徳川綱吉(仲里依紗)


佐(すけ)。ご苦労であった。

私はもう大事ないゆえ、そなたも下がりゃ。


動かぬ右衛門佐(山本耕史)


どうしたのじゃ、頭痛があると聞いておる、養生せえ。


下がりませぬ!

なぜならあなた様はお一人になられたら命を絶つおつもりだからでございます。


何をバカな!


生きなさい!


嫌じゃ、もう疲れた。


上様、生きるということは

女と男ということは

ただ、女の腹に種を付けて子孫を残し

家の血をつないでいくということだけではありますまい!


嫌じゃ、もう誰一人私が生きることなど望んではおらぬではないか。


綱吉の唇を奪う佐。


佐、やめよ!何をしておる?!

人を呼ぶぞ佐!やめよ!


嫌や、私の夢やったんや!

もう、死ぬというのなら今叶えさせてもらう!


求め合う二人・・・



◎睦み合った次の朝


上様、私は上様に恋をしておりましたよ。ひと目お見かけしたときから。


よく言う。ん?では、床入りする男たちが「恋恋」言うておったのは?


私の思いを代わりに言ってもらってました。


ハハハハッ、なんとまあ!?


さように笑わずとも。


しかし、さような次第なら

もう少しはよう打ち明けてくれれば

もう少しマシな私を見せられたのに。


上様、私は子を成すためのしとねしか知りませね。

何の目的もなく女性とこうしておるのは生まれて初めてにございます。


ここには何もない。

ただ、男と女としてここにおるだけです。


こうなったのが今のあなたでよかった!

なんという幸せか!!


NHKドラマ「大奥」

脚本:森下佳子


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このドラマのクライマックスといえる回だった。

とにかく脚本が素晴らしい!

TBSドラマ「仁」の脚本を書いてもいると分かってさもありなんと思った。


演じた山本耕史と仲里依紗の演技も迫真で、役者冥利につきるというものだった。


生類憐れみの令を出した、徳川将軍の中でも最も嫌われた綱吉を女性版に変えて、子を死なせてしまい、なおかつ閉経して唯一の務めである、跡取りを産むという務めも果たせなくなったという絶望的な状況でのこの秘め事!


なんて素晴らしい秘め事だろう。

とにもかくにも書かずにはいられなかった。


NHKでありながら出色のドラマで、受信料払うのも損だと思わせない傑作!