先日ブログに書いた、
医療現場でのABCのポジション。

患者さんの病気が確定して、
治療が始まる段階になった時。

治療方法がAさん
患者さんがCさん
医療従事者はBさんのポジションにいる
と考えた。

そんなことを考えていたとき、15年前の、患者さんのことを思い出した。

わたしが研修医1年目、
内科を回っていた時のこと。
完全にペーペーの状態で、担当したのは、
どこに癌があるか分からないけれど、骨への転移がたくさんあって、痛みも出ているから、痛みのコントロールをするために入院している方でした。

入院の時は、何が原因で痛みが出ているかも分からない状態で、検査を重ねて、骨への転移がある、と分かったのです。
分かった時点で、ご本人とご家族に主治医が説明。治療方法はないから、まずは痛みのコントロールの導入をしていきましょうとお話しした。

治療が始まった数日後、わたしが当直している時の夜に、急変されたんです。

呼び出しを受けて、ベッドサイドに行った時には、呼吸がかなり荒い状態の患者さん。
その後すぐにきてくれた指導医に、怒鳴られる。
『さっさと血ガスとれ!!』
その言葉に固まった私。

なぜならその日の昼間、患者さんに呼び出されて、こんな事を言われていたから。
『痛いのはもう嫌や。だから、先生、もう痛いのは無しにしてや』

わたしは指導医に、
『でも、先生、◯◯さん、昼間に、もう痛いのは嫌やって言ってて。』
そう言いながら患者さんの顔をみたら、まだ意識があって、
『ねぇ、◯◯さん、もう、痛いの、嫌なんやんね?』と聞いたら大きく2回頷いてくれた。

『ほら、先生!』
ってわたしがいうか言わないか、
『つべこべ言わずにさっさと取れ!』

なんでなん?なんでなん?ごめんね、ごめんね、と思いながら、針を刺した。

その後、指導医をはじめ、みんな必死に救命処置をしたけれど結局その患者さんはそのまま息を引き取った。

ご家族に状況を説明している指導医の姿を見て、なぜ指導医が必死に救命したか、やっと分かった。

原発不明癌の骨転移で、状態は非常に悪いとはいえ、数日以内に急変する事は予測不能だったこと、もともとの癌が、まだどこにあるかわからない状態であったこと、今回の急変の原因も分からない事、それを指導医は丁寧に説明していた。
そして、原因究明のために、病理解剖をさせて欲しいと伝えていたけれど、ご家族の答えはノーだった。
これ以上痛い思いはさせたくないと仰った。

ほぼ全ての医師が、同じように救命しようとするこの状況。
それは分かる。(当時は分からなかったけど)

でも、あの時の患者さんの顔を、
15年経っても思い出す。
必死に、『もう痛いのはイヤや』って訴えていた。

ただ、その表情を出させてしまったのは、
未熟すぎた、わたしんだったと、
Bを学び始めて思った。

あの時、
『◯◯さん、大丈夫だよー、検査するよ〜』
と言って、安心させてあげるのが、
Bの役目だったんじゃないかと。

経験を積まないとわからないし、実践も難しいB。
ただ、どの業界でも、きっと必要なB。

そんな風に思った、昔の出来事。