みなさん、こんにちは! 社会保険労務士の横山 勝です。
今回は、僕が顧問先で最も多く感じる、そして最も企業リスクに直結する「誰も読まない就業規則問題」について、社労士としての経験を交えて語らせていただきます。
「就業規則、ありますか?」
「はい、ちゃんと作ってあります!」
…という会社で、実は中身を読んでいる社員がほぼゼロ、というケースが後を絶ちません。
なぜ、労使のルールブックが、これほどまでに「飾り物」になってしまうのか?
読む気にならない、その悲しすぎる3つの理由を、社労士目線で分析します。
理由その1:ビジュアルと中身の「親しみづらさ」
まず、みなさんが就業規則を手に取った瞬間に感じること。
それは「分厚い、硬い、字が細かい」という、三重苦ではないでしょうか。
就業規則は、労働基準法という専門法規に則って作成されます。
そのため、表現がどうしても「堅苦しい法令用語」に偏りがちです。
「本条の定める懲戒事由に該当する行為があった場合、情状を斟酌し、…」
従業員のみなさんからすれば、「結局、何したらアウトなの?」というシンプルな疑問に、回りくどく答えられているような印象を与えてしまいます。
社労士の指摘
ルールはシンプルであるほど守られます。
難解な法律用語の羅列は、社員の理解を遠ざける最大の原因です。
理由その2:「自分のこと」として感じられない内容
就業規則には、会社の根幹ルールが詰まっています。
しかし、その内容が、「今」働いている社員の「目の前の悩み」とリンクしない限り、ページは開かれません。
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「解雇予告のルール」
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「育児・介護休業の細かい法定条文」
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「数十条にわたる昇給・降格の定義」
もちろん、すべて大切なルールです。
しかし、社員が切実に知りたいのは、
「有休っていつまでに申請すれば確実にとれるの?」
「もし病気で休んだら、お給料はどうなる?」
といった、日々の生活に直結する部分です。
社労士の指摘
規則のすべてが均一に重要ではありません。
社員にとって「今、知るべきハイライト」を明示しないと、「自分には関係ない」という誤解を生みます。
理由その3:決定的な「周知不足」
会社は「就業規則を周知する義務」があります。
これは、ただ手渡したり、掲示板に貼ったりすれば良いという形式的な義務ではありません。
にもかかわらず、多くの会社では、
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入社時、他の書類に紛れて「一応、目を通しといてね」と渡される。
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「ここ、サインだけお願い」と、形式的な署名を求められる。
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その後の説明会やフォローアップが一切ない。
これでは、従業員は「会社も真剣に読んでほしいと思っていない」と無意識に感じてしまいます。
社労士の警鐘
周知が不十分な就業規則は、裁判や労働トラブルの際、「効力がない」と判断されるリスクがあります。
ルールがあるのに、会社を守れない。
これほど悲劇的なことはありません。
まとめ:規則は会社と社員の「共通言語」です
就業規則が「あるだけ」の状態は、会社にとって大きなリスクであり、従業員にとっても権利の放棄を意味します。
「読む気にならない」を卒業し、ルールを共通言語にするためのアクションこそ、これからの労務管理の最重要課題だと僕は考えます。
【会社さまへのお願い】
まずは「ハイライト」を作ってください!
分厚い冊子を渡すのではなく、「社員が特に知るべき5つのポイント(有休、残業、SNS利用、など)」を抜粋したA4一枚のダイジェスト版を作り、これを説明する時間(10分でOK)を設けてください。
たったこれだけで、周知の質は劇的に変わります。
【従業員のみなさまへのお願い】
面倒でも、3つのキーワードだけ確認してください!
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賃金(昇給・評価のルール)
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休暇(有休・病欠のルール)
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服務規律(SNS・ハラスメント防止のルール)
これらはあなたの働く環境と権利に直結する部分です。
自分の身を守るために、「知らなかった」という状態から脱却しましょう。
就業規則を「活きたルール」にする。
その一歩を、今日から踏み出しましょう!