴らしいものだった。簡単に言うと乗り心地がよかった。ただ、急ブレーキを踏むと激しく沈み込んで、前のめりの姿勢になった。日本製のクルマは礼儀正しいと同乗者が冗談をいったが表情は笑っていた。メーター類はスピード メーターだけ、他には何もなかった。


 ボディはいかにも飛行機屋らしくモノコック、車両だけの総重量はわずか385キロ、独特のデザインは、日本工業デザインの草分けのひとり、佐々木達三氏によるもので、発売10年目で50万台を売り、当時、国産車の単一車種として生産記録を樹立した。その後も生産して12年間の長寿を誇った。

 

 戦後日本を支えたのは、戦争から受け継ぐ技術力を進化させたもの。二酸化酸素の排出が少ないエンジンは勿論として、そろそろ「自動運転のクルマ」を発売してくれないだろうか。研究は進んでいるというが、発明後100年以上、自分で運転するのは自動車くらいだろう。

 未確認情報によれば、スーパーコンピュータの演算速度のもっと速いものを開発中だが、これが完成すれば一般道でも走行が可能になるという。

 戦後の復興を支えた高齢者に「運転免許証を返納せよ」というのは失礼である。現実として地方では買い物や病院通いもできないから返納などできない。三箇所ほどへボタンひとつで往復してくれれば十分だろう。また考え方だが、ヒトがまったく手を触れないのであれば飲酒運転だって可能となる。地方都市では飲酒が難しく、接待が困難となり社会の円滑な人的交流が妨げられているという。



 

 日本の技術開発力なら、必ず実現する。運転するしないはともかく、返納はしばらく待ったほうがいい。軽自動車から発展した卓抜した技術は、まもなく自動運転システムを創り出し、やがて世界を変えるだろう。日本は、今も昔も職人国家である。


下記はスバル博物館サイトからの引用。


排気量356ccの強制空冷2サイクル2気筒エンジン。駆動方式は後輪駆動。車両重量385kg。随所に創意工夫をこらした「スバル360」は、4人乗りで最高速度83km/hを発揮した。しかも走行安定性、乗り心地、高速時の操縦安定性などは小型4輪車と比べても技術的にはなんの遜色がなく、自動車関係者および報道関係者は「世界水準をいくミニカー」と、こぞって絶賛した。「スバル360」には、そのかわいい姿から「てんとう虫」という愛称が与えられ、登場後12年にわたり長く人々に親しまれた。根強いファンが多く、今でも「スバル360」が街中を走る姿をときどき目にする。


スバル360  富士重工業
ホイルベース  1800mm
全長       2990mm
全幅       1300mm
全高       1380mm
車重       385Kg
エンジン  空冷直列 2気筒 2str
       356cc  16ps
最高速   83km/h
発売    1958年


                                            以上