初音ミクの死 | ヨコオタロウの日記
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あなたがくれた このメロディ
私は ずっと 忘れない

melody... / 初音ミク



「碧いうさぎ」替え歌「白いクスリ」、削除申請の理由をクリプトンが説明
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0908/14/news034.html

「ウチの初音ミク使って変な曲作ったら承知しねえぞ」

だそうで。
この理屈が通るなら

「ウチの Photoshop で変なアイコラ作るな」とか
「ウチの Windows で変な少女に歌わせるソフトなんか作るな」とか通りますな。

まあ、正義がどこにあるかなんてどうでもいいんです。
ノリピーにのっかった話題作りのバイラルなんちゃらなのかもしれないけど、それもどうでもよろしい。

最近、初音ミクの話題を聞くことは少なくなってきました。
その後に続いたソフトも、それほどブレイクせず。ボーカロイド市場は沈静化した様子です。有り体に言うと、飽きられつつある。しょうがない。アイドルなんだから。

そんな、落ち目の初音ミクに「歌を禁じる」という行為を、制作元が自らやる。なんだこの未来世紀ブラジル。

初音ミクの歌でテーマに多く取り上げられていたのは「歌う事」そのものだった訳です。

 「歌う為に生まれた」
 「歌う事が出来て嬉しい」
 「いつか歌えなくなる日が来る」

そういうアイドルの本質を具現化したような儚さがあった訳です。
不完全な音声技術でつたない歌を奏でるソフト。
なんとか人間に近づこうと懸命に歌うバーチャルアイドル(死語)。

それが、まさか自由に歌う事を創造主に奪われるとは。
なんたる皮肉。


初音ミクは死にました。

クリプトンが「白いクスリ」を削除申請した 2009年8月13日 は初音ミクの命日になったんだと思います。クスリで死んだというのもアイドルらしい。

さようなら。
いつの日か、自由に機械達が歌う世界が来るその日まで。
歌う事を奪われたソフトウェアがあった事を思い出す、その日まで。