「種苗法改正とは?」
新型コロナウィルスで騒がしい中、予想以上に早く決まろうとしてるのが、種苗法の改正。少し長いですが、ちょっとだけ読んでほしく、5分だけ時間をください。
野菜や穀物の種には、登録品種と一般品種があります。
一般品種とは、固定種や在来種、権利を登録していない交配種のことです。
企業や行政が開発した新品種は、農水省に登録申請し、特別な形質が認められた場合に承認され、登録品種となります。
登録品種は、基本的に育成者権があるので、この品種を増やして勝手に拡散することはできません。
ただし、自農園のみで使用するために種子繁殖(種で増やす)することは認められています。
ややこしいのですが、登録品種で栄養繁殖(茎や根などで増やす)するものに関しては、自農園でも、品種を限ってはいますが許諾制になっています。
しかし、種子繁殖に限っては、登録品種であっても、自農園のために使えます。これは、農民に種子繁殖による自家増殖の権利があることが、現行の種苗法では認めているからです。
国連で採択された「小農権利宣言」の中では、採種権利は農民から剥奪されないと決められています。(ただし、日本は棄権)
これが現状です。
ところが日本の登録品種が海外に持ち出される事案があります。これを防ぐため、日本はUPOV91という国際条約を交わしてます。
この条約により、日本に知的財産権のある種苗は、海外に持ち出すことは禁止されています。
さて、海外に持ち出す行為は、UPOV91だけで防ぐのでは弱いという議論があります。というのは、UPOV78という古く弱い条約しか交わしていない国があるからです。
また、種子繁殖は大丈夫で、栄養繁殖の一部が禁止というようなところが、現行法は分かりにくいとか、種苗法とUPOV91の内容が乖離しているという議論もあります。
UPOV91では、登録品種の農民による採種権利は認めていないからです。
UPOV91では、国内法による採種権利に関しては、各々の国に任せるとなっているのですから、乖離しても構わないはずなのですが。
もともと、UPOV91を交わすために種苗法改正を行なってきたという歴史もあり、この際だから、今回も改正を行い、登録品種であれば、種子繁殖も栄養繁殖もUPOV91のように一律禁止(正確に言うと許諾制)にしてしまおうとしているわけです。
しかし、これは諸刃の剣です。なぜなら、日本の知的財産権は守れると言う反面、小農権利宣言で謳われている農民の採種権利が奪われてしまうことにも繋がるからです。
登録品種のみとはいえ、農民から採種権利を奪うのは、農民の自立を失わせ、持続的な食料生産能力や自給力を奪います。
食料安全保障は、食料で自立する力を得て初めて成り立ちます。それが危ぶまれるだけではなく、今後拡大解釈され、どんどん企業主体の食料支配が始まる可能性を含んでいます。
もっとも、在来種や固定種、権利が登録されていない交配種などの一般品種は対象外ですし、家庭菜園も対象外となります。
また、自家増殖の許諾を受けやすくするとか、許諾料を廉価にするとか、現場を鑑みながら影響があるものは例外処理するとか、安心材料は与えられてはいます。
その点は良いのですが、しかし、品種登録のハードルを下げるという話もありますから、種苗会社が、どんどん品種登録を始めるという可能性も捨てきれません。
今、僕らにできることは、種を採ることです。固定種、在来種の種どりは自由なのですから、今こそ、種どりを進めるべきなのです。
※是非読んでほしい。種苗法などの法律について詳しく記載している僕の著書「種は誰のものか?」