ゲームファンとゲーム企業 その4 | ヨコオタロウの日記
ヨコオタロウの日記-img10631856172.jpeg
「遊び方にパテントは無いわけです」
/ 山内 溥



会社から帰ろうとしたら自転車の空気が抜けきっていた。
ポンプも忘れた。朝帰ろう。



これまでの概要。

 ・スクエニはファンコミュニティの扱いを失敗してダメージを受けた。
 ・顧客との付き合い方には「物語」が有効なんじゃないだろうか?
 ・任天堂は割と良好な「物語」を構築しているように見える。
 ・しかし昔任天堂には「ポケモン事件」があった



今ではすっかりイイ会社として万人に(?)受け入れられている任天堂。
でも、丁度10年前にあった「ポケモン同人誌事件」があった。
「ポケモン」「同人誌」「事件」で検索すると今でも色々出てくる。
知らない人の為に書いておくと、

 ・ピカチュウのアダルト同人誌を書いていた女性が居た。
 ・任天堂が手を回した結果、いきなり逮捕された。

ピカチュウのエロ本もどうかと思うけれど、まあ同人誌というカテゴリではごくありふれたレベルの内容だし、部数から考えても明らかに個人の道楽だった。簡単に言うと「よくある同人誌」だ。

にも関わらず、任天堂が警告も訴訟も行わずにいきなり逮捕に持ち込んだ。
コミケが一般化しつつある中で、個人で少部数を出版する人間を警告も無しでいきなり逮捕に持ち込むのは「非常に珍しい話」だった。
結果として、この事件は同人誌界だけではなく一般メディアも報ずる程の社会問題化する事になる。



ここから先は全部想像で書くけれど、任天堂は「ポケモン同人誌事件」があれだけの大事になるとは夢にも思っていなかったんじゃないだろうか。

おそらくは同人誌を知らないような弁護士と社員が、一般人からのタレ込みを基に調べてみたらピカチュウが性器剥き出しでSEX(※)している漫画が存在して仰天。一般漫画との区別もつかず、刑事告訴っていう荒技に出たというあたりだと思う。

※そういえばピカチュウはオスなのかメスなのかどっちだろう?



あの事件以降、任天堂が同人作家を訴えたり警告したりする事は聞かなくなった。
というより、直接的にユーザー個人を任天堂単独が攻撃することが無くなった。

個人に近い層(たとえば Winny とかマジコンとかでも)を攻撃する際は必ず自社「だけ」にダメージが及ばないように他の企業と徒党を組むようになった。マジコン対策にしてもドラクエ4DSのような派手な防御は行わず、他の企業に追随する程度の対策しかおこなっていない(と思う)。

一方、対企業への攻撃は全く手をゆるめず、2001 年にエンターブレインを訴えたりもしている(ちなみに任天堂は負けている)。

全くもって想像だけれど、元々顧客重視だった任天堂社内ではポケモン同人誌事件を教訓として「一般人を攻撃するな」というセオリーが出来たんじゃないだろうか?
もしくは、訴えたり攻撃したりする際にブランドイメージが損なわれないかチェックするような構造……たとえば、法務部(攻撃部隊)が行動する際には必ずカスタマーサポート(防御部隊)の評価を経ないとダメだとかそういう仕組みが生まれたのかもしれない。

それは最終的な損得を計算しての事かもしれないし、本当に顧客に優しくしたい人間達が経営層に居るのかもしれないと。にかく、任天堂は法的な決着よりも「任天堂は顧客に優しい」という物語を守る事を選んだ。
そう思える。



じゃあ、スクエニは任天堂のように「顧客に優しい」という物語を守る企業になるのか?
はたまた、ひたすら攻撃する白血球のような企業になるのか?(コナミやコナミやコナミのように)

仮定と妄想にまみれた未来日記は誰に読まれているのかも判らないママ続く。