今年8月の一時帰国に合わせて、私が学生時代だったか若かった頃に読んでいた東海林さだおの本を買った。選んだのは『●●の丸かじり』シリーズの最初の単行本『タコの丸かじり』で、上海に持ち帰って来た。

 

カバー表紙

 

カバー裏表紙

 

カバーを外した表紙

 

カバーを外した裏表紙

 

『●●の丸かじり』シリーズは週間朝日に掲載されたエッセイ『あれも食いたいこれも食いたい』を単行本化したもので、『タコの丸かじり』は1988年に朝日新聞社から刊行された最初の丸かじりの本である。

 

学生時代に友人とよく読んでいた共通の作家は確か村上春樹と椎名誠で、どういうキッカケだったかもう忘れてしまったが、私は東海林さだおもよく読んでいて、『●●の丸かじり』シリーズもよく読んでいた。

 

先日『タコの丸かじり』を読み返してみたのだが、最初の「ナイター・弁当・生ビール」を読んだら、直ぐに思い出した。当時の記憶が蘇ってきた。今読んでもやっぱり面白い。

 

それでは早速収録曲…じゃなかった、収録エッセイを紹介しよう。

 

【収録エッセイ】

 

ナイター・弁当・ビール
激突!激辛30倍カレー

究極のネコ缶を食べてみる

「おいしい」ってどんな味?

馬食い団、ひそかに浅草へ

とうもろこしは律儀である

ナゾの季節物、冷やし中華

スイカはがぶり食いに限る

どこへ行ったか「かき氷」

終戦当時の前科を告白する

殿がたはバイキングが苦手

ああ八丈島のタコの丸焼き

プラスチック丼世に氾濫す

本物のうな重に巡り合う

嘆かわしい新おにぎり事情

天下一品丸かじりのすすめ

秘伝「技あり」炒飯のコツ

焼き鳥の串の業績を讃える

うれし懐かし、鯨食べたい

回転寿司なんかこわくない

フライ物の正しい生き方

もうくさくない「くさい飯」

「ピーナツのナゾ」を追って

がんばれ、デパート大食堂

勇気をもって厚く切る塩鮭

いい気な「おせち」を叱る

牛丼屋のムードはなぜ暗い

やっぱり試食はむずかしい

にぎり寿司の賢い運営計画

台所の「捨てられない」面々

爽やかに散歩シーズン開幕

油揚げの処世術を見習おう

花見点描「花より段ボール」

伝統を誇る菓子パンを総括

立ち食いそばを「評論」する

全て食べ物に関するエッセイだが、美食的な物は一つも無く、今の時代なら久住昌之的・『孤独のグルメ』的な内容のエッセイである。しょうもない事に凄く拘るという感じ。こう言ったら失礼だが、私はその世界が大好きだ。こういう内容のエッセイは椎名誠も『怪しい探検隊』シリーズ等のエッセイでも書いているし、椎名誠と東海林さだおとの対談集も刊行されている。

 

文体は"昭和軽薄体"と言われているようだが、私は別に軽過ぎる感じは受けない。そりゃあ、明治大正の作家の随筆と比べたら軽いのは当たり前だが、今の時代のエッセイの文体と比べると、私は普通の書き方だと思う。今の時代ならドラマの『孤独のグルメ』の松重豊扮する井之頭五郎の頭の中のセリフを少し本向けの文章にしたような感じと言ったらわかり易いかな?

 

話を『タコの丸かじり』に戻すと、どのエッセイもとにかく面白い。「終戦当時の前科を告白する」というエッセイはタイトルから内容を想像できないので少し書くと、東海林さだおが終戦当時の少年時代に食べた物を書いているのだが、イナゴやカエルの他にカブトムシやクワガタの蛹を火で炙って食べた話が掛かれている。食べる物が無かった所為だと思うが、香ばしくて美味しかったそうだ。今の昆虫色の先取りである。また「嘆かわしい新おにぎり事情」ではコンビニエンスストアの話が出てくるが、略称をコンストとしている所に、今読むと時代性を感じる。

 

私が一番好きなエッセイは「にぎり寿司の賢い運営計画」である。

 

 

 

にぎり寿司を順番を考えずに無造作に食べる人って居るのだろうか?私も東海林さだおのように、序盤・中盤・終盤と言うか、大袈裟な表現だが、起承転結(?)を考えながら食べる方である。

 

こういう食べ方の順番について、久住昌之は『かっこいいスキヤキ』収録の「夜行」と「最後の晩餐」に書いている。「夜行」では弁当のおかずを食べる順番、「最後の晩餐」ではスキヤキを食べる順番を書いているのだが、私はどちらかと言うと弁当なら下の写真の右側の流れ、スキヤキや通常の食事なら下の写真の右側の流れだ。但し、スキヤキの肉が豊富に有るのなら、左側の流れになるかもしれない。

 

「夜行」の一コマ

 

「最後の晩餐」の一コマ

 

私は食べるのも料理するのも好きだが、どの国問わず食べ物の番組を見るのが好きだ。高級食材じゃなくても、新鮮な食材を料理して皆楽しそうに食べている番組を見るのが好きだ。そういう番組を見ると、益々料理をしたくなる。そういう人には東海林さだおの「●●の丸かじり」シリーズを読む事を激オススメだ。