世の中、悪人は居ない方が良いのだが、善人が居る一方で悪人が居る。これは事実だ。当然、悪人は悪い事をばれないように行う。悪い事には色々有るが、その一つにデマを流す事も有る。本当の事ではないので無視すれば良いのだが、それが全体に影響する事が有る。見ざる、言わざる、聞かざる=See No Evil, Say No Evil, Hear No Evilでは駄目な時が有るのだ。良い事を行なっていて黙っているだけでは駄目なのだ。
前振りはこのくらいにしよう。『Hear No Evill』は1988年にリリースされたBill Laswellの2ndソロアルバムである。アルバムタイトルに込められた意味は"良からぬ音楽は聴くな、俺の音楽は良いぞ"かな?
Virgin US盤とVenture UK盤、再発盤でジャケットが異なる。私は1988年のUK盤のジャケットが好きだ。
1988年US Virginリリースのジャケット
1988年UK Ventureリリースのジャケット
1999年US Meta Recordsリリースのジャケット
2016年Bill Laswell自主リリースのジャケット
このアルバムの録音メンバーは以下の通り。
Bill Laswell: bass, programmed by beats
Zakir HUssain: tabla
Aiyb Dieng: percussion, talking drum
Daniel Ponce: percussion, congas
Nicky Skopelitis: guitar
Shankar: violin
Jeff Bova: keyboards, synthesizer
Bill Laswell
Zakir Hussain
Aiyb Dieng
Daniel Ponce
Nicky Skopelitis
Shankar
Jeff Bova
Shankarの本名はLakshminarayana Shankarで、インドのシタールで有名なRavi Shankarではない。
Ravi Shankar
Nicky SkopelitisとAiyb DiengはBill Laswellと共に日本のフリージャズミュージシャンでサックス奏者の坂田明のグループのFlying Mijinko Bandに参加している。私は故・浅川マキの池袋文芸座ル・ピリエでの大晦日ライヴで坂田明がゲスト出演した時のカラオケタイム(?)での浅川マキとのデュエットが大好きだった。
坂田明
エンジニアはMartin Bisiだ。
Martin Bisi
Martin Bisiの名前を聴くと、私は日本のアヴァンギャルドグループのBoredomsのアルバム『WOW2』を思い出す。このアルバムのプロデュースはJohn ZornでエンジニアはMartin Bisiだ。私はこの頃のBoredomsが大好きだった。
Boredoms
WOW2
話が脱線してきたので、そろそろこのアルバムの曲目を紹介しよう。
1. Lost Roads
2. Bullet Hole Memory
3. Illinois Central
4. Assassin
5. Stations Of The Cross
6. Kingdom Come
さて、Bill Laswellを知っている人がその名前を聞いた時に想像するイメージは何だろうか?
1) 雑食性の仕掛け人、コラボレーションが多いが、当たり外れが多い。(失礼!)
2) ダブの人
思い付いたのはこの二つだったが、こんなところではないだろうか?私が一番初めにBill Laswellの名前を認識したのは、John ZornがBill Laswellと元Napalm DeathのドラマーMick Harrisと組んだグループPainkillerだった。
Painkiller (左からJohn Zorn, Bill Laswell, Mick Harris)
Painkillerの2ndアルバム『Buried Secrets』は昔HR/HM雑誌『BURRN!』で当時の編集長の酒井康さんに酷評されていたんじゃなかったかな?Napalm Deathのアルバムもよく酷評されていたが。
Buried Secrets
Bill Laswellについて上記のような印象を持っている人達に是非このアルバムを聴いて貰いたい。私がこのアルバムを聴いて頭に浮かんだのは中期のThe Rolling StonesとRy Cooderだった。
The Rolling Stones (Mick Taylor在籍時代)
Ry Cooder
つまり、このアルバムのサウンドはアーシーで大陸的だという事だ。このアルバムにはレゲエ/ダブのベースラインは無く、ギターはスライドギターを使っている。3曲目はカントリーっぽいブルース的ですらある。インドっぽいオリエンタルな感じはShankarのエレクトリックヴァイオリンとZakir Hussainのタブラの効果、4曲目のリズムは初期ヒップホップ的で、この曲以外でもプログラムされたドラムパターンが使われているが、それでも全体的な空気感が祝祭的でライヴ的なのはMartin Bisiの手腕によるものだろう。このアルバムを朝に聴く事も有るのだが、朝でも聴けるのはパーカッションや空気感にアンビエントっぽい感じが有るからだろう。Zakir Hussainのタブラが炸裂するのは1曲目と最後の6曲目だが、キラーチューンはやはり最後の6曲目だろう。
人生は色々だ。大変な事も有るが、このアルバムを聴きながら、上海の晴れてはいるがスモッグが漂う朝靄が掛かったような朝の空を眺めてみると、今日も頑張ろうかな…と思えてしまうのだから、人の気持ちは不思議なものだ。