花ひとひら零してぞ知る巨木かな  四童
いつせいにどの佐保姫も傘まはす
風力で地球の回る日永かな
父として缶詰あける花筵
地を覆ふ蘂を泳がせ春の雨
新品で買ふこともある春の宵

 

いつせいに亀鳴いてゐる正午かな 四童
赤外線まみれとなりて春炬燵
七回半まはれば光春の犬
腰沈め北の踊りを蛍烏賊
我等みなギリシャ彫刻鳥交る
心臓の毛を剃つてゐる鳥曇
影響を及ぼしてゐる花の雨
人のなり見てつくづくと春暑し
八重桜箱入娘の箱開く
半袖は恋の始まり苜蓿
点描のふたりとなりて春日傘
ぐらぐらと湯がく野菜や暮の春
行く春の足と呼ばるる男かな

 

猫なので脱げない春の暑さかな  四童
体重で開く扉や花は葉に
地下鉄の水とめどなき春の昼
春の季語居並ぶ春の林かな

 

あひびきの胸元寒き誓子の忌    四童
パンジーの設計どほり咲きにけり
吹き荒るる春の光の夥し
土曜日の菜の花責めとなりにけり

 

蝶として超えるあらゆる地形かな 四童
春陰や面舵を切る金庫番

 

童貞といふひとと行く日永かな  四童
ぐんぐんと春ひろがつて今陽子
最愛のひとがたくさん春灯し
春の夜の三途の川の爛々と
仔馬立つ逆回転のやうに立つ
くたくたの不忍池に春来る

 

山茶花のまだ咲いてゐる椿山     四童
浪費する文殊の知恵や春の寄席
恋猫を急がせてゐる闇深し
雪よりも明るきものに春障子
うぐひすとよばるるひかりさへずれり

 

中年の転がつてゐる春の山    四童
ともだちのともだちとゐる春の山

 

立春の裂け目を自転車で飛ばす    四童
眼球の転がつてゐる寒稽古
空間に節分ありて息しづか
消すときは懐手する組織かな

 

一族のもそもそとして御慶かな     四童
千円でお釣りの来る福袋
寒鯉のごとく新幹線たまる
金星の身籠もつてゐる初茜
ふくよかなハンガーふくよかなコート