数日前、クライアントさんからお手紙が届きました。
開封してみると、旅行のお土産としてお守りが入っていました。
伊達政宗が祀られている神社に行かれたそうで、陣羽織の形を模した勝守!
なんだかとってもご利益がありそうです。
何より、旅先で私のことを思い出してくれてお求めいただいたことがありがたいです。
大切に身に着けたいと思います。
ありがとう、N美さん💛
N美さんとはじめてお会いした時、顔色も蒼白で、表情もうつろで、声も細く、生気が感じられないほどでした。
オンラインでしたが、画面越しに、すっと消えていなくなってしまうのではないか、そんな心配がよぎったほどです。
お子様を事故で亡くし、その後もご自身の体調不良や流産もあって、日常生活が送れないほどに疲弊されていらっしゃいました。
でも、そこから、ご自身の今までの人生を棚卸しし、度重なるトラウマや幼いころからのご両親との関係、強い悲嘆の感情と向き合っていかれたんです。
ヒプノセラピー、カウンセリング、ワークショップなど、私のところでも何度も受けてくださいました。
今までのN美さんは、美しい容姿を持ち、エリートでキャリアも順調、結婚生活もうまくいっていて、きっと傍から見たら、うらやましく思われるような生活をされていらしたと思います。
トラウマ体験がなかったら、こんなに深く自分と向き合うことはなかったのかもしれません。
でも、人生ってどこかで強制的に別の方向へと向かわされる時があります。
N美さんの場合は、お子さんの死がきっかけで、自己との対話を始められ、深いところにあった心の傷を少しづつ癒していく、癒しのジャーニーに向かわれたんです。
この出来事が伝えているメッセージはなにか。
亡くなった存在とどう新たな関係性を作っていけばいいのか。
私が置き去りにしてきた負の感情はどんなものなのか。
私が私らしくいるってどういうことなのか。
自分に問いかけをしながら、深くご自身とつながっていかれました。
セラピーでお会いするうちに、どんどん、お顔の輝きや声にもハリが出てきて、生命エネルギーが高まっていくのが分かりました。
最近は旅行に出かけられるようになって、いろいろな新しいチャレンジを始められて、毎日がお忙しくなっているようです。
N美さんを見ていると、PTGという状態が思い浮かびます。
PTGって聞いたことがありますか?
ちょっと聞きなれないかもしれません。
でも、きっと、PTSDという言葉はご存じですよね。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
トラウマ体験(例えば、戦闘、自然災害、重大な事故、性的暴力など)後に発生する可能性がある、負の影響のことです。
持続的な恐怖感、再体験(フラッシュバックや悪夢)、回避行動(トラウマに関連する場所や人からの避ける)、感情の麻痺、不眠、過度の警戒心などが主な症状です。
PTGもトラウマ体験後の心理的な変化を指す用語ですが、その内容と意味合いが異なります。
PTGは心的外傷後にもたらされた心的成長のことなんです。
トラウマ体験を経て、個人が精神的、感情的、社会的に成長することを指します。
逆境体験から人生に対して新たな価値を見出すことができたり、人間関係を改善させたり、精神性が高まったりという、これまでの自分以上の成長を遂げた状態です。
トラウマと向き合い、回復していく時に、自分を再評価して、人生に対しても新しい意味や価値観を見出す、といった肯定的な体験をしていく人がいます。
N美さんは、まさにPTSDからPTGに移行したタイプです。
(両者は相互排他的ではなく、個人によってはPTSDの症状を抱えながらもPTGを経験することがあります)
要するに、
転んでもただでは起きない。
ピンチはチャンス!
といったところでしょうか。
もちろん、どんな辛いことでも乗り越えろ、成長しろ、常に前向きでいろ、ということが言いたいわけではないですよ。
ただ、トラウマや逆境を体験したとしても、どう意味づけするか、どう向き合っていくかによって、肯定的な側面が生まれる可能性もあるということです。
心理セラピストという職業は、心がしんどい時に需要があって、「最高に幸せ!」と幸福感に酔いしれている時には、まったく必要とされません(笑)
当たり前ですけれど。
自己実現のコーチング的なセラピーを担当することもありますが、多くはやはりしんどい時だからこそ、セラピーに来られるわけです。
私がクライアントさんと出会わせていただく時は、その方が一番苦しい時。
不安が強くて眠れない
罪悪感にさいなまれて苦しい
大切な存在を失って生きる希望を見失っている
人間関係に疲れ果てている
彼とうまくいかなくて悩んでいる
何か悩みがあって心が沈んでいたり、
いろいろなことがうまくいかなくて人生が停滞している時って
これ以上傷付きたくないし、何か新しいことをしようというエネルギーも枯渇しているはずなんです。
でも、きっと何か変われるはず、変わりたい。
そう思ってくださったからこそ、私とつながってくださったんです。
それが分かっているから、私も真摯な気持ちを忘れてはいけないし、しっかりホールドできる人間でありたいと思っています。
クライアントさんが、元気になって楽しいご報告をしてくださるようになったり、生き生きとその方らしい人生を進まれるようになるのは、セラピストとして一番嬉しく幸せなことです。
その稀有なご縁と学びに感謝して、
そしてすべての人がもつ変容の力を信頼していきたいな、と思います。
N美さんのお便りは、そんな思いを強くしてくれました。
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