①クラシック~②現代音楽~③前衛ジャズ~④ジャズと繋げて書くと、私は②③をよく聴く。④も聴いているが、ビバップや戦前のジャズまで遡って聴いているかと言うと、それ程聴いていない。①は子供が生まれた時はよくモーツァルトを掛けていた。今は少しバッハも聴くくらいだ。ところで"家具の音楽"の概念で有名なエリック・サティはどの位置に居るのだろう?①と②の間か?「ジムノペディ」によってアンビエントミュージックの創始者のように言われる事が有るが、実際に楽曲としての「家具の音楽」が収録されたアルバムを聴くと、アンニュイとか優しさは感じられず、何だか意地悪な感じを受ける。それはしつこい反復のせいで、「ヴェクサシオン」は52拍からなる1分程度の曲を840回繰り返すのだそうだ。これはもう演奏者いじめではないか。

 

何だかんだ言って私はサティが好きである。そこで今回は私が好きな少し変わった三つの「ジムノペディ」を紹介しようと思う。

 

一つ目は高橋悠治のピアノソロアルバム『エリック・サティ:新ピアノ作品集』収録の「ジムノペディ」である。

 

エリック・サティ:新ピアノ作品集/高橋悠治

 

この「ジムノペディ」のどこが変わっているかと言うと、一般的な演奏と比べてスピードが遅いのである。最初は少し違和感を感じたが、こればかり聴いていたらそのスピードを普通であると感じるようになるから不思議だ。もしこのアルバムを気に入ったのなら、他のピアノソロアルバム『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』や『Solo』も聴いてみる事をオススメする。

 

二つ目は新津章夫の『Science Classics』収録の「ジムノペディ」である。

 

Science Classics/新津章夫

 

このアルバムはサティの曲だけでなく、バッハやモーツァルト、ショパンなども取り上げているのは、変わっているのは全て新津章夫のギターの多重録音で作られている事だ。しかも出て来る音がまるでギターのように聴こえない。あまりクラシックっぽくもなく、日中に紅茶を飲みながらこのアルバムを聴くのも良いだろう。もしこのアルバムを気に入ったのなら、1stアルバム『I・O』(イオ)も聴いてみる事をオススメする。Steve Tibbettsが好きな人は気に入るだろう。

 

三つめはAkira Rabelaisの『Eisoptrophobia』収録の「ジムノペディ」である。

 

Eisoptrophobia/Akira Rabelais

 

"鏡恐怖症"と題されたこのアルバムには、サティの曲の他、バルトークとVincent Carteの曲で構成されているのだが、変わっているのはAkira Rabelaisが弾いたピアノの音が彼のシステムを通る事により、歪んだり引き延ばされたり接続不良のようになったりして出てくる事だ。Akira Rabelaisは自身の音楽をマジックリアリズムの音楽と言っているようだが、何だか頭の中のうろ覚えの曲が実際に再生されて出て来ているように感じる。全体的な印象は少しダークな感じで、私は夜にこのアルバムを聴いている。もしこのアルバムを気に入ったのなら、『A La Recherche Du Temps Perdu』も聴いてみると良いだろう。このアルバムは声楽のアルバムで約5時間の大作で、昼に聴くと白昼夢の音楽のように聴こえる。また、彼の他のアルバムの中にはDavid SylvianのレーベルSamadhisoundから出ているものも有るので、ダークアンビエントが好きな人はAkira Rabelaisの音楽を気に入るだろう。

 

今、私の手元に有る「ジムノペディ」は以上である。これからも変わった「ジムノペディ」が有ったら聴いてみたいと思っている今日この頃である。