どうぶつしょうぎと、対戦ゲームの「飽き」について。 | ヨコオタロウの日記
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人に勝つより、自分に勝て。
/ 嘉納 治五郎



がんばれ女子プロ将棋協会‐どうぶつしょうぎ
http://prof.suemeweb.com/log/eid1298.html

面白そう。
買ってもいいけど、誰か一緒にやってくれる人が欲しいなあ。



というところで、なんで「どうぶつしょうぎ」みたいなプリミティブなゲームを「面白そう」と思ったのか。ちょっと考えてみる。
※長い割にたいしたことを言ってないので注意。

「対戦ゲーム」の中でパッと思いついた代表的なモノは「格闘ゲーム」と「パズル」。
やったやった。「スト2」も「ぷよぷよ」も学生時代に死ぬほどやりましたよ。
でも今本気でやろうとは思わないんだな。これが。

だって勝てないですから。
当て身投げとか、ガードキャンセルコンボとか、多段連鎖組みとかを平気で作ってくるような上級者ばかりの世界に、迷い込んで何が出来るだろう。今から研鑽を積んでそのレベルに到達するのはいつになるだろう。そうやって到達した世界でもようやく上級者と対等になれるに過ぎないんじゃないか? という大人な判断が働いてしまい、頑張ろうという気になれない。



対戦ゲームのプレイヤースキルの進化のフェーズとしては以下の二つに分かれるように思う。

 発展期
  こうすれば勝てるんじゃないか?という試行錯誤の時期

 成熟期
  一般人レベルの各戦術はほぼ解析されてしまっている状態

発展期のゲームでわいわいみんなで楽しんでいるウチはいい。
けれど、成熟期の「ああっ、そのキャンセルコンボつながるのかよ!」的なレベルは、一般人にはなかなかたどり着けない。しかもマズイ事に、対戦ゲームは対人戦を商品バリューにしているため、一般人は高位レベルにいきなり放り込まれるわけだ。
格ゲーの一人プレイだけをやって満足するヤツはあまり居ない。

既に成熟期だった囲碁や将棋を投げ出し、マリオカートやスト2に飛びついた過去の素人。
同じように成熟期を迎えた格ゲー・レースゲーは、今の素人には近づきがたいジャンルになってしまった。



マニアが悪い、という話ではない。
プレイヤースキルを上達させて、発展期~成熟期というプロセスを楽しむゲームである以上、マニアの誕生は必然だ。
特にネットワークが発達してからは、世界レベルでのマニアが誕生・集合するために、成熟へのスピードが加速してしまっている。

弱者同士をマッチングさせるようなサービスが有効か?という点も個人的には疑わしい。
今、囲碁連盟が「弱い人を集めた大会を開催します」と言って、素人が囲碁大会に参加したいと思うか?という話に近いからだ。ミクロレベルで勝てても、全体として上級者が存在するには変わらなければモチベーションは上がらない。そこに行くのは、昔囲碁が好きだったけど諦めた人と「隣に囲碁好きの幽霊が居るので上達したい」と考える少年くらいだろう。



「どうぶつしょうぎ」をやってみたい、と思わせるのは、今の将棋が持っているマニアイメージを払拭しているからだ。つまり「僕でも戦術を編み出せるかも」という幻想がそこにはある。

実際には将棋のマニアに有利な作りになっていると思うけれど、素人レベルでは将棋文化は死滅しているので問題無い。隣の新人をつかまえて「『どうぶつしょうぎ』やろうぜ」と言っても警戒されないだろうし、実際に楽しくプレイする事が出来る気がする。



では、「発展期」を延々と続けられるようなゲームはどうか?
確かにそれならずーっと対戦開拓の楽しさを維持出来るが、固定の上級者が存在出来ない競技の世界はちょっと想像しづらい。
ルール改変可能だけど、何故か周知されるようなゲーム?
もしかしたら、可能かもしれないけれどパッとは思いつかない。

ゴルフやスキーみたいに、最終局面は勝敗を決する競技にも関わらず、素人レベルではプロセスを楽しむレクリエーションに変質させるのも一つの手かもしれない。それは対戦ゲームというよりは協力型のMMOみたいなものになるだろうけれど。



そもそも、ビデオゲームはある程度で飽きられなければいけない。
そうでないと企業の商売として成立しえない。
その「特定のゲームが飽きられるように作られている」という構造が「特定のジャンルの滅び」に結びついているのかもしれない。

「飽きられるように作られていない」と思うのであれば、それは間違っている。
新作が出れば、ほぼ必ず旧作はプレイされなくなる。新作を出す事自体が、旧作を死に至らしめる理由だからだ。

将棋や囲碁のように、ある時にルールが固定化された状態でアップデートされなくなれば、そのゲームは長く生き残るだろう。
ただし、ゲーム業界の死と引き替えだが。



いろいろ考えるとなかなか大変だけれど、一応頑張って考えてみよう。

 ・GTAみたいな箱庭型ゲーム。
 ・その上で鬼ごっこ的なゲームルールを実装。
 ・月に一度、グランドチャンピオンを決定するトーナメント実施。
 ・ゲームルールは毎月更新され、古いゲームルールは遊べなくなる。

子供の頃の校庭遊びを、ゲーム上で。
でも飽きそうだなあ。これも。

皆さんも永久に飽きないような対戦ゲームを思いついたら、ご連絡ください。
パクって大金持ちになります。