以前、橋本多佳子は、人一倍「光」に敏感な作家だったと思いますと書いたが、最近になって、橋本多佳子の葬儀のときに山口誓子らが棺に懐中電灯を入れたというまことしやかなエピソードを耳にした。真偽のほどはさだかではない。
たいへんお待たせしました。
多機能の主婦ロボットや冬支度 ぐみ こ
少子化となじるもさやか寡作主義 ぐみ
ぶすで痩せ秋の蚊の吐く捨てぜりふ ぐみ こ
缶詰に種無く桃の及び腰 ぐみ
奥多摩に赤軍兵士二日月 直子
奥多摩も物の怪眠る冬の雨 直子
路地裏の多情多恨やほうせん花 直子 こ四由亜苑
朝寒や多羅尾伴内笑ひをり 直子
作努僧の無言の行や薬喰 直子
松手入妻の捨身の鋏かな 直子 ぐ振
捨犬の走り去る夜の秋時雨 直子
秋深し屋台を覘く影法師 直子
長き夜の多面体なる六本木 亜紀 四
数多なる出没地点草の絮 亜紀 由
作意てふ夜長の紐をひもときぬ 亜紀 直四振苑
捨てにゆく言葉数多や秋桜 亜紀
こだはりを捨ててしまへばたうがらし 亜紀 こ四由振
秋の潮ひきて残れるひかりかな 亜紀 こ直四
柿日和とほくとほくに祖母のこゑ 亜紀
抽斗を身に引き寄せて秋深む 亜紀 ぐ四由振苑
鉛筆を削る匂ひや秋深む 亜紀 ぐ直四苑
家計簿に吐く息ひとつ暮の秋 亜紀
草紅葉やつていますかスクワット 亜紀 こ由振
束の間の学生時代銀杏散る 亜紀
秋の暮れ数多の鈴の鳴っており こゆ ぐ亜
まみれつつ好事魔多し降る小雪 こゆ
下町の猫族の秋多事多難 こゆ
満月や猫の集会多数決 こゆ
作りつつ可視と不可視に霧が峰 こゆ
秋日和ガリ版刷りの作文集 こゆ
捨てておく花札の月夢十夜 こゆ
捨てられて仔猫の眠る月の宮 こゆ 直苑
霧の夜またキリストの抽象や こゆ
ぽつんと線路の上の白秋や こゆ
柿食へば多方面から叱らるる 由季 振亜苑
散りてはじまる創作ダンス秋の色 由季
ポーカーの全部捨てたき暮の秋 由季
手と足が同時に出たる茸狩 由季 直四亜
多数決なんてざけんな秋の潮 苑を
寡作の人背を向けてをり吊し柿 苑を ぐ直
月曜のゴミ捨て場所の秋風鈴 苑を
ラフランス寝返るなんてできないわ 苑を こ振亜
秋の蚊の夜の虚空を滅多打つ 振り子
月の風をんな多弁になりそうな 振り子
走り来るどの子も多汗風邪ひくな 振り子
多宝塔と月の光を胸に仕舞ふ 振り子
秋風やお多賀のしやもじ吊し売る 振り子
秋霖や平戸に出船製作所 振り子
傑作が秋の日暮れのやうに失せ 振り子
菊花展やつぱり作品45番かな 振り子
ベッド捨てごわごわの風吹く秋だ 振り子 ぐ由亜苑
落花生ぽんぽん捨てて赤きスツール 振り子 由
右折してすぐ銀漢の街に入る 振り子 ぐ直亜
多発する秋思の種と球根と 四童
作為ある菊人形の見てをりぬ 四童 直
行く秋や捨て始めたらみな捨てる 四童 こ由振亜苑
秋の日の犬に微笑み返しけり 四童
長き夜の攻撃色の尾灯かな 四童 ぐ
(以上)
お待たせしました。
こだはりを捨ててしまへばたうがらし
ぶすで痩せ秋の蚊の吐く捨てぜりふ
ベッド捨てごわごわの風吹く秋だ
ポーカーの全部捨てたき暮の秋
ぽつんと線路の上の白秋や
まみれつつ好事魔多し降る小雪
ラフランス寝返るなんてできないわ
右折してすぐ銀漢の街に入る
鉛筆を削る匂ひや秋深む
奥多摩に赤軍兵士二日月
奥多摩も物の怪眠る冬の雨
下町の猫族の秋多事多難
家計簿に吐く息ひとつ暮の秋
寡作の人背を向けてをり吊し柿
柿食へば多方面から叱らるる
柿日和とほくとほくに祖母のこゑ
缶詰に種無く桃の及び腰
菊花展やつぱり作品45番かな
傑作が秋の日暮れのやうに失せ
月の風をんな多弁になりそうな
月曜のゴミ捨て場所の秋風鈴
行く秋や捨て始めたらみな捨てる
作りつつ可視と不可視に霧が峰
作意てふ夜長の紐をひもときぬ
作為ある菊人形の見てをりぬ
作努僧の無言の行や薬喰
散りてはじまる創作ダンス秋の色
捨てておく花札の月夢十夜
捨てにゆく言葉数多や秋桜
捨てられて仔猫の眠る月の宮
捨犬の走り去る夜の秋時雨
手と足が同時に出たる茸狩
秋の蚊の夜の虚空を滅多打つ
秋の潮ひきて残れるひかりかな
秋の日の犬に微笑み返しけり
秋の暮れ数多の鈴の鳴っており
秋深し屋台を覘く影法 師
秋日和ガリ版刷りの作文集
秋風やお多賀のしやもじ吊し売る
秋霖や平戸に出船製作所
少子化となじるもさやか寡作主義
松手入妻の捨身の鋏かな
数多なる出没地点草の絮
草紅葉やつていますかスクワット
走り来るどの子も多汗風邪ひくな
束の間の学生時代銀杏散る
多機能の主婦ロボットや冬支度
多数決なんてざけんな秋の潮
多発する秋思の種と球根と
多宝塔と月の光を胸に仕舞ふ
抽斗を身に引き寄せて秋深む
朝寒や多羅尾伴内笑ひをり
長き夜の攻撃色の尾灯かな
長き夜の多面体なる六本木
満月や猫の集会多数決
霧の夜またキリストの抽象や
落花生ぽんぽん捨てて赤きスツール
路地裏の多情多恨やほうせん花
(以上)
コメント欄に8句選でお願い致します。
よろしくどうぞ。
恒例の四童珈琲店忌日句会のご案内です。今年も「多作多捨」をお題にしましょう。
【多】
【作】
【捨】
【雑詠】
それぞれ何句でも。
投句締切:10月18日(木)24時(JST)締切厳守
投句宛先:四童までメールにて
締切後、匿名で投句一覧を四童珈琲店(http://navy.ap.teacup.com/yondoblog/)に発表し、互選後に作者を発表致します。
ふるってご参加下さいませ。よろしくどうぞ。
週刊俳句の対談で大石雄鬼さんのことに触れたので、それに関連して一年ほど前に別のところに書いた記事をこちらに再掲します。
(対談内容と直接の関連はありません。)
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多佳子の忌
橋本多佳子は、人一倍「光」に敏感な作家だったと思います。
月光にいのち死にゆくひとと寝る 多佳子
雪原に遭ひたるひとを燈に照らす
月が照り雪原遠き駅ともる
霧を航き船晩餐の燈を惜しまず
羅針盤平らに銀河弧をなせり
燈ともして梅はうつむく花多き
春月の明るさをいひ且つともす
簾戸入れて我家のくらさ野の青さ
病み伏して夜々のいなづま身にあびる
猫歩む月光の雪かげの雪
水鳥の沼が曇りて吾くもる
いまありし日を風花の中に探す
林檎買ふ旅の足もと燈に照らされ
星空へ店より林檎あふれをり
万燈のどの一燈より消えむとす
つまづきて修二会の闇を手につかむ
ゆきすがる片戸の隙も麦の金
八方へゆきたし青田の中に立つ
一ところくらきをくぐる踊の輪
いなびかり遅れて沼の光りけり
いなびかり北よりすれば北を見る
いなづまのあとにて衿をかきあはす
…
「月一輪凍湖一輪光りあふ」の絶唱も忘れられません。
大石さんの「押し入れが光に汚れ多佳子の忌」の「多佳子の忌」は、「多佳子の忌」でなくしても成立するかも知れませんが、そうすると全然別の句になってしまいます。ぼくは、このまま「多佳子の忌」だから生きてくる「光」や「汚れ」を感じたいです。
ずいぶん久しぶりに句会に参加し、初対面の洋子さんに、ばしばし叩かれる。
新涼の博士の髪は爆発す 四童
まつすぐに北へと続く秋の浜
新涼やビル・エヴァンスの脛ながし
照明をつぎつぎ落とす夜涼かな
大花野かたかたと鳴るお弁当
薄情と云はれてみたき案山子かな
秋の蚊のごとく洋子に叩かるる