トム・クルーズ
トム・クルーズは "チャレンジ" という言葉が好きでよく使う。不可能、無理だといわれることにチャレンジし、努力してそれを克服することが大好きなのだ。
映画でアクションシーンを演じる時も、一切、スタントマンを使わない。『ミッション・インポッシブル」の1作目では、ロケ先のホテルの一室をジムに改造したと評判になった。
そのトレーニングの甲斐あって、ブランコに腹ばいに乗るような形で吊り上げられた体を、床面と水平に保って観客を驚かせた。
2作目では何100メートルもの断崖をロッククライミング。シリーズ最新作の3作目でも、道路に横たわったトムの体の上を、片側の車輪を上げて傾いたトラックが通過するという、危険きわまりないシーンを撮影している。
どうしてそんなに危険なことをやるのか。もちろん、「チャレンジが好きだから」だ。
「高いハードルを目の前にして、自分はこれを飛び越えられるんだろうかと思う瞬間が好きなんだ。そんな時は、自分にできるかどうか確かめたくなる。そして、チャレンジしようと決めるとアドレナリンがバッと吹き出す。あのエキサイティングな感覚が好きなんだ」
チャレンジについて話し出すと、それでなくてもキラキラしているトムの目が、熱を帯びてさらに輝きを増す。
「この性格は生まれつきだと思う。子供の頃は本当に無茶だった。4歳の時に、屋根から飛び降りて気絶したことがあるんだ。パラシュートで落下するG・1・ジョー人形を持っていたんだけど、ある時テレビでパラシュートの映像を見たら自分でもやってみたくなって、シーツを傘にして飛び降りてしまった。飛ぶほうにばかり気がいって、危険かどうかなんて考えもしないんだから、子供だよね。それからは、危険なことをやる前にきちんと情報を仕入れなくちゃって反省した(笑)」
「人生にはいろんなことがあるってことだよね。でも、僕はすごく忙しいからね。父親で、プロデューサーで、俳優で、婚約中の身であり、息子でもあるし、次から次へ選択と決断が押し寄せてくる。だから他のことはあまり気にならないんだよ。
それに腹を立てることも少ない。怒っていると……疲れるし(笑)、時間が無駄になるだけで、問題の解決にはならない。怒っている暇があったら、問題を修復するために何をしたらいいかと考えているほうがいいなあ。
人間は誰でも失敗することがあるけど、肝心なのはその失敗から学んで先に進むことなんだ。僕の人生で重要なことは、いい人間であること。いい父親、いや最高の父親になりたい。それにいい夫にもなりたい。そして何より、いい映画をつくりたい。周囲の騒ぎより、そうしたことのほうが、僕には重要なんだ」
このインタビューで、「もうじき生まれてくる子供のことで興奮しっぱなしだよ」と笑っていたトムだが、4月18日に無事に女の子が生まれ、スリ(Suri)と名付けられた。
初めて我が子の誕生に立ち会った感想は、「神秘的で力強くて、言葉で言い表せないほど感動した。まさしく願っていたとおりの体験だった」ということ。その赤ちゃんを連れての結婚式は秋に予定されている。
森山 京子「トム・クルーズ」
Focus on People
仕事という冒険、家族との幸せ
Challenging Life
Tom Cruise
SKYWARD
2006年6月号
JALグループ機内誌