日本語学校、この業界の次のバブル崩壊はいつ? | 管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

私たちの可能性は、こんなもんじゃない。

こんにちは。


前回も少し書いた日本語学校業界の波の話・・・。

この業界で長くお仕事されている方なら、少しはおわかりでしょう。


私が日本語教師になった1998年頃は、日本語教師の超就職氷河期。

日本語学校への就職はほとんどなく、あっても「未経験者不可」。

なので、私はまず週1時間のプライベートレッスンの仕事をもらい、他の日は他のアルバイトをしながらレッスンし、数か月後にそのレッスン時間が2時間に増え、半年後に更に1時間増え・・・、と言う形で少しずつ仕事を獲得して実績を積みました。


その後、2000年にちょっと就職事情はよくなり、プライベートレッスン経験時間が540時間になったころ、とある日本語学校へ非常勤講師として就職することができました。

これが私の日本語学校教員人生のスタートです。


その学校はどんどん学生数を増やしている最中で、それから2,3年後には、隣町のもっと大きな校舎に引っ越して、最高で学生数が500人まで増えたのを覚えています。


それに伴って、新しい先生をどんどん増やし、まだ経験年数数年のペーペーの私から見ても「この先生大丈夫?」という、とんでもないど素人ばかりを雇って、丸投げでクラスを任せているのがわかり、一気に学生の不満が溜まっていったのが感じ取れました。

他の学校の事は、その頃まだ分かりませんでしたが、おそらくどこの学校でも同じように学生を増やしていた、この業界の「バブル期」だったのではないかと思います。


ところが!まず最初のバブル崩壊!


確か2003年ごろに、某国からの留学生による凶悪犯罪事件が3,4件起こり、極めつきは九州の親子4人が一家惨殺された強盗殺人事件。

奪われた金が3万円。

逮捕された外国人3人は、福岡の日本語学校の学生でした。


これらの一連の事件がきっかけかどうかわかりません(入管はいつも理由をはっきり教えてくれませんから)。

でも2004年に東京入管で、それまで98%近くあったその某国からの留学生の許可率が、一気に5%まで落とされたのを覚えています。


私のいた日本語学校は、その某国からの留学生の中でも、比較的良質な、成績優秀な学生を、学院長自らその国へ行かれて、直接面接されて選んでいました。


それなのに許可率5%!


100人近く入学してくる予定だったのに、なんと入学者が数人に減ってしまいました。

中には、その某国で行われた数学の競技会で3位になった学生も落とされ、「理由がわからない!」と先輩の先生方が言っておられました。


でも、私が強烈な印象を受けたのは、その時のその学校の学院長のお言葉。

(業界でも名物の女学院長でした。)


「まあ、長くやっていればこういうこともあります。

でもこれで、いいカラ加減(学院長の口ぐせ)なことをやっている学校は潰れますから。

我々はまたちゃんと、まっとうな事を一からやっていくだけです。」


すごい。

我々講師の間に漂っていた重苦しい不安感を一瞬にして蹴散らす、このパワー。

この時、上に立つ人(しかも女性!)の、腹の据わり方を、ぺーの私は勉強させてもらいました。


そして、その時の許可率激減事件をきっかけに、その某国に頼って学生募集をしていた学校の多くは、休校という名の廃校に追い込まれたり、その学校に勤めていた教師の多くは、待機という名のクビ切りにあいました。


しかし、その後は許可率も段階を追って復活し、1年後には何事もなかったように元に戻り、日本語学校業界も少しずつ盛り返しました。

あわせて日本経済も、バブル崩壊からやっと立ち直れるかも・・という人々の期待が高まり、仕事も増え、失業率も少しずつ減っていました。


すると今度は、日本語学校の教員が、だんだん不足してくる・・・。


だいたい、いつの時代も世の中の景気が良くなると、日本語教師は不足するんですよね。

たぶん足を洗って、もっと待遇のいいカタギの仕事に転職する教師が増えるからではないでしょうか(笑)。


しかし、波は上がると次には下がる。

それは経済も同じ。

そしてこの上向き景気が崩壊します。


2008年リーマンショック!


まあ、アメリカがくしゃみをしたら、日本は肺炎で入院しますから。

日本経済は大打撃。


留学生も激減。


またまた多くの学校が休校、クラス減、非常勤講師は待機(クビ切り)に追い込まれ、失業して職を探す日本語教師で溢れかえりました。

1回の教師募集広告に、40人以上応募があったりしましたから。

養成講座からも就職担当の方が、営業に来られたりしましたから。

今では信じられない事ですよね。

でも、またまた少しずつではありますが、経済は盛り返し、それに伴って日本語教師の求人も増えて来ます。


そして、今度こそ大丈夫かな?いけるかな?という期待を、町の人々が経済に、そして日本語教師が就職口に抱き始めたその時でした。


2011年の大震災!


震災は3月でしたから、その頃には4月生の入学人数がもう決定していて、どの学校も4月に入ってくる新入生の数に合わせて教師の数をそろえている最中でした。


ところがどこの学校も、4月生の多くが入学をキャンセルする事態となり、それに合わせて4月から着任するはずだった新任教師の多くも採用を取り消される羽目になりました。


また、在校生も国元の親から「帰ってこい」と厳しく言われ、泣く泣く途中帰国した学生も少なくありませんでした。

あの震災がきっかけで、特に韓国人の新入生の数が減り、いまだに東京の日本語学校の韓国人留学生の数は、回復していません。


そして現在に至る。

さて次は?


今、この業界は「バブル期」。

留学生はわんさかわんさと押し寄せ、

新設の日本語学校や、専門学校の日本語科が多く開設されています。


そして来年の3月、膨れ上がった日本語学校から、多くの非漢字圏の学生が卒業します。

受け入れ先の高等教育機関の募集定員よりも、はるかに多くの非漢字圏の学生達。

進学先が決まらなくて、希望に反して帰国せざるを得なくなった多くの学生達。

果たして、どこの学校にも進学できなかった、これらの多くの学生は、本当に全員帰国するのでしょうか?

(これは前回のブログで、詳しく書きました。)


もし帰国しないで不法滞在者が多く出てしまう事態となったら・・・。

その不法滞在者を、在籍者数の5%以上の人数を出してしまった学校は、優良校認定を取り消され、その学校の学生は、ビザの期間を半年にされ、学校は入管からマークされます。

そして、そんな日本語学校には、まともなエージェントは学生を送らなくなります。

つまり、ビザが半年になった時点で、その学校は「潰れろ」と言われたのと同じ。

すると、その学校はクラスを減らし、教師のクビを切る事になる・・・。


また、もし多くの学校が不法滞在者を出すことになったら、世論が黙っていないでしょう。


2004年の時と同じ。

あの時も「日本語学校の留学生、大丈夫か?」みたいな見出しで週刊誌が記事を書き、世論が騒ぎました。

そして、何の関係もない真面目に勉強していた日本語学校の在校生が白い目で見られ、

また、将来に夢を繋ごうとしていた、その国の多くの学生が、来日を許可されず、

その国からの留学生に頼って経営していた日本語学校は大打撃を受け、

クラスを減らし、教師を切ることに・・・。


来年、この業界から多くの不法滞在者を出すことになったら、それこそ「日本語学校は不法滞在者の生産工場か?」などと騒がれることになるかもしれません。

世論って、怖いよ。

そして、ビザの許可率が下がったら、学校はやむなくクラスを減らし、教師を切ることになる・・・。


不法滞在者による、学校の優良校認定取り消しか、

それとも世論か。


どちらにせよ、これらは次の業界バブル崩壊のきっかけになる可能性が大きいのではないかと、私は心配しているのですが・・・。

杞憂でしょうか?


そしてそうなると、切られるのは当然非常勤講師からです。

今は未曽有の教師不足ですから、どこの学校も手をすりすりして雇ってくれますが、

切る時は手のひらを返しますからね。


しょうがないです。学校を潰すわけにはいかないんで。


ですから、今のうちですよ。

非常勤講師の皆さんの中で、転職なんか考えることなく、この仕事を続けたいと思っておられる方は、

今のうちにできることを増やし、技術を磨き、経験を増やし、

自分に合う学校を探し、少しでもまともないい学校に落ち着き、

そこで代わりの先生がいないと言われるほど貢献し、

その学校になくてはならない先生になっておく事が大切だと思います。


これには技術、能力ももちろん大切ですが、雇い主に好かれる人柄も大切かと。

優秀でも気に入られなかったら、そりゃ切られますよ。

教師側が、「嫌いで結構!好かれちゃ困る!」と思うようなひどい学校もあるようですが(笑)。


とにかく、待遇だけでなく、教育理念や、方針や、人間関係などを総合的に評価して、今のうちに学校を選ぶことです。

今のこの時期だから、ある程度学校を選べるんです。

またまた次に就職難の時代が来たら、選ぶどころか、就職口自体なくなるんですよ。

選べるのは今だけ!お早目に!


また、この仕事を長く続けたいと思っている非常勤講師の中で、いつかは専任講師になりたいと思っていながら、なんとなく今のこの「手をすりすり」してありがたがられる現状が気持ちよく、非常勤の気楽さに流されていた方、いませんか?


専任講師は組織専従の正規雇用の職員ですから、月給が保障される代わりにボロ雑巾のようにこき使われる(学校が多い)。

だからいずれは専任講師になりたいと思っているけど、今じゃなくて・・・まあそのうちねって考えていた方いませんか?


次の「業界バブル崩壊」が来たら、専任講師になれるチャンスは、経験や年齢にもよりますが、おそらく最短でも5年先でしょう。


ですから今のうちですよ!

でないと、この業界で教師として正規雇用されるチャンスは、はるかに遠のくと思います。


歴史は繰り返すんですよ。

この業界、今まで繰り返してきたんですよ。


さてあなたは次の崩壊、どうやって乗り切りますか?