都構想経済効果の発現時期と財政シミュレーションへの反映について
結論
今回の法定協議会では
・都構想により特別区を設置すれば経済効果額が出てくる。
・総務省報告書によれば発現時期は5年経過後から段階的に出始めて概ね10年でしっかりでてくる。
・現在の財政シミュレーションが良くなること。 が分かりました。
書き出したらなんか止まらなくなっちゃうんですけど書きます、とにかく。
前回は都構想の経済効果について発現の蓋然性、反論への反論などについて記載した次第です。
今回はその発現が確かなものとした上で財政シミュレーションへの反映などについて記載します。
この論点は、そもそも経済効果に消極的な方々から「経済効果の発現時期が不明だ」とのご指摘があったため、この反論もかねて立案したものです。
経済の専門家でもある嘉悦大学の方々からも評価頂いたことからも、経済効果発現の時期として今後しっかり主張していきます。
再掲ですが、こちらが経済効果の発現イメージ。
オーソドックスな研究である自治体規模についてのU字カーブの観点から適正規模に近づくことで財政効率化効果が見込めるとの試算が今回の本旨。
その効果の具体的な発現時期についての考え方。
総務省が平成の市町村合併時に出した報告書。
これは総務省が平成18年に発表した「市町村合併による効果について」という報告書の抜粋。
報告書では、合併後の自治体の歳出水準は、合併後の自治体と同じ人口規模の自治体の水準に効率化されるという考え方のもと、平成11年4月~18年3月における合併市町村557団体を対象に効率化効果を試算。
具体的には合併後の市町村と同様の人口規模の団体の歳出額と、合併前の構成団体の歳出額の合計額を比較。
その結果、合併直後はシステム統合などで一時的に経費が増加するものの、概ね合併後10年以降で年間約1.8兆円の効率化効果額が出てくると試算されています。
そして上記のグラフが1.8兆円の効果額が出てくる時間的なイメージ図。
イメージ図では、効果の発現時期について、合併後5年目ぐらいから徐々に効果額が出始め、概ね10~15年後には完全に発現することが示されています。
市町村合併と特別区への分割という違いはあるが、効率化効果額の算出方法が、どちらも同程度の人口規模の自治体の歳出額と実際の歳出額との差を比較し、その差額が効率化効果額と試算されており、適正規模に近づくことによる効率化効果という観点からは同じものです。
特別区の設置を2022年(令和4年)とした場合、特別区長の2期目となる概ね5年後の2027年(令和9年)から効果額が出始め、設置後10年の2032年(令和14年)を過ぎる頃には概ね1,100億円が出てくるということになります。
次に、財政効率化効果が特別区の自治体運営にどれほど影響を及ぼすのかについてです。
制度改革によって生み出される財政効率化効果、年間1,100億円が、特別区の自治体運営(財政シミュレーション)にどう影響するのかを試算しました。総務省報告書に基づき、設置後5年後の2027年から効果が出始め10年後から完全に出てくると想定しています。
財政効率化効果1,100億円は、その半分の約500億円が社会資本の整備にまわされることから、実質的には、残り半分の500億円が財政シミュレーションの好転につながるとの認識です。
その財政収支へ寄与する500億円を、財源対策後の財政シミュレーションへ反映したものが上記の表になります。
財政シミュレーションは一般財源ベースであることから、反映にあたっては、一定の仮定を設定しています。
仮定条件の1つ目に記載のとおり、今回の効果額は事業費ベースであることから、効果額の半分を一般財源としてシミュレーションへ反映。
また、試算にあたっては、財政シミュレーションは仮定条件の2つ目で記載のとおり、設置後5年経過後から約10年間かけて段階的に発生していくと設定。即ち、設置後5年目(2027年)に25億円の効果額が発生。その後、毎年25億円の効果が増加し、その10年後(設置後14年目(2036年))に250億円に到達すると仮定。
ちなみに、総務省の報告書で記載のあった合併直後の経費増加分は、特別区設置コストとして既に財政シミュレーションに反映されている状態です。
この結果、財政効率化効果額を盛り込むことで、シミュレーションの最終年の2036年にはケース1の場合は現行の1,371億円が2,746億円へ
ケース2の場合では2,912億円が4,287億円とシミュレーション期間内でも1,375億円が増加することになります。
(参考)ちなみにケース1,2の考え方。
現行の交付税制度に基づくとケース2が適用されると考えています。
この効果は、時間が経過すればするほど、財政シミュレーションに貢献する効果です。
以上、今回の法定協議会では
・都構想により特別区を設置すれば経済効果額が出てくる。
・総務省報告書によれば発現時期は5年経過後から段階的に出始めて概ね10年でしっかりでてくる。
・現在の財政シミュレーションが良くなること。
など確認できました。
これらは、設置コストを上回り、年を追うごとに特別区の財政収支は非常に安定化することが明らかになった次第です。
以上が経済効果の発現時期と財政シミュレーションについて、でした。
次回は「コスト」と「効果」の議論についての考え方について記載します。
あと知事が最後に述べておられたグラビティ効果や経済波及に関する効果など、さらなる効果額の上振れについても追って記載します。
・・・・なげえ