手がサラサラ | よこけんの右往左往

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「よこけん」こと、 ミュージカル俳優、横沢健司のひびを綴った日記です。

 手がサラサラの日はピンチ。


 オープニング。黄泉の国の裁判で証言するために、ハプスブルグ家に関わった死霊達が、棺から這い出してくる……。

 実際には、そんなにたくさん棺に入れないので、半数以上は袖や棺の裏から登場する。

 その際、僕は裏からよじ登って棺の上に登場するのだが、この時に手がサラサラだととてもヤバい。

 2mを超える大きな棺の裏には、装飾に紛れ込ませた取っ手が幾つかついている。が、本来上がるために一番必要な最上段、つまり棺の上の面には何も無い。しかもちょっとオーバーハングしている。最後の一段は、手の平で面を掴んでよじ登るのだが、たまに、体調によっては手の平がサラサラの事がある。こうなるといけない。摩擦係数が足りない。

 それでも、大抵の場合はどうにかなるのだが、一回だけ本気でヤバいと思った日があった。「あ、これダメだ」と思った瞬間、いつくかババッと代替案が頭の中をよぎったが、と同時に身体に力がみなぎった。

 次の瞬間には、手掛かりが無い状態で足を蹴り、ちょっと反りながらも上面に手を真上からついてよじ登っていた。火事場の馬鹿力というやつか。人間てすごい。


 以来、なるべく登る直前に手の平をしっとりさせてから取り掛かるようにしている。千秋楽まで、無事に登り切れますように……。