朝へのエスケープ | モデラー推理・SF作家米田淳一の公式サイト・なければ作ればいいじゃん

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「救難飛行艇、無事遭難者を収容して北上、羽田管制の誘導区域に入りました。遭難者は元気だそうですが、念のため羽田には救急車が待機しています」
「そうか。万全だな」
 息をみな吐いている。
「よかった。ほんとうに」
 救難指揮官はそういいながら、機上ののスタッフの勧めるコーヒーを受け取った。
 愛用のマグを持っていても、その瞳は機の外を見つめている。
 皆ほっとした空気の中、夜が明けて行く。
「基地への帰投まで気を緩めるなよ」
 そう指揮官は言うが、だいいち彼自身が鼻歌を歌ってしまうほど喜んでいる。
 鼻歌。
 そう、あの歌だ。
 そして、機内の照明が赤い補助灯から乳白色の通常灯へ切り替わる。

 歓喜の歌の中、捜索機は任務を終え、基地へ戻っていく。

 この夜の歓喜の歌を、我々は忘れない。


#前作の続きです。無事遭難者は助かりました。

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