早川義夫を知ったのは、鳥井賀句の「魂のロッカー達」を読んだ時だ。この本ではThe Rolling StonesやThe Animalsといった'60年代のビートグループやBruce Springsteen、英米のパンクロックグループを取り上げていた。特にPatti SmithやJohny Thundersの文章には鳥井賀句の彼らに対する愛情が感じられる素晴らしいものだった。日本のロッカーの事も書いていた。ザ・ダイナマイツの山口冨士男、INUの町田町蔵、そしてジャックスの早川義夫…

最初に聴いたのはジャックスの1stアルバム「ジャックスの世界」だった。初めて「マリアンヌ」を聴いた時はおどろおどろしいというか、アングラっぽいな…という感じだったと思う。良さは直ぐにわからなかったように思う。

サブカル好きの若かりし頃は漫画雑誌「ガロ」を読んでいた。つげ義春を知ったのは「ガロ」だった。ガロの漫画家の事を書くとどんどん話が脱線するので書くのは止すが、つげ義春を読んでジャックスや早川義夫のこのアルバムを理解でき、そして好きになった。私の場合、ジャックスの「マリアンヌ」は、つげ義春の「ゲンセンカン主人」のイメージだ。

さて、このアルバムに話を戻そう。私が一番好きな曲は8曲目の「朝顔」だ。この曲には本当に純粋というか清い感情が有る。私は死んだ事は無いが(当たり前だ)、この曲は死ぬ前の静けさの中で始まり、最後の早川義夫の叫びは魂の叫びのようだ。

3曲目の「無用ノ介」はリズムボックスを使っていて面白いのだが、それだけではなく歌詞が良く、これを聴くと家族持ちでありながら、さすらいの旅に出たくなってしまう困った名曲である。

なので、ジャックスや早川義夫の音楽を聴く時は、つげ義春の漫画か随筆を読む事をお勧めする。絶対に良さが倍増するから…ちなみに私は「貧困旅行記」を買い直してしまった。しかし、この組み合わせで音楽を聴き本を読むと旅に出たくなるというか蒸発したくなってしまうので、ご注意を…