初春といふ風呂敷を広げけり    四童
おほぞらに淑気とアナログ波満てり
逢ふ人は淑気と酒気を帯びてをり
寝正月ほどの厚さの衣をまとふ
おほかたの福は袋に福袋

 

川沿ひの金の異形に冬日かな     四童
極月の電気みなぎる神谷バー
極月の甘味処にブギを聴き
歳晩の海のかをりのうどんかな
舟虫に似た舟はしる師走かな
仲見世の帰りは冬日まぶしかり
提灯を投げては掛ける年用意

 

小春日のバックミラーになにもなし  四童
干柿も干菜も立てり夢枕
ぶらさげてどんどんふえるうさぎかな
達人のかたちで眠る床暖房
行く水は碧をつらぬきもみぢ谷
吊橋を揺らす小春の彼氏かな
アナログで大きなものを冬の蔵
男とか踏もうと思ひブーツ買ふ

 

この星の雨を知らずに曼珠沙華   四童
秋彼岸左右対称にて拝む
桃を切る嘘つくときの顔をして
木犀や風の成分ひたと満つ
稲妻に四本足の椅子ばかり
脳みそをからつぽにして小鳥来る
鯖雲に歯形とられてゐるところ
長月のあまりに固きパイの皮
刻々とあふるるものに秋の空
首都高の曲線といふ秋思かな
秋色やひだ揃ひたる適齢期
真空管灯し夜長を震はせる
籾殻を焼いて我等の狼煙かな
水平に秋の牛乳拡がれり
読み替へる夫婦と乙女秋深し
音もなく飛ぶものおほき秋の暮
いちめんの型紙秋の灯しどき
長き夜の匂ひも癖もうつりけり
くちびるはくだの始まり秋時雨
光彩も水晶体ももみぢかな

 

人類の湾からのぼる赤い月    四童
逢ふときは鳥の眼をして曼珠沙華
体操の秋ハムのこと思ひけり
B型の丸ごと入れる唐辛子
押し倒すソファに秋の深まりぬ

 

落蝉の生きてをりしを踏みにけり  四童
くつきりと秋の暑さに移りけり
秋暑しお灸と思ふことにする
水飲んで人のかたちの変はる秋

 

どの坂を降りても夏の港かな   四童
海の日の恋も地球も回転す
水着から帰り行く水ありにけり
引力に迷ふことある土用かな
幅よりも奥行きのある夏料理
問題を忘るるための雲の峰
緑陰のこしのゆみこのしくみかな

 

神々の婚姻色の夕焼かな     四童
さみだれやウに点々のラヴホテル

 

身籠りの気配を放ち牡丹域     四童
ザリガニの国の国旗の赤と青
人里をのみくだしたる燕かな
麦秋や光る東芝明るいナショナル
十薬のはびこり土地の増えにけり
 

飛花としてあらゆるものの舞ひにけり  四童
地を這へる藤に集める花の色
行春の水底に置く我等の影
花と呼ぶ異形の揺れてゐたるかな
春惜しむ鳥さへ舞はぬ高きにて