私は只のリスナーである。普通のリスナーである。ミュージシャンでもない。お金を払ってミュージシャン/バンドの音源を買って聴いている只のリスナーである。

 

その只のリスナーである私は最近Steve Albini関連の音源をよく聴いている。理由は最近Steve Albiniが亡くなったからだ。Steve Albiniが亡くなる前に私が好きだった彼が関わった音源は、若かった時から変わらないのはThe Jesus Lizardの『Goat』とP.J. Harveyの『Rid Of Me』、中国は上海に来てから聴いた音源ではThe Breedersの『Pod』とSteve Albini自身のShellacの音源が主である。今、聴いている音源はTarと日本のZeni Gevaの音源である。大体1990年代前半の音源である。ジャンルに関わらず、その頃の音源はいかがわしさと言うか猥雑さと言うかそんなものを感じるので今でも面白いと感じるのだ。2000年代に入ってからの音楽は何となく殺菌された音楽のように感じるから、私が聴く音楽に最近のものは少ない。

 

今日、Zeni Gevaのメンバーだったギタリストの田畑満さんのXを読んだ。Steve Albiniが亡くなった後の田畑満さんのXにはSteve Albiniへの思いが溢れた投稿が度々出て来るが、昨日の投稿に"死んでから慌てて聴くなー。死ぬ前に聴けー。死ぬ前にライヴ来いー。"という投稿が有った。この投稿を読んだ時、私は考えさせられたと言うか、何とも言えない気持ちになった。私は今までSteve Albini自身や彼が関わったミュージシャン/バンドのライヴには行った事が無い。レコードやCD等の音源は買って聴いていた。興味を持っていたミュージシャン/バンドは他にも沢山有ったし、でも財布のお金には限りが有る。誰でもそのような状態で音源を買ったり、ライヴに行ったりしていると思う。しかし、田畑満さんのようにプレイする側から見たら、そのように感じるのも理解できる。勿論、100%理解できるとは言わない。その狭間で複雑な気持ちになったのだ。

 

この田畑満さんのXのSteve Albiniに関する投稿は、本当にSteve Albiniへの思いが溢れていて、読むと何だか感動して切なくなってしまう素晴らしい内容だ。

https://twitter.com/Tabatamitsuru

 

その後に"「名前だけ知ってたけど、スルーしたままズルズルきてしまった。皆がこれだけ騒いでいるのなら聴く価値ありそうだ」と、これでまたその方の音楽が広まるのであれば、それはそれでいいことだとは思うけれど。その人と音楽が好きな人にとっては何となく淋しい。"という投稿が有った。この投稿は大人としての対応かな?と思った。

 

私はこの田畑満さんの投稿に対して悪い感情は持っていない。Steve Albiniが亡くなった後にNirvanaの『In Utero』制作前にSteve AlbiniがNirvanaに送ったFaxの内容や、Steve AlbiniとKurt Cobainのちょっとした美談が公開された。Steve Albiniは筋金入りのインディー/オルタナティヴロッカーだったし、Big BlackやRapemanでちょっと物議を醸したので、亡くなった後にこのNirvanaとの美談が公開されたら、誰でも"Steve Albiniって良い人だったんだな"と思って興味を持つ人が出て来るのは当然の事だと思うし、一方で、生前からSteve Albiniの音楽/サウンドが好きだった人から見ると、"何を今更"と思う気持ちもわからないではない。

 

Steve AlbiniとNirvana

 

 

 

どちらの気持ちもわかるけど、今の私が言いたい事は、どういうキッカケでもSteve Albiniが残してくれた素晴らしい音楽を少しでも多くの人に聴いて貰いたいな、という事だけである。キッカケや機会はその人のその時の感情や環境に左右されると思うので、いつ訪れるかわからないものだ。全ての人がその良さをわかるとは思わないが、リアルで生々しいロックが好きな人なら、一度は聴いてみてほしい。絶対にその好さがわかると思うから。

 

例えばTarの『Jackson』収録の1曲目「Short Trades」の冒頭のベースのサウンドに"ビビッ!"と何かを感じた人と一緒に酒を酌み交わしながら、一緒にSteve Albini祭りをしたいと言うのが今の私である。上海に住んでいるんだけど。

 

Zeni Gevaは今聴いている最中だが、その内に田畑満さんが参加していたAcid Mothers Templeも聴いてみようと思っている。Acid Mothers Templeは何となくずっと亡くなったモダーン・ミュージックの生悦住英夫さんとの話をずっと憶えているからだ。そこからのキッカケで田畑満さんの今の音楽を聴くようになるかはわからない。財布のお金に余裕が有ったら手を出すかもしれないが、私のお金は妻に管理されているからなぁ…

 

結婚して子供を持って、私の場合、国際結婚で住んでいる場所は中国で、これから好きなアーティストのライヴに行けるかどうかはわからないが、機会が有ったら行こうという気持ちだけは持っておこうかな。しかし、ハードコアリスナーになりたいと言っても、音楽がハードコアパンクに近くなると、ジジイがライヴに行ったら死んでしまうかもしれないな…