サイケデリック・ノイズ・フリークスと題して1回目に田畑満の『Braisville』を取り上げた後、早速番外編になってしまったのは、Dunkelzifferはノイジーではないからだ。サイケデリックも微妙な感じなのだが、ちょっと番外編として取り上げた理由のは、田畑満がダモ鈴木と共演したという事と、Canを脱退したダモ鈴木が参加したDunkelzifferの2ndアルバム『In The Night』を晴れた朝に聴いた時、何だか身体の中の何かが溶けて、気持ちがリセットされるような感覚になったからだ。

 

ダモ鈴木

 

【1984年】In The Night/Dunkelziffer

 

【収録曲】

 

A1. Watch On My Head

A2. Sunday Morning

A3. Retrospection

B1. Q

B2. (Do Watch What You Can) Prof.

B3. I See Your Smile

B4. Oriental Cafe

 

『In The Night』を聴いた時に上述のように感じたのは、その前に聴いていた音楽がSteve Albini関連のヘヴィロックや、更にその前に聴いていた音楽がThe Gerogerigegegeと日本のハードコアパンクと、ヘヴィな音楽が続いていたからかもしれない。

 

早速、『In The Night』を聴いたらビックリした。A面1曲目『Watch On My Head』はレゲエだったからだ。

 

続くA面2曲目「Sunday Morning」では日本語歌詞が出てくるのだが、その内容が印象的だった。

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昨日の事などもう忘れて

昨日の事など遠くの事

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この歌詞は正にダモ鈴木の過去は振り返らずに未来に向かって進むという音楽人生を表しているような気がするのだが、どうかな?

 

A面2,3曲目はレゲエではないのだが、これはこのアルバム全体に言える事だが、そのサウンドは明るくファンキーでパーカッシヴ、そしてダモ鈴木のヴォーカル含め緩い高揚感と浮遊感が堪らなく気持ち良い。

 

A面ラストの3曲目は唐突に終わる。そしてB面1曲目の「Q」が始まる。この曲もレゲエではないとのだが、ちょっとレゲエ的だ。そして、この曲でもダモ鈴木は日本語で歌っている。

 

B面2曲目「(Do Watch What You Can) Prof.」はちょっとパンキッシュなカリブミュージックという感じ。

 

そしてスイートなB面3曲目「I See Your Smile」になだれ込む。この曲でのダモ鈴木の声と歌は本当にスイートで、聴いていて気持ちが良い。

 

B面ラストの「Oriental Cafe」はアルバムの最後を飾るに相応しいパーカッシヴで勢いが有る曲だ。曲調はアフロ・フュージョンという感じか。この曲でもダモ鈴木は日本語で歌っている。

 

このアルバム、ダモ鈴木がCanに在籍していた時のアルバムより好きかも…という事で、続く『Ⅲ』と『Live』も聴いてみた。

 

【1986年】Ⅲ/Dunkelziffer

 

【収録曲】

 

A1. Give Me Your Soul

A2. Akino Aruhini

A3. Network

A4. Trailer Ⅱ

B1. Take Off Your Heavy Load

B2. No Matter

 

【1997年】Live/Dunkelziffer

 

【収録曲】

 

01. Coffeehouse

02. After Saturday Night

03. The Messenger

04. Facing The Wind

05. Distant Drums

06. These Days

07. Up Date

08. Shamrock

09. You're My Melody

 

『Ⅲ』を聴いたら、"あれ?気持ちが軽くなる感じが無いな"と思った。『In The Night』と比べて明るさが後退したからかもしれない。迷曲(?)「Aki No Aruhini」(秋の或る日に)はダモ鈴木による歌謡曲だ。"生きてはゆけない、やり切れない、何のために、どうして生まれて、教育を受け、鎖に繋がれたの~"って歌謡曲にしても変な歌詞である。よく他のメンバーもこの曲を演奏してアルバムに収録する事に同意したな、と思ってしまった。再発盤には2曲ボーナストラックが収録されているのだが、「2nd Future Information」という曲は、これまたダモ鈴木の変なヴォーカリゼーションが炸裂するというか、交通事故現場の録音のようなというか、そんな迷曲(?)である。

 

『Live』は1997年リリースだが、録音は1985年である。このライヴアルバムは良かった!先ず、音はクリアで各楽器のバランスが良い。音を加工する事も無く、パーカッシヴで骨太な演奏ですっ飛ばす、そんな演奏なので、ダイレクトにバンドの勢いが伝わる感じだ。1曲目の「Coffeehouse」は『In The Night』収録の「Oriental Cafe」なのだが、ダモ鈴木は後半で何とCanの『Tago Mago』収録の「Halleluwah」の一節を歌っている。また、2曲目の「After Saturday Night」は『In The Night』収録の「Sunday Morning」である。そりゃあ、日曜の朝は土曜の夜の後、シャレなんだろうけど、曲名を変えなくても…と思ってしまった。全曲カッコイイのだが、8曲目の「Shamrock」は"え~!そこでフェイドアウトする?"とちょっと不完全燃焼。ラストの「You're My Melody」は希望に満ちた感じがする美しい曲なので、「Shamrock」の不完全燃焼はそれで帳消しする事にしよう。

 

ダモ鈴木の歌を聴いていたら、久し振りにCanを聴きたくなったので、ダモ鈴木が参加している『Tago Mago』、『Ege Bamyasi』、『Future Days』の3枚を聴いてみた。

 

【1971年】Tago Mago/Can

 

【収録曲】

 

A1. Paperhouse

A2. Mushroom

A3. Oh Yeah

B1. Halleluwah

C1. Aumgn

D1. Peking O.

D2. Bring Me Coffee Or Tea

 

【1972年】Ege Bamyasi/Can

 

【収録曲】

 

A1. Pinch

A2. Sing Swan Song

A3. One More Night

B1. Vitamin C

B2. Soup

B3. I'm So Green

B4. Spoon

 

【1973年】Future Days/Can

 

【収録曲】

 

A1. Future Days

A2. Spray

A3. Moonshake

B1. Bel Air

 

私が最初に聴いたCanのアルバムは『Tago Mago』で、昔々ジャーマンロックの再発ラッシュが有った時に再発盤を買って聴いた。A面ラストの3曲目「Oh Yeah」でダモ鈴木の歌が途中から日本語になったのには驚いたものだ。"虹の上から小便"の衝撃は今も有効だ。

 

『Ege Bamyasi』収録の「Vitamin C」は日本のAsteroid Desert Songsの『'Till Your Dog Come To Be Feed』に収録しているカバー曲で知った。A.D.S.のカバー曲の方がやっぱり面白いかな?

 

上海に来てからは『Future Days』をよく聴いていた。A面1曲目のタイトル曲を聴くと、霧で視界が悪い未来を切り拓くかのような感じを受けるからだ。

 

Canの方がDunkelzifferよりサイケデリック/ブルース感が強いから、Dunkelzifferの方が明るく聴こえるんだろうな。

 

しかし、CanにしてもDunkelzifferにしても、私が好きなのはダモ鈴木の声と歌だ。結局、私はCanやDunkelzifferではなく、ダモ鈴木の音楽が好きなんだ、という事を今回改めて認識した次第だ。ダモ鈴木は今年2月に亡くなってしまったが、彼が残した音源は沢山有る。Damo Suzuki's Networkや他のミュージシャン/バンドとの共演音源は未聴なので、これからゆっくり聴いて行こう。田畑満との共演音源は有るのかな?有ったら直ぐに聴いてみたいな…

 

とりあえずYou Tubeにダモ鈴木と田畑満の共演ライヴの映像が有ったので貼っておこう。このライヴは録音されていないのかな…