(163)沖縄タコライス
今回は沖縄食文化のさわりです。現代のは「沖縄食文化」、琉球王朝時代を「琉球食文化」に分けるとか。江戸の前は交渉もなく、「琉球?何処それ?」という具合。15世紀に尚(しょう)氏が王朝を確立、明の体制下に入り、貿易権を得て東南アジアへ進出し「海の王国」として栄えます。
江戸幕府が成立すると、島津氏が利権を求め、慶長14年(1609)に出兵、薩摩藩の支配下におきます。一方で明との従属関係はそのまま続きます。この両属関係が独特の文化を残します。薩摩藩は石高制、つまり米本位の幕府風組織とし、田奉行をおきますが、さんご礁の平らな島、石灰質や塩害など農業はアウト、特に水田は絶対に無理、庶民は甘藷(かんしょ:さつまいも)を常食したと1683年に琉球を訪れた中国役人の記録が残ります。肉食忌避がなく、豚、ヤギなどを常食しますが、豊富に食べたのは戦後になってからで、昔の庶民には祝い事など、たまのご馳走でした。
琉球の偉人とされる蔡温(さいおん)さんが【農務帳】を書き、ため池や水田耕作の知識が広まりますが、一部地域の米作で、王族や有力者だけの米でした。ただ ①山々に植樹を奨励したこと ②サトウキビ栽培を広めたこと、が将来を決定します。中国から伝わった製糖技術での黒砂糖は、これを専売制にした琉球を繁栄させ、後には薩摩藩にも富をもたらし、英国から近代武器を大量購入、倒幕へつながります。
サンゴ礁だらけのため漁業は発達せず、魚数は多いものの脂肪分がなく、現代ではから揚げやバター焼きなど、また野菜などと煮込む味噌汁にします。
沖縄といえば【ブタ】、内臓を「中身」とよび高度な肉食文化を持ちます。
煮るとき煮汁をこぼし、脂肪を減らす調理法が一般的。ラフテーは「豚の角煮」として有名、アバラ部分を煮込むソーキ、耳の軟骨のミミガー、頭皮のチラガーなど「ここまでやるか?」と思うほど。
中華料理と違い香辛料、つまり調味料が少ないのが特徴。【マース】という食塩だけの味付けもあります。注目は、醤油・味噌などに【食酢】を加えること、平均気温が高いので食中毒防止に役立ちます。沖縄だけの【コーレーグース】(高麗薬)という唐辛子を泡盛に漬け込んだもの、また八重山原産の【島コショウ】などが沖縄料理に深みを加えます。どうじに「ヤギ」も祝い事などで食し、刺身とか汁物にします。
野菜ではゴーヤーチャンプルがよく知られます。チャンプルは【野菜炒め】のこと、これを鶏卵でとじ、ご飯にかけると【チャンポン】になる。【ナーべラー】とよぶヘチマや冬瓜(とうがん)、キャベツ、人参、モヤシ、パパイヤなどの消費が多い。
沖縄の豆腐は大きくしっかりしたもので、炒め物にも使います。豆腐を紅い麹と泡盛に漬け込んだ【豆腐よう】は沖縄名物、また大豆の代わりに「落花生」での豆腐があるとか。
菓子では【サーターアンダーギー】という「砂糖のテンプラと名づけた菓子」が珍しい。また、ぺったんこな饅頭【天妃前(テンピヌメー)】は那覇名物です。
沖縄そばは、明治以後で小麦粉に灰汁を加えたラーメンの一種であっさり味、そば粉は使いません。海藻をよく使いますが、北の海でしか取れぬ【昆布】が必需品。中国と薩摩の密貿易に使われたものを、沖縄でも使ったからとされます。さつま揚げの原型【チキアゲ】が食文化としては興味深いところ。別名「かまぼこ」とも呼ばれるとか。
台風や旱魃(かんばつ)のため幾度も飢饉に耐えますが「蘇鉄(そてつ)の実」が役立ちました。有毒植物ですが水にさらすなど上手く処理すれば食用となります。
戦後食文化
戦後は米軍の小麦粉が出回り、アメリカの強い影響があります。また多くの方が南米などへ移住、1980年代にこの方々が持ち帰った食文化も影響します。ビーフステーキ、ハンバーグ、ホットドッグ、ピザ、タコスなどのファスト・フードも早くから定着します。1963年にハンバーガー・チェーンの「A&W」が入り「マクドナルド」の8年前でした。また米軍兵食の豚肉缶詰、「SPM」や「TURIP」、その後国産をも含め【ポーク・ランチョン・ミート】が広まります。沖縄家庭料理の定番として、調理が工夫され、ポークたま
ご、ぬーやるバーガー(沖縄方言では「ぬーやる=なんだこれ?」の意味)など「豚肉缶詰」を使う料理が多く、韓国の【部隊チゲ(部隊鍋)】などと類似性があります。
沖縄タコライスは注目に値いします。タコス(タコの複数形)はメキシコ料理、トウモロコシの薄いクレープに、味付けしたひき肉やサラダ、チーズ
、トマトなどを包み唐辛子酢ソースなどで食べますが「もっとボリュームを!」に、ご飯の上にタコスの具を載せ提供、これを【タコライス】と名づけます。ある店が工夫したもので関西の「たこ焼き」とは無関係。牛丼チェーン【すき家】で500円、またタコス専門店でも食べられます。正しいタコライスの形態は不明快のうち、全国展開中であります。
黒麹(くろこうじ)を使う「泡盛(あわもり)」は日本蒸留酒と中国・タイ蒸留酒の作り方をミックスした方法とでも、泡盛の酒粕を使う【黒酢】は健康食品として人気となっています。オリオン・ビールは沖縄産、シェアはキリンなど日本五大メーカーのわずか0.9%ですが、沖縄では【県民ビール】として最大シェアを誇り、名護市に唯一の工場があります。
沖縄県は長寿で有名でしたが、これは粗食に耐えた70歳代の人々の話で、豚肉もたまにしか食べなかった方々です。現在50歳代の数値は、平均余命を他と比較しますと、全国平均を大きく下回ると心配されているそうです。
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