日本語学校の進路指導、打てる手は全部打て。その2 | 管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

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私たちの可能性は、こんなもんじゃない。

大学、専門学校の進路指導。

 

前回は、「学内でできること」を書きました。

 
準備を早くした学生が勝つ。
=準備を早くさせないと勝てるものも勝てない。
 
ということで、まさに入学したその日から、1年後の受験に備えて進路指導が始まっている、ということです。
 
今回は、やはり1年目から、教師、学生共に学外に出てできることをまとめてみました。
 

教師がする進路指導の準備 その③

初年度から学校見学に連れ出す。

 

最近の学生は、職業観がまるでない学生が多いです。

 

「この仕事でこうやって稼いで生きていく。」

そんなビジョンを描くことができない。

 

まあ、時代が変わったというか、

ハングリー精神が失われたというか、

豊かな時代に育った結果というか、

 

15~20年前の、ハングリー精神旺盛な肉食系のガツガツ学生とは違い、まあ呑気なもの。

 

いつまでも父ちゃん母ちゃんが助けてくれると思っている。

「自分で稼がなきゃ食っていけない」って、どういうことなのかイメージできない。

 

こんな学生が多くないですか。

 

加えて、物事への興味が薄い。

 

「車が好き」とか「アニメが好き」とか、何か興味があって日本へ来ました!という学生が減った。

 

とにかく日本へ行ったら、何か面白いことがあるかも。

自分の国にいるよりいいかも。

 

こんなモラトリアムで日本へ来ているから、すべてが受け身。

 

せっかく外国に来ているのに、自分で面白いこと、興味が持てることを能動的に自分から探そうとはしない。

 

興味のアンテナの張り方を知らない。

 

「なんか面白いこと、ないですかぁ」って、口をア~ンって開けて待っている。

 

日々、こうやって流されてなんとなく呑気に暮らしている。

まぁ、平和でいいですが。

 

でも進路を決めるのに、こう呑気では時間がいくらあっても足りない。

 

でもいくら教師がお尻を叩いても、

「時間はそんなにないんだよ~!」とギャーギャー言っても、

暖簾に腕押し

糠に釘

 

当校第1期生。なんせ先輩がいませんから。

学内に「1年後にはこれをやるんだぞ。」というお手本もないわけです。

 

これでは、いつまでたっても覚醒しない。

 

だったら、少しでも自分たちがやるかもしれないことを、目の前で見せてやろう。

 

イメージしやすくしてやろう。

 

こう思って、学生が入学してまだ半年の、まだ初級が終わっていないうちから、技術系の専門学校さんに、実際に専門学校の学生さんが実習をしているところを見せていただけないか、お願いしてみました。

 

1つは、自動車の専門学校。

もう1つは、歯科衛生士の専門学校。

 

入試年度ではない、まだ言葉もあまりわからない初級の留学生のために、

「今年はまだ受験年度じゃないんですが、来年の入試のために、実習を見学させてください。」

とはずいぶん厚かましいお願いだったと思います。

 

これも、担当者の方に初めてお会いするような、何のつながりもない専門学校さんには頼みにくいことです。

 

だから私は開校1年目の、まだ卒業年度ではない時から、ありとあらゆる会合、研究会、説明会、シンポジウム、フォーラムなどに出て、懇親会にも顔を出し、「新設校です。」と名刺をできるだけたくさん交換し、顔をつなぎ、中にはface bookでお友達になった方もいたりして、とにかくご挨拶しまくりました。

 

その結果、数回お会いする中で、このような見学会を計画していることをご相談して、「どうぞうちでよかったら来てください」と言っていただいた専門学校の担当者の方を頼って、この見学会が実現したのです。

 

厚かましく頼ってすみません。

 

でも、専門学校の担当の先生は、快くお引き受けくださり、私は希望の学生を⒑数名連れて、見学させて頂きました。

 

これはなかなか良かったです。

実際に1年後の今年、自分の進路を自動車整備や歯科衛生士にする学生が、その見学者の中から出ましたから。

 

情報集めは、中級に入ってから。

いやいや、これでは遅いと思います。

 

何のために日本に来たの?

 

これを常に学生に問い続けてないと、

学生も日本の生活に慣れて、

自分の生活のリズムができて、

アルバイトと学校を両立する忙しい生活に流されていくうちに、

目的意識を失って、

勉強より稼ぐことのほうが面白くなったり、

遊びまくってもうるさい親がいないことを実感して羽を伸ばし、

自分をコントロールできなくなったり、

しがちという人もいるのではないですか。

 

刺激を与えて、考えさせたい。

学生が自分で考えるようになる仕掛けを作りたい。

でも初級だと、説明会に行っても、言葉が分からない。

刺激が与えられない。

 

だったら、言葉じゃなくてもわかるものを!

ということで、「見せる」というのは、効果的でしたよ。

 

教師がする進路指導の準備 その④

大学、専門学校の進路指導担当者に合う

 

前回の記事でUPした、準備②(入学してから3か月ごとに行う進路調査)で得た、学生の大体の進路志望のデーターをもって、それが勉強できる専門学校の方にお会いしてお話を伺い、専門学校や大学のデータを集める。

 

まあ、どこの日本語学校さんでもやっていると思いますが。

聞き取り調査ですな。

 

でもいちいちこちらが専門学校さんを訪ねていくのでは、きりがない。

 

なので、

 

たくさんの高等教育機関が一度の集まる、ブース型の説明会に出来るだけ参加して、お話を伺う。

 

当校ではこれを、開校直後の1年目から行っていました。

 

当校にはこういったインタビューを行う際の「質問リスト」みたいな記入用紙があって、まずはそこに書かれている内容を伺います。

 

コース、学科

場所

定員

留学生の国籍、比率

就職先

力を入れているところ

インターンシップなど授業の特徴

目指すもの、教育理念

小耳にはさんだ情報

などなど・・・。

 

そして、絶対に聞かなければならないのが

 

留学生の就職率

初年度納入金⇒分割可能かどうか

入試の難易度

 

これです。

 

当校では

 

留学生の就職率が80%以上で、

初年度納入金が100万円以下で、しかも分割可能で、

入試の難易度がさほど高くなく、N3持っていなくても入った実績がある。

 

この3つが揃っている学校を「いい学校」と言って、学生に紹介しています。

 

つまり、早くからこの「いい学校」をリストアップして、掲示し、学生に洗脳まがいの事をしようというもくろみです。

これはなかなかいい作戦でした。

 

学生は、外からも情報を取ってきます。

学外の同国人の友だち。

アルバイトで知り合った、留学生仲間。

 

こういった人たちから、入りやすくて学費が安い学校の情報をGETしてきます。

 

でも中には、進路指導者ならだれでも知っている

「あの学校にだけは行かせたくない」

「あの学校に行くのは、金をドブに捨てるのと同じ事」

という大学や専門学校(人呼んで「いらっしゃいませ学校」)をいち早く探し出してきて、第一志望にする学生もいます。

 

ヒナ鳥の刷り込み現象と同じ。

最初にGETした情報は、インパクト強く脳に刷り込まれてしまう。

 

だから、こちらの方から先に刷り込みを始めるわけです。

そのための情報GETのチャンス。

学生に紹介していい学校かどうか、ある程度見極めなければなりません。

 

その為にも、このインタビューは重要です。

 

次に、専門学校や大学の留学生担当の方が、向こうから当校に飛び込みでいらっしゃる場合もありますよね。

 

アポなしで。

 

でもアポなしもなんでも、いらしたら、

「今忙しいから。パンフレットだけ置いていって」

とむげに追い返さずに、部屋に通して、それこそお茶の一杯も出して、詳しくお話を伺う。

 

当然先ほどの、リストが、この時も活躍します。

 

さらにさらに、お話をお伺いするときは、

こんなリストの内容だけではおさまらず、更にいろいろ聞き出します。

 

どうして留学生を増やしたいのか。しかも答えの出にくい非漢字圏。何を目的にしているのか。

 

こんなレベルの低い留学生を2年間でN2+就職まで持って行くのはさぞかし大変だろう。どんな技を使っているのか。

 

そんなにいい就職率をあげているのなら、さぞかし優秀な先生が、さぞかし密度の濃い進路指導をされているのだろう。どのようにされているのか。

 

などなど。

このさぞかし攻撃(笑)。

通常、このしゃぶるような聞き取り調査は、1時間以上かかります(笑)。

 

飛び込みで来られた方は、まさか部屋に通されてアイスコーヒーまで出てくるとは思いませんから、最初はいたく感謝されていますが、1時間後には、この取り調べ状態に「来るんじゃなかった」と、後悔しているかも(笑)。

 

でも、この取り調べが終わり、私が「いい学校」だと思った学校さんには、

 

当校での説明会を開催していただいたり、

OC(オープンキャンパス)に大量の学生を参加させていただいたり、

いろいろとお世話になってます。

 

そして1年後の今、出願につながっているわけです。

 

マンパワーが限られている中、これぐらいの事しかできませんでした。

講師の数もたくさんいらっしゃる、大人数の他校さんなら、1部隊作って、簡単にさっとやれてしまうことなのかもしれません。

 

とにかく学生が結果を出すために、出来ることは何でもやろうと思って、この1年やってきました。

 

これが良かったのか、悪かったのかはわかりません。

効率がいいやり方とも思えないです。

 

でもおかげさまで、比較的学生の準備は早く、いまだに志望を決めないで「進路をどうしようかなぁ」と言っている学生はほとんどいません。

 

出願書類を取り寄せ、記入し、学校の成績証明書作成を依頼し、準備し、毎日のように誰かが出願や試験に行っています。

 

合格も、就職も出始めました。

おめでとう!パチパチ。

 

するとその結果に刺激されて、全部の学生が、波のように一斉に受験に向かって押し寄せ、現在怒涛のように準備しています。

 

1年前の呑気な1年生から比べたら、ずいぶん行動力がついたと感心したりもしていますが、こちらは書類のチェックと、面接練習と、推薦書作成で、ぶっ倒れそうです。

 

なんせ、90人の学生のこれらの受験準備を、

私を含む2名の専任講師と、

数名の非常勤講師でやってるんですから。

 

先生方ごめん。

ほんとにご協力感謝してます。

 

ところであなたの学校は、打てる手を全部打ってますか?