ネタバレになります。
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自分が親友や共犯者と思っていた人間から自分のすべてだった美術品を騙し取られる話。
そして、その騙しの手口は実に巧妙なハニートラップ。
うーん、観て思ったことは騙されていたのが身近な人間であったということの残酷さ。
決して人に対して心を開かずに来た老人がそれでも共犯者と思っていた人間にしっぺ返しを食らう。
でも、その理由も明らかで、自分の画家としての才能を決して認めてはくれなかったから。
そういう意味では自業自得ではある話。
そして、若く色男の機械職人には恋の手ほどきを受ける。自分に差し向けられたハニートラップへの恋の手ほどきにだ。
これも残酷な話だ。自分の苦手分野を突かれてまさに術中にハマる。
そして、ラスト。
なおも悲しいことにそれでもその騙されはしたが、愛してしまった女性の思い出の店に出向き、偶然出逢うことを期待してしまうのだ。
その思い出話も真偽は定かではないというのにだ。
想像してみてほしい。
今まで世之介が書いてきた、“まちぶせ"と“待つわ"の歌詞の世界を、
後期高齢者が老いらくの恋で行うのだ。これほど切ない恋物語もない。
いや、それでも始めてときめいた、そして味わった恋の病に、
うつつを抜かせていることに、
当の本人は幸せを感じているかも知れない。
それをみっともないと思うか、
人にとやかく言われる筋合いのない話と思うかは、それぞれの恋愛事情で異なるだろう。
当の世之介はといえば、今さら家族を捨ててまで恋に走ろうとは思わない。
なぜなら、父でありたいからね。
老いらくの恋は、独身であればなんらとやかく言われる筋合いはないが、子供がいる身ならば、その子供からしてみれば「全くもって勘弁してくれよ!」っていう話。
なんか話が変わって来たけど、
最終的には何が言いたいかというと、
人生を棒に振るぐらいの魔力が恋愛にはあるんだよってこと。
恋愛に支配されるのも地獄だけど、
恋愛を知らないで一生を終えてしまうのも、
とぉっても寂しい話だよ。