一つの装置が

世界を変えることを信じ

何かを作る


一枚の絵が

世界中の人々に安らぎを齎すと信じ

絵を描く


未だ嘗て出逢った事の無い

感動的な作品を

この手で作り出す


自分の作るモノで

誰かが喜んでくれると信じ


絞り出して

100ℓの汗と100ℓの血を

絞り出して


石にかじり付いて

何が何でもやり遂げる


自分がしなければ

他の誰にも出来ない事があるから

自分の命を担保に

作品を作らせてもらうしかないのだ









昨日のことなんて


どうでもいい


もう終わったことだ



明日のことなんて


どうでもいい


明日でなければ解らない



大切なのは


今なのだ


今この瞬間に何をしているかが大切だ



今  自分にとって


最も大切なことをしているかが大切だ




水色長屋
                 Ⓒkiyoshi endo




いいかい良く見たまえ


例えばここに八百屋さんがあったとする


その前を私が通り過ぎようとしたとする


ふと見ると何かが視界を占領する


さて、それが例えば蜜柑だったとしよう


私は思わず「これください」と言う


お店の人は「五百円です」と言う


私はお店の人に五百円を渡す


私は蜜柑を一皿貰う


そしてその日の夜


私は蜜柑を食べる


美味しく食べる


美味しく全部食べる


美味しい蜜柑を美味しく全部食べる


美味しい蜜柑を美味しそうに全部食べる


…ああ、蜜柑を買ってきてよかった


ああ、よかった


って、なるに決まっている事くらい


私にだって想像できるに決まっている






水色長屋
Ⓒkiyoshi endo



夏ですよ

いいえ秋ですよ


秋ですよ

いいえ夏ですよ


夏か秋ですよ

いいえ秋か夏ですよ


秋か夏ですよ

いいえ夏か秋ですよ


なにかですよ

そう、なにかですよ


私ですよ

いいえあなたですよ


あなたですよ

いいえ私ですよ


なにかですよ

そう、なにかですよ














水色長屋
Ⓒkiyoshi endo

フォルトfault



失敗作

初めから失敗し

始めから失敗し

元から失敗し



 はじめから失敗し

 連続して失敗し

 最後まで失敗し



失敗作

一から失敗し

基から失敗し

源から失敗し



 いきなり転び

 ことごとく滑り

 とうとう転覆



失敗作こそ

素晴らしき人生

失敗作こそ

永遠なる傑作












水色長屋
Ⓒkiyoshi endo





見つけないで

みつけて


探さないで

さがして


お日様の横にいるから

見つけないで

みつけて


青空を眺めているから

探さないで

さがして


見つけなくても

探さなくても

いつかきっと出逢う日が来るから


見つけないで

みつけて


探さないで

さがして





水色長屋

或る日父は

あんな所にあんな格好で立っていた


どんなに呼んでも返事をしない

何があっても動かない


あんな父の姿を見たのは初めてだ


ヒコ星になった父は

一体どこを見つめているのだろう


さっきからじっと向こうの方を向いたきり

向こうには「宝くじ売り場」があるだけなのに




水色長屋



君は確かに

ここを歩いて行ったのだろう

通りに面す二階の窓に

君の影が映っていたから


それは遠い昔のことさ

もしも ついさっきだとしたら

君の影は今なを

僕の方に伸びている筈だから 


君は影レールの上で

アルマイトの髪飾りを揺らしていた…


水銀陽のガラス窓

夏を眺むる

磨り硝子




水色長屋


飛べ飛べ烏

夕焼けの空に

暮れゆく海を越えて




飛べ烏

踏切の遮断機の竹竿に

電信柱のてっぺんに

闇の雲が近付いて




飛べ飛べ

一本道を遡り

水平線の横で

揺れるカンナの上を




飛べ

蒼い草原に

秋風が吹く

海に突き出た桟橋の

一本松




飛べ飛べ

飛べ飛べ

消えゆく記憶を辿り




飛べ

気高き山は

白き砂浜の横の

さざ波立つ水面に漂うひと塊りの草




飛べ飛べ烏

行き止まりの看板を無視して

風に逆らい

一本道を辿り

どこまでも飛んで行け