平成になりたての頃の話
職場に異動してきた人は40代半ばの男性
申し訳ないけどさえないオジサン(以下仮名で杉本さん)
前の職場でも一緒に仕事をしたことがあるので知っている
大人しくて目立たない、そんな人
ところが
なんとなく変だ
口数が増えた
ちょっと
素っ頓狂ではあるが話すようになった
そして
ウォークマン?を大音量で聴いている
近くにいると音漏れするくらい
そしてそして
歌に合わせて鼻歌までまじっている
杉本さんとは帰りの電車が同じなので、一緒に帰ったことがある
そのときもウォークマンを聴いていたので
何を聴いてるの?
と聴くと、イヤホンを片方貸してくれた
いやん
ラ・ブームみたいじゃん😍
(知らん?)
声の主は裕次郎
そう
石原裕次郎でした
渋い、カッケー
(ちなみに自分は、太陽にほえろ!の中でブラインドをチラ見するボスのイメージしかありません)
片耳で裕次郎を聴きながら
自分がどんなに裕次郎を好きなのか、熱く語ってくれた
この状態なので大音量での説明となり、恥ずかしかったけど
きっと
このさえない杉本さんは(失礼)、転勤で落ち込んでいるところを、裕次郎に元気をもらっているのだろうな(あくまで推測です)
そして自分を変えようとしている
(これも推測)
それからの杉本さんは
職場の休憩中や会議でも発言することが多くなった
的を得ない発言だけど😅
そして
裕次郎を熱く語るのを聞く皆は、だんだんウザくなってきた
でも大丈夫
彼は裕次郎に守られているから
しまいには鼻歌でなく
生声を披露するようになった
そして
周りがそれに呆れて気にしなくなったころ
あっという間に
彼は別の職場に異動してしまった
異動して半年くらいかな
たまたま杉本さんに会う機会があって
最近裕次郎は聴いてますか?
と聞くと
もう聴いてない
と答えた
歌を忘れたカナリアだよ
と彼はぼそっと呟いた
ここは笑うところだったかな😅
結局
彼はもとのオジサンに戻っていた
音楽は人を勇気づける
その影響力はそうとうあるはず
だけど、上手く使いこなせなかった
というところでしょうか
異動というのは
そうとうのエネルギーを消費します
勤務場所、仕事の内容、関わる人もガラポンしてしまうのだから
挫けてしまう人をよくみています
なので
何かの心の拠り所を求める気持ち、すごく分かります
そんな平成初めの頃の話でした
