白南風や二十世紀の脚線美      四童
袋から顔を出したる夕薄暑
丑三つのひかりはじめる苔の花
タオル蒸す瓦斯の火あかき五月雨
さみだれや駅から見える囲碁クラブ
円柱の下着広告梅雨ふかし
漢字にて嚇となりたる梅雨の夜

 

 寺澤一雄さん、太田うさぎさんと新宿御苑で吟行二十句出し句会。

まづ自動改札を抜け夏の苑      四童
けふからは夏木立なる御苑かな
脛ながき棕櫚の高きに花しづか
タラの木をばうだらと呼び春惜しむ
はつなつの口唇期なる池の鯉
みぎひだり別に動かし亀泳ぐ
薫風を分けNTTドコモビル
立夏なほ行き遅れたる椿かな
蟻穴は立夏のごとく噴出す
蟻穴の土から乾く立夏かな
順番に藤棚に入り写真撮る
半分はみづのうへなる藤の棚
蜘蛛の囲の命懸けなる水のうへ
君が代蘭天の調べと交信す
葉桜の揺れて雀のちと鳴けり
池々に高低のある立夏かな
あをあらし発情期には樹液出す
テーピング技法によりて剪定す
薔薇よりも薔薇の名札を目で追へり
行春や陛下の苑は学者の苑

 

限りなく小雨に近いが傘は不要という空模様の下、小石川後楽園を散策する。新宿御苑あたりでもそうだが、庭園の向こうにはビル多々。小石川後楽園の場合は、それに加え東京ドームのぺったりと白いふくらみが異様である。おまけにドーム内の催しの音が結構漏れてきて、ぜんぜん閑静じゃない。誓子なら、そういったものもすべて詠み込んで連作とするのだろうか。

あまたあるものからまづは春惜しむ  四童
はらわたに春の水満ち春の鯉
やはらかき雨や刻々梅の実満つ
催しの音くぐもれる藤の花
春陰の天より白きドームかな

 そのあと、涵徳亭にて週刊俳句の一周年記念オフ会。前途洋洋たる若者を遠いまなざしで眺める。複数人から「豆の木」を辞めたと聞きましたが、と尋ねられ、逆に当事者の私が驚く。どこからそんな噂が流れているのだ。不可解である。

 
 

足奪ふ雨降る星の落花かな   四童
桜蘂濡れゆき熱の色帯びぬ
撥水の傘を落花のやうに雨
虚子の忌の裏返りまたなほる傘
骨の傘律儀に持ちて花嵐



 

船に立つ船長の妻花の冷え   四童
船行きてしづまるまでの春の河
大勢で舞台を回す花の雨
満開の如き人工雷雨かな
また活ける稽古帰りの猫柳
 

誓子忌である。例年なら三週連続句会をやるのであるが、今年は青息吐息。

春宵やマシンルームに鉄格子  四童
筺体に抽斗のある春灯
引つ張れば引つ張り返す春の線
引き戻すケーブル長し春の夜
ケーブルを束ねて春の盛りなり
埋め殺す通信機器や春の闇



 

多くの曲が坂本龍一のピアノだけの伴奏による、加藤登紀子の1982年録音。1920~1930年代のポーランド、ドイツ歌謡曲を日本語で歌っている。憂いを帯びた低い声や息遣いがぞくぞく来る。こういうのを歌わせると加藤登紀子は絶妙である。LPならB面にあたる後半は6曲中5曲がクルト・ワイルのナンバー。25年前にもはまったが、今聴いてもはまるはまる。

破魔矢置く部屋の一角あれやこれ 四童
詣でたきカレーの中の七福神
糸たはむこともあるなり凧