道元和尚広録(5-404)



【原文】

明明百草更逢春。拈得一茎用得親。丈六金身興梵刹。蓮宮未染水中塵。殿裏元為主、堂中会接賓。等閑従仏経行処、三界不如仏道人。

【訓読】

明明たる百草更に春に逢う。一茎を拈得して用得すること親し。丈六の金身、梵刹を興す。蓮宮未だ水中の塵に染まらず。殿裏には元より主為り、堂中にしては賓を接することを会す。等閑に仏に従って経行する処、三界には如かず仏道人。

【意味】

明らかにあらゆる存在が、更に春に逢い、その草の一本をつまんで、親しく用いている。丈六の金身や、梵刹を興すのである。そして、蓮の宮殿は未だ水中の塵に染まらず、その宮殿の中には元から仏祖である主人がいて、堂中にあって修行僧である客を指導している。いたずらであっても仏に従って経行するところに、三界を超越した仏道人がいるのだ。