小説「海へ」1-2-K
前回までのあらすじ:
主人公は年金の手続きに不満を感じて少女漫画を買いに行くが、電車を乗り間違えてしまう。
そこで、128番目に読んだ「たいむぶれっど」という漫画に心を奪われるが、前半で終わっていたため嘆息する。
そこに茶色の紙封筒を持った少女が現れ、主人公に話しかけてくる。
少女は出版社に行く途中だが、場所が分からず、関係のない主人公に次の駅で降りるように頼む。
主人公は少女の言動が「たいむぶれっど」の登場人物に似ていることに気づき、少女の要求を拒否する。
少女は主人公が何者でもないことを認め、主人公は少女の原稿を見せてもらうことを要求する。
少女は原稿を見せ、それは「たいむぶれっど」の後半で、作者はUBであった。
主人公は少女の「何者でもない」状況について応答し、少女の作品を評価しているため、この状況は無意味ではないと主張する。
少女は主人公に、なぜ自分の作品を評価するのかと問いかけたが、主人公は作品に心を奪われ、一方、少女はロバだとかうさぎだとか取り留めのない返事をするだけであった。
第一部
第2章「そして天才は発見されるべくして発見される」(11)
そう言って、少女はがばりと跳ね起きた。
ぼくはぎくりとした。
それもまた、『たいむぶれっど』の中に書かれてある言葉だったのだから。
――主人公の少女は、大学教授が飼っているうさぎを通りがかりのルンペン(実は製薬会社のスパイ)の要望に応じて殺そうとする。
ロバとは、大学の飼育室に置かれたある古典的な名画の中のロバである。
その少女は急性の疲労感覚のためにそのような幻覚に襲われるのだが、今のこの場合には、はたしてそうであるのか、それとも単に狂言めいたことをいっているのか、どうとも判断のしようがない。
(続く)
主人公の少女は、大学教授が飼っているうさぎを通りがかりのルンペンの要望に応じて殺そうとする。ロバとは、大学の飼育室に置かれたある古典的な名画の中のロバである。
(イラストはBingAI生成によります)