前回からの続きです。

 

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UKツアー大成功にも関わらず

ミカさんとの別れからバンドは解散。
そして、安井かずみ氏がパートナーとなる。
その後も高橋ユキヒロ氏や小原礼氏、高中正義氏、坂本龍一氏など
名プレイヤーたちをチームとしてどんどん新しいことに
挑戦していくのですが、このあたりからだんだん見ていて気持ちが
重くなってきました。

ミカバンド解散以降のトノバンの音楽に、当時も今も
個人的にあまり興味がもてていないのです。
ミカバンドが持っていた「雑味」がその後の音楽では
徐々に失われ、代わりに「洗練」と「高級趣味」をきわめて
行った(1個人の未熟な感想です)。

デビュー以来長い間苦楽を共にしてきた新田和長氏が
映画の中で語りました。
マッスル・ショールズでのレコーディングで
チームが渡米した時に、普段通りTシャツとジーンズで
スタジオに行ったら、同行していた安井かずみ氏から、
「私たちと行動するときは服装に気をつけて欲しい」と
言われたそうです。その時新田氏は
「ああ、俺たちがやってきたこととは違う方向に
音楽も行っちゃったんだなあ」と感じたそうです。

まさにここに真実がある気がします。

1989年以降サディスティック・ミカ・バンドは

ゲストボーカルを迎えながら3回再結成されますが、

いずれも短期限定の活動でした。
その活動については映画では一切触れられていません。

安井かずみ氏の死去後、ソプラノ歌手の中丸三千繪さんと
再々婚されますがその後離婚。そのくだりも映画には出てきません。

調度その頃かな、六本木でトノバンを2回見かけたことがありました。
一回目は喫茶店「クローバー」で。
二回目はスーパー「明治屋」で。
あの長身と風貌ですから黙っていても目立ってしまいますが、
明治屋の時は黒のオーバーサイズのコートで
店員さんに何か大声で親し気に話しかけていて
ちょっと「困ったちゃん」風でした。
寂しいのかな、なんて勝手な想像をしました。

映画の中で、トノバンは中学・高校時代登校拒否の
傾向があったこと、周囲に対し常に「居心地の悪さ」を
感じていたらしいことが語られます。
その居心地の悪さは、個の強い女性達との生活で

一時的に打ち消されましたが、別れによって一層

深まってしまったのではないか、と。

映画の後半を観ていてどんどん気が重くなっていったのは、
華やかな活動の陰で孤独を深めていくトノバンの内面を
無意識に妄想してしまっていたからかもしれません。
これは「愛」なのかな?

 

長くなりました。これで終わり。