興味を持っているのに中々手を出して来なかったミュージシャンの一人がRory Gallagherだった。そしてもっと早く聴いていれば良かったと後悔した。

 

Rory Gallagher

 

今回聴いてみたのは、ソロの1stアルバム『Rory Gallagher』、2ndアルバム『Deuce』、3rdアルバムでライヴアルバムの『Live! In Europe』、4thアルバム『Blueprint』、5thアルバム『Tattoo』、6thアルバムでライヴアルバムの『Irish Tour '74』、ソロの前のグループTasteの2ndアルバム『On The Boards』、2015年にリリースされた1970年のワイト島フェスティバルの映像音源『Waht's Going On - Live At The Isle Of Wight』である。

 

【1971年】Rory Gallagher

 

【1971年】Deuce

 

【1972年】Live! In Europe

 

【1973年】Blueprint (再発ジャケット) ※私は顔がはっきり見えるこのジャケットが好き。

 

【1973年】Tattoo

 

【1974年】Irish Tour '74

 

【1970年】On The Boards

 

【2015年】Waht's Going On - Live At The Isle Of Wight

 

Rory Gallagherの名前を知ったのは、遥か昔、私がHR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)小僧だった頃に読んだ音楽雑誌『BURRN!』のブリティッシュロックのアルバム特集で、『Tattoo』のアルバムジャケットを見た時だったかと思う。

 

最初に結論を書くと、これからRory Gallagherを聴いてみようと考えている人には『Live! In Europe』から聴く事を激オススメする。その理由について書くと、①このアルバムはソロの1stアルバムからの相棒であるベースのGerry McAvoyとドラムスのWilgar Campbellとのトリオ演奏なのだが、Gerry McAvoyもWilgar CampbellもRory Gallagherの熱量にも負けていないつんのめりながら突き進む素晴らしい演奏が聴ける事、②各楽器の音のバランスが良い事、③録音状態が良いため①②の魅力が凄く伝わる事、といったところだ。

 

それでは『Live! In Europe』の曲目を紹介しよう。

 

A1: Messin' With The Kid

A2: Laundromat

A3: I Could've Had Religion

A4: Pistol Slapper Blues

B1: Going To My Home Town

B2: In Your Town

B3: Bullfrog Blues

 

A2は『Rory Gallagher』から、B2は『Deuce』からでRory Gallagherのオリジナル、A1はJunior Wellsの曲、A4はBlind Boy Fullerの曲、A3, B1, B3はトラディショナルの曲をRory Gallagherがアレンジした曲だ。

 

A1は正にシカゴブルース、Rory Gallagherの熱いヴォーカルはこのようなブルースを演るのにピッタリマッチしている。曲は抑えるところは抑えるのだが、リズムは段々加速して行き、爆発させるところは爆発させている。

 

A2はブルースロック、エレクトリックギターの音がAC/DCのAngus Youngのようだ。演奏はスタジオ録音より断然良い!曲は途中から加速、リズムも演奏も突っ走っている感じだ。リズムが早い曲はガレージパンクのようにも聴こえる。

 

A3は粘っこいスライドギターのエレクトリックスローブルース、Rory Gallagherのブルースハープも素晴らしい。曲の最後は爆発するように終わる。

 

A4はアコースティックギター1本のフォークブルース。アコースティックでもRory Gallagherは素晴らしい。

 

B1はカントリーブルース、Rory Gallagherはマンドリンを弾いている。バッキングはシンプルでドラムはバスドラだけ。この曲をもしRy Cooderが歌ったらとぼけた感じになるのだろうけど、Rory Gallagherが歌うと熱いカントリーブルースになる。聴衆もノリノリで手拍子まで音楽の一部になっている。

 

B2はブギ―ブルース、熱いエレクトリックスライドギターで、めんたんぴんが演ってもおかしくなさそうな曲。演奏の最後のスライドギターが"んにゃ~んにゃ~んにゃ~"と聴こえて面白い。

 

B3は牛蛙ブルースだがロックンロールで、The 5678'sが演りそうな曲。曲の途中でベースソロ・ドラムソロが有るが、曲の勢いはそのままに終わりに向けてどんどん加速して行く。最高のラスト!

 

このアルバムはとにかくRory Gallagherの情熱が迸っている。爆発していると言って良いだろう。A1が終わった後の"Thank you very much!!"は"よっしゃー!掴んだぞ!!"とガッツポーズをして言っているような感じに聴こえる(私だけ?)。そしてその場に居る3人でしか出来ない/出せない音楽を、素晴らしい音楽を自信を持って聴衆に伝えようという気持ち/気迫がビンビンに伝わってくるのだ。このアルバムを聴く時は爆音で聴くのが正しいだろう。

 

Rory Gallagherはブルースを中心にルーツミュージックを完全消化して自分のものにしているので、出て来る音に説得力が有るのだろうな。

 

『Tattoo』収録のキラーチューン「Cradle Rock」で始まる『Irish Tour '74』も良いのだが、編集と構成、ドラムの音を『Live! In Europe』と比較すると、私は『Live! In Europe』に軍配が上がると思うのだが、如何だろうか?

 

ライヴアルバムを聴いた後にスタジオアルバムを聴くと、何だかこじんまりとした印象を受ける。The Bandだったらライヴアルバムの『Rock Of Ages』が良いような感じと言ったらわかるだろうか?私が聴いた4枚のスタジオアルバムの中では意外に思うかもしれないが、『Blueprint』が良かった。甘さ(ポップさ)が無い辛口のブルースのように聴こえたからだ。

 

ところでEric Claptonが在籍したCreamの再来と言われたTasteについては、これからRory Gallagherを聴こうという人にはオススメしない。スタジオアルバム『On The Boards』の出来はソロアルバムと比べてイマイチな感じ、ワイト島のライヴ音源は音質がイマイチでRory Gallagherのプレイは良いと思うが、トータルの音楽としては魅力が伝わりにくくイマイチな感じがしたのだ。ホントになぜCreamの再来と言われたのか"?"な感じがした。Rory Gallagherはソロになって良かったんだな。

 

The Rolling Stonesから脱退したMick Taylorの代わりに誘われたとか、Deep Purpleから脱退したRitchie Blackmoreの代わりに誘われたという話が有るが、Rory Gallagherは誰かのバンドに納まるような器ではないだろう。ブルースを歌うヴォーカリストとしても超一流だと思うからだ。

 

ロックだブルースだとジャンルに拘らずに、良い音楽、本当にカッコいい音楽を求めている人にこそ、是非Rory Gallagherの『Live! In Europe』を聴いて貰いたい。絶対に損はさせないと断言する。