●世界戦争がそこまで迫っている

 岸田政権は「専守防衛からの転換」「防衛費二倍化」に続き、4月25日、「防衛装備移転三原則」の見直しに向けた与党協議を始めました。

 理由として「国内の防衛産業の維持」「対中国を踏まえれば、ウクライナ以外の同志国にも、ちゃんと輸出できるようにしなければいけない」などと語られています。すなわち、対中国戦争を防ぐのではなく始まることを前提として、企業が金儲けをできるようにしておかなければならない、と言っているのです。絶対に許せません。

 クライナ戦争は激化の一途をたどっています。ウクライナにはNATO諸国が提供する戦車が次々に到着し、イギリスが劣化ウラン弾の提供にまで踏み切り、EUも100万発の弾薬を提供する方針を決めました。これに対し、ロシアもベラルーシへ戦術核を配備することを宣言しました。しかしNATO側はそんなことにはお構いなしに「戦車連合の次は戦闘機連合だ」などと言っています。核戦争・世界戦争の危機が日々迫っています。

 バイデン政権はロシアについて「過去10年間、帝国主義的な外交政策を追求した」と批判しています。しかし、アメリカこそ第2次世界大戦以降、帝国主義の「絶対的盟主」であり続けた国です。イラク戦争をはじめ、どの国よりも残虐な戦争を繰り返し、「力による現状変更」を行ってきたのです。そのアメリカが帝国主義として没落し、各国の権力者・支配者同士の利害の対立が大国間の戦争にまで行き着こうとしている―それは、この資本主義という社会体制の根本的な危機を表しています。

 

●どこが「平和のためのサミット」なのか?

 この情勢下で岸田政権は5月19~21日に、広島でG7サミットを開催しようとしています。政府は「サミットで平和を発信する」などと宣伝しますが、実態は全く違います。

 3月、岸田首相自身はわざわざウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領のG7サミットへのオンライン参加の約束を取り付けました。サミットを日本の事実上のウクライナ戦争参戦を宣言する場にしようとしているのです。そして、帝国主義各国による「中国・ロシア連合」に対する事実上の「敵国宣言」を発する「世界戦争推進会議」「核戦争サミット」というべきです。

 

●反戦・反核の闘いをつぶし戦争動員を狙う

岸田首相は「被爆地から核不使用を発信する」と説明していますが、被爆地・広島の「反戦・反核」の闘いをつぶし、再び戦前の「軍都広島」に転換することを狙うものです。

G7サミットを前に広島市教育委員会は4月、漫画『はだしのゲン』や「第五福竜丸」についての記述を平和教材から削除しました。さらに3/25に英政府がウクライナへの劣化ウラン弾投入を発表すると、大手マスコミが押し並べて「劣化ウラン弾は核兵器ではない」という政府の発表を垂れ流し、3/29には広島市役所が劣化ウラン弾の問題について記載したHPを削除しました。

 大阪港に米・強襲揚陸艦「アメリカ」が入港した一週間後の2月27日には、 広島湾で初の日米合同軍事演習が行われました。これらの動きは米海兵隊と陸自の合同軍事演習「アイアン・フィスト23」の一環でした。米海兵隊は「殴り込み部隊」とも呼ばれ、本土防衛を任務に含まない侵略戦争専門の部隊です。安倍政権は18年3月に「日本版海兵隊」と言われる陸自水陸機動団を創設しました。デビッド・バーガー総司令官は「海兵隊の活動は自衛隊と極めて緊密になる」と語っています。

 「アイアン・フィスト」は100%侵略戦争のための訓練です。このような軍事演習に反発する形で、中国・北朝鮮によるミサイル発射が増えているのです。

 このように広島を侵略の基地にし、自治体の戦争協力をすすめるサミットに対し、右から左まで「サミット歓迎」一色ですが、間違っています。労働組合がサミット反対、戦争反対の闘いを巻き起こす時です。

 

●連合メーデー中央大会で手荷物検査!?

 4月29日、東京の連合メーデーでは、9年ぶりに首相に挨拶をさせました。さらに小池都知事と加藤厚労相にまで発言させたのに、野党発言はなし。組合関係者からの発言も政権批判はほとんどなし。さらに「警備のため」として連合役員が警察と一緒になって参加する組合員への手荷物検査を行いました。一体誰のためのメーデーなのか!?

 労働組合が戦争反対の闘いに立つべきこの正念場に、あろうことか連合・芳野会長は、岸田政権と財界にすりより、一体化しようとしています。

 政府・マスコミを上げた「賃上げラッシュ」の報道が行われていますが、物価上昇率にも届かない上、多くの労働者にとって全く上がらないか、微々たる賃上げ=事実上の大幅賃下げが続いています。まるで賃上げが「政府や資本からの恩恵」かのように宣伝し、春闘を解体する策動に他なりません。連合幹部は、まさに戦前の「産業報国会」の道を繰り返そうとしています。

 

●戦争反対の闘いで社会を変えよう

 4月統一地方選挙の結果、全国で「維新の躍進」が宣伝されていますが、本質は過去最低の投票率に現れています。

戦争に突き進む自民党政治への不信・怒り。「ミサイル防衛は必要」という立憲民主党や「自衛隊の活用」へと転向を深める日本共産党など野党の体たらく。信頼すべき政党などどこにも見当たりません。その中で根本的な現状変革を求める怒りを、一時的に維新がかっさらったにすぎません。

全世界で、物価上昇とウクライナへの軍事支援に対してゼネストや大規模デモが闘われています。日本でも春闘では、芳野会長の裏切りを乗り越え、100を越えるストライキの報道がありました。

 4月30日に行われた「G7広島サミット反対!自治体労働者総決起集会&デモ」には街頭から「待ってました」とばかりに拍手が巻き起こり、多くの若者が大注目し、広島に充満する戦争サミットへの怒りを解き放つ闘いとなりました。

 戦争は最大の権利破壊です。それに対して労働組合が戦争に反対し、社会を根本から変革する闘いに立つことこそ、腐りきった政治・社会を変える力です。戦争国家化・軍事費二倍化に突き進む岸田政権を打倒する闘いを、労働組合の力でつくりだしましょう!