最後の相場師、是川銀蔵。

この本は他人に適当なことを書かれるのを憂えて、ご本人がその一生を振り返った自伝である。

1991年に講談社から発刊された『自伝 波乱を生きる 相場に賭けた60年』の文庫版)


1897年(明治30年)、兵庫県生まれ。


ともかく、すごい人生である。


家計を助けるために14歳で奉公に出た貿易会社が3年で倒産。

周囲が止めるのも聞かず、退職金の20円を持ってロンドンを目指す。

船で大連へ渡りシベリア鉄道でロンドンを目指す予定であった。

が、大連への船賃が12円。とてもヨーロッパまで行ける切符代までは賄えなかった。


そこで以前の奉公先と取引のあった知り合いのお店でとりあえず雇ってもらうことになるだが、

しばらくして第一次大戦が勃発する。

日本軍もやがて大連に上陸。

そこで16歳の銀蔵少年は決意するのだ。

軍の御用商人になって儲けよう!!!


いくら現在に比べて昔の日本人が早熟だと言っても、すでにこの時点で普通の子供ではない。

やはりここでも可愛がってくれる雇い主の止めるのも聞かずに、なんの伝もなく苦労の末に軍の御用商人となっていくのである。


その後、いくつかの商売を成功させるが大恐慌のあおりで自分の会社が倒産。

貧窮の生活を経験する。


その間3年。

31歳から34歳までの銀蔵は嵐山の借家から大阪の図書館へ毎日のように通いつめ、経済関係の書物をあさり尽くし、経済統計を調べ、物価、景気、株価の変動、消費者動向を分析する。


時代の恩恵か人徳か、この間、家賃は請求されず、米屋の主人も米を貸してくれたという。


そして昭和6年。

妻の工面した70円を元手に、銀蔵の相場師人生が始まるのである。


最後の相場師、是川銀蔵。

が、最終的には株で儲けた利益は一円も残らなかったそうである。


最後に、是銀の投資五ヶ条を記しておく。


① 銘柄は人が奨めるものでなく、自分で勉強して選ぶ

② 二年後の経済の変化を自分で予測し大局観を持つ

③ 株価には妥当な水準がある。値上がり株の深追いは禁物

④ 株価は最終的に業績で決まる。腕力相場は敬遠する。

⑤ 不測の事態などリスクはつきものと心得る

        (相場師一代 是川銀蔵著 小学館文庫より)


それにしても、黙って70円を工面した奥様はたいしたものですね。

奥様がいなければ、最後の相場師も存在しなかったかもしれません。


是川 銀蔵
相場師一代 (小学館文庫)

『議論のウソ』 小笠原喜康

この本は意図的なウソについて語ったものではない。

4つのウソ、というより結果的にウソになってしまうものを例にあげて検証している。

1)統計の持つ数字的な錯誤

2)権威への妄信

3)時間の経過によって、過去に妥当であったものがウソになってしまうもの。

4)世の中の問題が白黒つけられないまま、ムードに流され一定の方向に偏ってしまうもの。

そういったものを乗り越えて、真実を見極める目を持つことの大切さについて書かれている。

一つの事実について当然と思われていることも、実は当然でない場合がある。

本当のところはどうなんだろう?

偉い評論家の先生が言っていることだけど本当にそうなんだろうか?

以前はそうだった。でも今はどう変わったんだろう?

みんなはそう言ってるけどそれは真実なんだろうか?

そんなふうに疑問を持つこと、真実を求めて議論することに時間をかけるべきではないか。

と、著者は言うのである。

小笠原 喜康
議論のウソ (講談社現代新書)

夏の庭-The Friends 湯本香樹実


死体を見るために、町外れの一人暮らしの老人の「観察」をしはじめた3人の少年たち。

12歳の彼らの夏は、人間の死への好奇心からはじまった。


ところが、少年たちとの交流をきっかけに、今にも死にそうだった老人がだんだん元気になっていく。

一人暮らしでろくに窓もあけない、外出もろくにしなかったおじいさんが、日ごとに精彩をはなっていく。

なぜなんだろう。不思議に思いながらも、少年たちはおじいさんとの交流を深めていくのだ。


そしてある日突然・・・


ラスト、少年たちの心のなかには相変わらずおじいさんがいる。

「もしおじいさんだったらなんて言うかな」

行き詰ったとき、彼らはそう自問する。そして確かなおじいさんの存在を感じるのだ。


この本を紹介するため読み直していて泣いちゃいました。

派手ではないけど、じんとくる一冊です。


湯本 香樹実
夏の庭―The Friends (新潮文庫)
湯本 香樹実
夏の庭―The Friends