結局、肺炎による微熱と咳が止まらず、掛かり付けの医者と相談した結果、入院治療する事になった。1/31に入院して2/5に退院するまで、毎日点滴4本とネブライザーでの吸入を朝晩の2回を行った。空腹時採血は入院時と翌日の2回、その他、痰、尿、大便も採取して検査を行った。入院する前の検査では、血の検査結果から、RSVウィルスが陽性である事はわかっていたが、今回の検査ではマイコプラズマ、インフルエンザ菌、溶連菌も有った事がわかった。そんなに感染するものだろうか?

 

点滴4本の時間は5時間半から6時間くらい、吸入は点滴と同時に行った。点滴している間は暇なので、最初の内はスマートフォンに入れた音楽を聴いたり、持って行った本を読んだりして時間を過ごした。持って行った本は病気になった時に読む私の定番、梶井基次郎の『檸檬』と読み掛けの泉鏡花の『鏡花随筆集』の2冊。『檸檬』はやはり良い。何度読んでも飽きない。大好きな漫画家のつげ義春が、自作の漫画に『檸檬』の世界を一部オマージュとして引用している。私は梶井基次郎とつげ義春の作品の世界が年寄った今でも好きだ。『鏡花随筆集』は何だか読み難かった。先ず内容自体はちょっと反抗的な若い頃に読んだ方が良いと思った。私は若かった頃に寺山修司や澁澤龍彦の本を読んで、その世界に大分魅せられたが、今読んだらどう感じるか?と考えると、何となくしっくり来ないような気がする。もう一つどうも読み難いと思った要因は、江戸っ子のような文体だ。文語体ではそのような感じはあまり受けないのだが、口語体ではそれが顕著なのだ。また、文中に"…"や"-"が多いのも読み難さを増している要因の一つのように思える。そんな訳で退院した今でもまだ『鏡花随筆集』を読み切っていない。

 

入院当初は音楽を聴いたり、本を読んだりして時間を過ごしていたのだが、その内に飽きて来て、スマートフォンで動画ばかり見ていた。見ていた動画は素人が撮影したユーモアが有るものが多かった。くだらないと言えばくだらないのだが、そういうものの方が気が紛れて、時間を潰す事ができるのだ。

 

さて、私は中国は上海に居るので、上海の病院に入院したのだが、中国の病院で出される病院食はどのようなものか、紹介してみよう。私は日本の病院食の中国版をイメージしていたが、全然違っていて、"これが病院食?"と思うようなガッツリ系の食事だった。

 

1/31の昼食。左上からは青菜(チンツァイ)の炒め、凉皮(リャンピー)と咸菜(シェンツァイ)の炒め煮(?)、豚肉と茸の炒め、右下は確か川魚の红烧(ホンサオ)、キャベツのスープ。キャベツのスープはトマトの味もしたが、スープの中にトマトは無かった。ご飯は半分残した。

 

1/31の昼食後、2時間くらいして点心と言って出て来たものは黑米粥(ヘイミーゾウ)。紫米のお粥なのだが、量が多過ぎて少し食べて残してしまった。これは朝食で食べたかった。

 

1/31の夕食。左上から娃娃菜(ワーワーツァイ)=小さい白菜の炒め、カリフラワーの炒め、红烧狮子头(ホンサオスーズートウ)=大きな肉団子の醬油味の炒め煮、右下は红烧肉(ホンサオロウ)(豚肉)、豆腐と榨菜(ザーツァイ)のスープ。红烧狮子头はしょっぱく、スープはあまり味がしなかったが、しょっぱい红烧狮子头の味を中和させるには効果的だった。

 

2/1の朝食。肉包(ロウバオ)=肉まん、緑色の袋は榨菜、お粥、茹で卵、牛乳。榨菜は2/4,5は酱瓜(ジャングァ)=胡瓜の醤油漬けになった。お粥は咸菜が入ったお粥と少しだけかぼちゃが入った南瓜粥(ナングァゾウ)になったりしたが、基本的に同じものなので、以降の朝食は割愛する。

 

2/1の昼食。左上から豆腐の炒め煮、娃娃菜の炒め、排骨(パイグゥ)=骨付き肉の炒め煮、右下は多分鲈鱼(ルーユウ)の红烧、榨菜と卵のスープ。鲈鱼は少し食べたが、生臭かったので残した。豆腐の炒め煮はレンゲが無かったので全部食べる事はできず。

 

2/1の昼食後の点心は馄饨(フントゥン)=ワンタン。これも朝食並みの量だったが、味はまぁまぁだったので、全部食べたらお腹が苦しくなった。

 

2/1の夕食。左上からキャベツの炒め、茄子の炒め煮、牛肉の醤油味の炒め煮、右下は豚肉と玉葱の炒め、紫菜(ヅーツァイ)=海苔のような海藻のスープ。牛肉は美味しかった。豚肉と玉葱の炒めは何だか玉葱の味が変で玉葱は食べず。

 

2/2の昼食。この日は妻の母が食事を持って来てくれた。左は鴨のスープ、右は平菇(ピングゥ)という茸の炒め、かぼちゃの炒め煮。家の味。鴨のスープは病人が飲むには少し鴨の脂が強かった。

 

2/2の昼食後の点心は红枣(ホンザオ)=干した棗(ナツメ)が入った红豆汤(ホンドウタン)=小豆のスープ。粒の形が残った小豆が結構入っているので、食べ応えが有る。これは美味しかった。全部食べた。2/3から何故か点心は出ず。

 

2/2の夕食。左上から生菜(センツァイ)=レタスのような野菜の炒め、豚肉の红烧肉、挽肉を湯葉で巻いた煮物、右下は大根の炒め煮、スープ(具は忘れた)。見てわかる通り、スープの具は殆ど無い。大根が美味しかった。

 

2/3の昼食と夕食。この日も妻の母が食事を持って来てくれた。老母鸡(ラオムージィ)=年寄った雌鶏のスープと芹菜(チンツァイ)=セロリの馄饨。美味しかったが食べ切れず、夕食もこれを食べた。

 

2/4の昼食。左上から豚の排骨の红烧、胡瓜と木耳の炒め、名前のわからない少し苦みが有る菜っ葉の炒め、右下は烏賊と高菜の炒め、スープは確か冬瓜(ドングァ)のスープ。あまり食欲が無く、烏賊は殆ど食べず。その他は半分くらい食べた。

 

2/4の夕食。左上から豚肉の红烧、青梗菜の炒め、麩のようなものに肉団子を入れた煮物、右下は粉丝(フェンスゥ)=春雨、スープ(具は忘れた)。肉団子は美味しかった。春雨は箸で掴み難かった。

 

2/5の昼食。左上から海老とミックスベジタブルの炒め煮、生菜の炒め、タレを掛けた揚げた川魚、右下はもやしと榨菜の炒め、この日はなぜかスープは無く、バナナが付いて来た。味が殆ど無いとは言っても、ご飯とおかずを喉に流し込むため、スープは欲しかったところ。バナナを食べたかったので、食事は半分くらいだけ食べた。

 

私より先に肺炎で入院した中国人の妻は、病院の食事は美味しくないと言ってあまり食べず、妻の母から食事を持って来て貰ったり、出前を頼んだりしていた。私はてっきり日本の病院食のような薄味だからかと思っていたが、実際はガッツリ系の味は美味しいとは言わないが、まぁ安い食事の味だった事がわかった。レストランではないので、味をどうのこうの言うつもりは無いが、栄養のバランスはどうなんだろう?と思った。医者は宿直すると病院の食事を食べるようだが、医者の1人は朝食はあまり習慣じゃないと言って、自分で持って来ていると言った。まぁ、そんな味である。旅行に来た日本人がこの食事を食べたら、100%残すだろう。そんな味である。私はこのような味にはもう慣れてしまっているので、そんなもんだと思って食べた。

 

退院後に食べた家の食事は特別なものではなかったが、やはり美味しかった。