「植物は歩く」

漫画の見過ぎではなく、植物は本当に歩くのである。

歩く方法は様々である。例えば、ある樹木は歩きたい方向にだけ根を伸ばし、数十年かけて場所を移動する。あるいは、歩きたい方向に種を飛ばす植物もいる。種を動物の体毛に絡ませて子孫を移動させているのも、歩くことなのであろう。つまり、何世代もかかって歩くわけだ。

植物は意志を持っている。そして意志を突き通すために動く。もし植物を育てようと思うなら、その意志を人間も理解する必要がある。そうじゃないと共生などできないと僕は思う。

例えば身近な例で言うと、大根は回るという意志を持っている。大根は直根を太らせていく時に、少しづつ回る。どの位回るかというと、直根を太らせ始めてから、収穫サイズまでに2回転するのである。

回る方向も決まっていて、必ず右回りである(南半球ではどうかと訊ねらたが、僕の畑は日本にあるので、南半球の事は分からない(笑))。証拠になるのかどうなのかは分からないが、大根をスライスして光にかざすと、渦巻きが見える。

で、何故回るのかだが、僕は植物学の専門家ではないので本当の事など知らない(笑)。だが、大根と付き合った歳月で、大根が教えてくれた事はたくさんある。

大根の花は十字花である。十字花の植物の葉は、同じように十字の方向、つまり四方に葉を伸ばす。十字に葉を伸ばす大根は次の段の葉を伸ばすときも十字に広げるのだが、下の段と同じ場所だと日が当たりづらい。だから、少し身体を回して位置をずらして次の葉を出すのである。だから上から見ると綺麗に四方八方へと葉が伸びた形になる。

回るスピードも実によく出来ていて、大根は新月から次の新月までに180度回転するのである。つまり、まるっきり反対を向くということだ。こうすれば前後左右、綺麗に月明かりと太陽光が当たることになる。

そんな事はどこを探しても書いていないだろう。植物学の本を読もうが、ネットサーフィンしようが見つからないと思う。これは僕が大根と向き合って知った事実だからである(大根が回る事実は木村秋則氏の本にも記載があるが)

こうした事は植物を観察することから得ることができる。何かを得ることが出来たら、必ず、その植物の育て方のヒントを得ることができる。今の例で言うならば、大根の種蒔きのタイミングとか、収穫のタイミングが導き出せる。

詳細は無肥料栽培セミナーで質問して欲しいので今は書かないが、植物を育てるということは、どれだけ植物に近寄れるかということだ。逆に言うと、植物に歩み寄れば、作物の育て方など、実に簡単なのである。

それにしても歩く植物というのは凄い。人間は足もあるし意志もある。新しい事を始めようと次のステップへと歩き出すのは簡単なはずだ。だが、何故か人間の方が歩き出すことに躊躇しているように思える。おそらく気のせいではないだろう(笑)。