1年で一番寒いこの時期に、こんなにも鮮やかで雲一つない青空を見たことが最近あっただろうか。
新幹線を降りたJR浜松駅からシャトルバスに揺られること45分。
約9年ぶりに訪れたヤマハスタジアムは、絵に描いたような快晴の空に包まれていた。
スタジアムに入るとまず、寄せ書きゾーンへと向かった。
所属した3チーム、ジュビロ磐田・横浜Fマリノス・横浜FCのフラッグにファンがメッセージを書き、
それが試合後にご両親へ渡されるという企画。
私はジュビロ時代に特に思い入れがあったので、ジュビロのLフラッグにメッセージを書き込んだ。
開場して間もないにもかかわらず、既に多くの人がメッセージを書き込んでいる。
私はガ ンバサポーターだけど、それとは別にめちゃくちゃ思い入れのある選手。
ペンを走らせていると、いろんな思いがこみ上げて思わず涙が溢れる。
客席に入ると、ピッチでは何やら前座の試合が行われている。
まだ12時半。
地元の高校生かな?そう思ってよく見ると…見覚えのある黄色いユニフォーム。
そう。
神戸弘陵と滝川第二のOB戦が行われていた!
公式サイトには書いてなかったのに。
知ってたら新幹線早めたのに。
私が10代の頃、必死で応援していた神戸弘陵サッカー部。
こんなカタチで、OBさんたちを見ることになるなんて。
中にはちょうど応援していた時のメンバーらしき方もいて、
私の心は驚きを隠せないほどのセピア色に染まった。 弘陵ベンチには、『ジュビロ29』のユニフォームと、『弘陵14』のユニフォームが飾られていて
この光景が私の涙をさらに助長させる。
弘陵は残念ながら負けてしまったけど、1点を決めた選手がバックスタンド側にある
【DAISUKE OKU MEMORIAL MATCH JAN18.2015】の看板に抱き着きに行く、というパフォーマンスが忘れられない。
試合後、弘陵イレブンと滝二イレブンが一列に並ぶ姿は、
県大会などでよく見たそれとオーバーラップしていた。
トラックがなくこじんまりとしたヤマハスタジアムの雰囲気と相まって、
神戸中央競技場(現・ノエスタ)で高校サッカーを観ている錯覚を起こしてしまった。
前座が終わると、本日の出場選手が次々とピッチに姿を現した。
ジュビロ磐田・日本代表で共にプレーをした【J-アミーゴス】
横浜Fマリノス・横浜FCで共にプレーをした【横浜フレンズ】
前日に神戸で行われた『1.17チャリティマッチ』にも出場した選手も多く、
ゴン中山に関しては、取材先のオーストラリアから強行スケジュールで駆け付けていた。
岡田監督も連チャン。
私も含め、観客も連チャンの人が多かったようだ。
チームメイトにもファンにもすごく愛されていたおっくん。
あんなこともあったけど、彼を信じたメンバーが集まったんだなと思った。
キックオフ10分前。
シクラメンが歌う『ありがとう』をBGMに、彼の生きた38年間を綴ったスライドが流れる。
試合前からどんだけ泣かせるんやろう。
おかげで、入場してきた選手たちは白く霞んで見えた。
天国のおっくんに黙祷を捧げ、いよいよキックオフ。
ジュビロOBであるスタジアムDJが放った
「彼の愛したサッカーを楽しんでください」という言葉が、青すぎる空に響き渡った。
私はメインスタンドの4列目という絶好の席で、その言葉に従った。試合前、あんなにも泣いていたのに、打って変わって試合は笑いの連続だった。
楽しくて、みんながすごい笑顔で、その笑顔が客席にも連鎖する。
とってもあたたかく、幸せに満ちた90分。
得点を決めた選手は、一様に高い高い青空を指差した。
両チームにそれぞれ、背番号8、背番号14で選手登録されていたおっくん。
きっと、あの爽やかな人懐っこい笑顔を浮かべながら、
みんなと一緒にピッチを走っていたに違いない。
「レガースどこに付けてんの?」と言いたくなるような、ずるずるにおろしたソックスを履いて。
試合後、発起人の一人である名波さんから挨拶があった。
彼の人柄がこんなにたくさんの観客を集め、選手を集めてくれた、と。
天国の大介に感謝したい、と。
丁寧に紡がれたその言葉たちは、私たちの胸を打ち、再び涙を誘った。
場内一周を終えメインスタンド前に整列すると、
スタンド上部にあるガラス張りの部屋を見上げる選手たち。
ハーフタイムに見上げた時に気づいていたが、そこにはおっくんの遺影を持ったご両親、ご親族の方がいらしていた。
あの愛くるしい笑顔を浮かべた写真が、ピッチを優しく見守っていた。
そこに向かって、礼をする選手。
大きく手を振る選手。
何かを言いたそうにじっと見つめている選手。
一緒に過ごした時間をかみしめるように、それぞれが会話をしていたのだろう。
後半から急激に寒くなったスタジアムは、一気に日暮れの時 を迎える。
もっと名残惜しんでいたかったけど、主役不在のイベントは幕を下ろした。
10月17日、友達から届いたメールで知った急逝。
ショックが大きすぎて、ネットニュースで見ても全然受け入れられなかった。 信じられなくてTVのニュースも見れなかった。
各クラブが献花台を設置した試合にも行けてなくて、気持ちが中途半端だった。
でもこの日、
こんなにも素晴らしい追悼試合の空間にいられたことと
ワイワイと楽しく送り出せたことで、
ようやく一つの区切りがついた。
神戸から遠征して、本当に本当に良かったと心から思う。
選手の皆さん、スタッフの皆さん。
ありがとうございました。
人の心を一瞬にして掴む魅力的なプレーも。
ずるずるソックスも。
ヒョコヒョコ歩きも。
爽やかな笑顔も。
ファンにもとても優しいところも。
ずっと忘れない。
ずっとずっと大ファンです。
私の青春を明らかに彩ってくれた、
兵庫県の星・おっくんへ。
※文中、親しみを込めて、ずっと呼んでいた「おっくん」という愛称で表記させてもらいました。