
ユリア 「ねえ、ちょっと来て!」
麺王 「うん?」

ユリア 「見て、これ」
「あんたの玉ねぎ、けっこう伸びたわよ」
「そろそろ土に植えたら?」
麺王 「そうだな」
「いや、この葉っぱって、ネギじゃね?」
ユリア 「玉ねぎの葉っぱでしょ」
「ネギより、ちょっと平べったい感じよ」
麺王 「ちょっと、食べてみよう!」
ユリア 「え? 大丈夫なの?」
「スイセンとかは毒があるって言うわよ」

麺王 「大丈夫だろ」
「毒を持つ生き物には、それ相応の理由があるものだ」
ユリア 「理由?」
「じゃあ、蛇は?」
麺王 「無論、我が身を守るためだ」
「手も足も無いんだからな、せめて毒牙ぐらい無いと生きていけぬ」
ユリア 「そう言ったら、みんな、そうでしょ」
「身を守るために決まってるわ」
麺王 「そんな事はないぞ」
「例えばフグだ」
ユリア 「フグって、内蔵にだけ毒があるのよね」
麺王 「ああ、本来フグ自体は無毒だが、餌の毒を蓄積して成長するのだ」
ユリア 「じゃあ、別に意味なんてないじゃん」
麺王 「なんだと!」
「うぬには、フグの大和魂が解らんのか!?」
ユリア 「言ってる意味すら分かりませんが・・・」
麺王 「フグの毒はな、自分を食べた奴だけを確実に仕留める毒なのだ」
「つまり、我が身を犠牲にして敵と刺し違える為の毒」
ユリア 「仲間を守るために敵を道連れにするって言いたいわけ?」

麺王 「その通りだ!」
「どうだ、シブいだろ?」
「彗星帝国の動力炉で自爆した、斉藤一のようだろ!」

ユリア 「う~ん、全然」
「バカみたいに、何でも食ってるから身体に毒が溜まっただけでしょ」
「飲みすぎて肝臓を壊したオッサンと同じじゃん」
麺王 「なんだと!」
「おまえなんて、一生、毒のないサバフグでも食ってればいい」
ユリア 「別に、いいわよ、サバフグ上等!」
「どうでもいいけど、さっさと食えよ、玉ねぎの葉っぱ!」

麺王 「ああ、じゃあ、この醤油ラーメンに入れてみるぞ」
ユリア 「なんで、ラーメン?」
「そのまま、かじれよ! ヤギみたいに」
麺王 「いや、それはちょっと・・・」
「ほら、せっかくチャーシューを作ったことだし・・・」
「いちおう、俺、麺王だし・・・」
ユリア 「仕方ないわね」

麺王 「完成だ」
ユリア 「パッと見はネギに見えるわね」
麺王 「切った時の、ネギの匂いは全く無いな」
ユリア 「なんか、草の匂いがするわよ」
麺王 「味は、なんというか・・・」
ユリア 「玉ねぎね!」
「匂いのない、生の玉ねぎ」
麺王 「でも、この辛味は悪くないな」
ユリア 「これって、熱を加えたら甘味に変わるんじゃない?」
麺王 「うむ、次回は炒めてみるか」

ユリア 「ところで、あんたの毒は何のため?」

麺王 「・・・・・・・」