暇だから、怖い話でもしようか。若いときに友人と三人で富士山に登った。バカだったから日帰りで登って下りて来られると思って、午前10時ぐらいに五合目から登り初めて頂上に着いたのが16時ぐらいだった。
で、下りだしたのが17時ぐらい。馬鹿だよねえ。そんな時間に下山する人間なんか 普通いない。なんの準備もなく、軽装で懐中電灯も持たずに富士山を17時から下る馬鹿なんてね。
でも、若くて愚かな俺たちは、正月によくやっている富士登山マラソンのルートである砂走りを一気に駆け下りてくれば、暗くなるまでに下山出来ると信じて疑っていなかった。
みんなも一度行くといい。砂走りを一気に駆け下りるのはとても爽快だ。 ただ、 霧と闇に追いかけなければだけどね。 夏の暑い日で、まだ十分に陽は高いと思っていた。 山の天候を知らない俺たちはね。
でも、呆気ないくらいにあたりは暗くなっていった。ヤバイと思いながら山の方を振り返ると、霧がまるで獲物を狙うけものようにすりあしで俺たちを追いかけてきた。 はっきり日帰り登山を後悔した。 富士山はそんなに甘い山じゃなかった。 何はともあれ日本一の山なんだから当たり前だ。 霧に追いつかれまいと、必死に一目散に駆け下りた。 あと少しと思った時 、
あと少しで出口の五合目だと思ったとき、すっかり忘れていた。目の前に森が広がった。引き返すことはできなかった。森の中に呼ばれるように吸い込まれていった。
森の中は当然のごとく真っ暗闇だった。明るいうちに日帰り富士登山は終わると思っていたので、懐中電灯など持って来てなかった。仕方なく、登山用の杖はついていたので、その先に汗まみれのタオルや下着をくくりつけて、ライターで火をつけてたいまつ代わりにして森の中に挑んでいった。
タオルや下着は汗まみれなので、燃えたと思っても、すぐくすぶり消えてしまう。 そして、苛立ちながら百円ライターをカチッカチッ着火していたら、その音は森中から聞こえてきた。
いや、音じゃない。無数の声だった。 無数の女たちの甲高いあざけり声だ。
「キャッハッハッハ、キャッハッハッハ、、キャッハッハッハ、キャッハッハッハ、キャッハッハッハ、キャッハッハッハ、キャッハッハッハ」
三人とも気づいていたが、その時は誰も聞こえるかとは聞かなかった。
話はここで終わる。なぜなら無事に下山できたからだ。でも、間違いなくあざけり声はみんな聞いた。今、何気におそろしいのは、このつぶやきで:、「三人」と漢字変換しようとしたら「残忍」と変換したことだ。 そして、ウッソー、まじ、百円ライターの着火音? 信じるか信じないかはアナタしだい。