1年後やっと、幼稚園を卒業して小学校に入学する時期を迎えた。
幸い、この間あった出来事は息子の心に影を落とさず、彼はのびのびと成長してくれた。
しかしある日、私はまたも息子に手を出してしまった。
幼稚園から突然、息子が幼稚園に来ていないという電話があった。
不安でたまらない私は、すぐに仕事先を早退して家に戻り、息子の名前を何度も呼びながら住宅街の付近を必死で探した。
やっと、文房具屋さんのゲーム機の前で遊んでいる息子を見つけた。
私はまたも頭に来て、息子を叩き始めた。
彼は何の言い訳もせず、ひたすら「ごめんなさい」と謝った。
しばらくして私は、その日幼稚園で母親たちが子どものパフォーマンスを鑑賞する行事があったことを知った。
数日後、息子から幼稚園で字の書き方を教わったと聞いた。
それ以来、彼はしょっちゅう自分の部屋に閉じこもり、まじめに字を書く練習をしていた。
天国にいる妻はきっと、息子の様子を見て安心しているだろうと思うと、なんども涙がこぼれた。
息子は成長し、冬がやって来た。
街中にクリスマス・ソングが流れるシーズンに、私の息子は再び問題を起こしてしまった。
ある日、住宅街にある郵便局からクレームの電話があった。
息子が宛先のない手紙をたくさんポストに投函したのだという。
郵便局にとってこの時期は多忙きわまるシーズンであり、息子のいたずらは彼らにとって大迷惑だったのだ。
もう息子を叩かないと心に決めた私は、急いで帰宅して、息子にそのわけをたずねた。
何も説明せず、ただ謝るばかりの息子に業を煮やし、またもや手を出してしまった。
私は郵便局に行って息子の手紙をもらってくると、彼の前に投げ出して、
「どうしてこんないたずらをするんだ!」と怒鳴った。
息子は泣き出して、「それ、ママに送る手紙なんだ」と答えた。
この話に、私は目頭が熱くなった。
懸命に感情を抑えながら、「どうして一度にこんなにたくさんの手紙をママに出すの?」と聞いた。
「前は郵便ポストに手が届かなかったけど、最近やっと届くようになったから、前に書いた手紙も一緒に出したんだ」と息子は答えた。
一瞬、茫然とした私は、すぐに言葉が出なかった。
しばらくして息子にこう話した。
「ママは天国にいるから、書いた手紙を燃やせば天国に送れるんだよ」
夜、息子が寝た後、私は外に出て息子が書いた手紙を燃やし始めた。
何を書いたのかと思い、何通か読んでみた。
その中の一通に、ひどく心が痛んだ。
「ママへ:
ママに会いたい!
今日、幼稚園でパフォーマンス発表会があったの。
ママがいないから僕は学校に行かなかった。
パパにも言わなかった。
パパがママのことを思い出して悲しくなるから。
パパは僕を探していたんだけど、でも僕はパパに悲しんでる自分を見せたくなかったから、
ゲーム機の前で遊んでる振りをしたんだ。
パパに理由を聞かれたけど、僕は何も言わなかった。
毎日パパは泣いている。
きっと僕と同じでママに会いたいんだ。
ママ、僕の夢に出て来てください。
会いたい人の写真を胸の上に置いて寝れば、
その人が夢の中に出てくると聞いたんだけど、
どうしてママは僕の夢に出てこないの?」
もう何があっても、二度と息子に手を出さないと、
手紙を燃やしながら私は妻に誓った