【映画】SPACE BATTLE SHIP YAMATO感想(ネタバレアリ) | ヨコオタロウの日記
ヨコオタロウの日記-yamato.jpg

宇宙戦艦ヤマトの無事を祈って乾杯しようではないか。

宇宙戦艦ヤマト / デスラー総統



ちょっと前に観た「SPACE BATTLE SHIP YAMATO」の感想。
最初に書いておくと面白かったです。

僕が行った時は劇場はガラガラでしたが、結構興行収入もいいらしいですね。

大勢の人が言ってる事ですが「ヤマトだから許す」という過去のヤマト体験の有無があの映画の感想を大きく左右すると思うので、あの映画の感想を一般化するのはとても難しいと思います。そこで、極私的な感想を「ダメだった」「普通」「良かった」の3つに分けて書いてみるテスト。



まず最初に「ダメだった点」。
ヤマトとしての立ち位置を考えても、情状酌量の余地なくダメだと思った所。
もうこれは二つだけです。

まず、古代と森雪のキスシーン。
戦闘で高ぶった感情に流されるがままにキス、というのは良くあるシナリオですが、いくらなんでもあの唐突さは無理。「編集して組んでみたら思った3倍くらい唐突だったけど一度OKしたテイクをキムタクやメイサにもう一度やらせるのもなあ……」という感じだと勝手に予想しているんですが、それでも無理。完全にギャグシーンになっていた感じ。

もう一つは最後の演出の投げっぱなし。
爆発して終わり、ってのはいいんだけれどあまりにも余韻がなさ過ぎ。「さらば~」と同じパターンだけれど「さらば~」には沢田研二の歌があったんですよ!というか、この映画、あそこだけで映画としての評価を下げている気がする。

「なんとかなったんじゃないのか?」と思ったのはこの2点だけ。



次に「普通だった点」
「普通」って何だよ?って感じですが、「いやまあダメだけどヤマトだから仕方無いか」とプラマイゼロになったところ。

まずはシナリオ全体が圧縮されすぎな感じ。
もともとは「一年かけて往復する」というヤマトのプロットを2時間とかに納めているので、あらゆる事が駆け足(キスシーンもそう)。
最初に仲の悪かった古代と空間騎兵隊が仲良くなるところとか、唐突過ぎてついていけない。「365日」を「365時間」とかに変えるプロットにも出来たと思うし、そもそも仲悪い→打ち解けるという流れが本当に必要だったのか?という気がします。
でもまあ、そもそものヤマトが1年航海なんだから仕方無いか……

次。
この映画はアメリカでの「バトルスター・ギャラクティカ」の成功(面白さ)を見て作ったものだと思うんですが、ドラマとしての面白さは到底及んでいない。いろいろ頑張ってるとは思うんですが、似ていたのは戦闘機の発進デッキくらい。第三艦橋を切り離すシーンとか人の命を扱う葛藤を描いてる点でまさにギャラクティカなんですが、とにかく尺が短いせいで感情移入しづらい。
でもまあ、いきなりギャラクティカレベルの面白さを求めるのはそもそも難易度が高すぎるハナシなので仕方無い。むしろここまで良くやったと思います。

次。
CGのクオリティというか映像処理のセンスが変なところ。
「斉藤の死亡シーン」「デスラーのCG」「最後に死んだクルーが古代を取り囲むところ」etc...
なんというか、重要なのにギャグになってしまっている画面が何カ所かにあって気になった。斉藤の死亡シーンなんて、壁にもたれかかった状態とかやりようはあったと思う……思うけれど、斉藤が弁慶の様に仁王立ちになって死ぬシーンとかは様式美なのでリアリティを求めても仕方無い。

次。
ドラマとして後半失速した印象。
ガミラス星に入ってからはルートが不明瞭だし、コスモクリーナーが無くても地球が救えるってあたりの設定がややこし過ぎて没入感を妨げている感じ。
結果として最後にガミラスの都市戦艦(?)が地球を狙った時も何が起きたのかよくわからなくて「絶対絶命だよ!」という感じになっていなかった気が。
でも、まあ他のつまらない映画に比べれば全然まとまっていたと思いますからヨシ。

その他。
・思ったよりヤマトクルーが少ない感じがした。
・佐渡先生がもう少し活躍して欲しい気もした。
etc...

とあるものの、まあイロイロ仕方無い。
完璧だと思える映画なんて無い訳ですし、これはこれでいいと思います。



そして良かったところ!

まず、設定を結構アレンジしていたのが良かった。
双子惑星だったガミラス/イスカンダルを一個の星にしたり、ガミラス星人を精神体にしたり。森雪がパイロットで乱暴な性格なのも楽しかった。原理主義な人にはイヤかもしれないけれど、僕は好きです。

俳優も大変合っていたと思います。
沖田十三の山崎努は思っていたよりも馴染んでいたし、他のクルーも短い尺の中でそれぞれのキャラクターの特徴を出せていました。キムタクが古代を演じる年齢差は気にならないというか、そもそも初代ヤマトの17歳って方が無理があるだろう!という気持ちに。斎藤も細めだったけど乱暴な感じはちゃんと出ていた良かった。うんうん(偉そうに言う)。今回一番良かったのは地球防衛軍司令長官の橋爪功。なんという違和感の無さ……

そして一番良かったのは映画の前半部分。特に冒頭の艦隊戦。
ガミラスが完全に宇宙生命体になっていて「攻撃が効かない!」「以前より強くなっている!」「戦えば戦う程レベルアップする」っていう感じの謎めいた扱いや、空中戦のスピード感も素敵というか、日本の映画で宇宙艦隊戦をやっただけでも素晴らしい。ブラボーブラボー!な気持ちに。



まとめ。

映画としてはアレだけど、ヤマトとしてはアリ。という評価ではもちろんあるものの、ヤマトっていう思い出の映画に挑戦した関係者一同偉いナーと思います。何より作品から作ってる人達の楽しそうな気分が伝わってきたのが良かった。世の中には本当にゴミ(中略)ですからね。

作った人は偉い。そして、これを見て悔しかったり物足りない人は別のヤマトなりガンダムなりを作ればいい、という余地もある。日本SF映画の作品としては大変良い一歩だったんじゃないでしょうか?

二歩目に踏み出せるかどうかは知りませんが。



オマケ1

でも、本当のところ正直に言うと庵野秀明とかに監督して欲しかった。



オマケ2

ゲーム業界に居るアメリカ人な人に「日本のCG映画ヤマト。アメリカ人の目から見てどう思いますか?」って聞いたところ「日本語の授業で初代ヤマトは散々見せられた。最初は面白かったけど、長すぎて途中でウンザリ。あと、ヤマトって聞くと日本の軍国主義時代を感じさせるからアメリカ人としてはちょっとモニョっとした感じになる」との事。

なるほど~。今回のヤマトは全くそんな感じはしないけれど「ヤマト」って自体が海外の人から見ると日本軍国主義の象徴なのかもしれない。でも前回のヤマト(復活編)の安っぽい立ち上がらないニッポン主義は酷かったなー。あんなゴ(以下略)

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□