オーラ
仏像を見ると光背をせおっている。あるいは頭に円型の光がある。彫刻だと木や金属や石でがっちり頑丈につくられている。
あれが子どもの時にはどうも不思議でしたね。つまりオーラ(AURA)、人や物が発する霊気を視覚的に表現したので眼には見えないものだから不自然なのは仕方がない。
オーラというのは、何も神仏や聖人といった存在だけではなくて、俗人の中にもある。パーティーなんかで人気絶頂の映画スターが入ってくるとスポットが当たったように光り輝いて見える。
アイドルも同じです。やはり光背をせおっている。ところが人気が落ちるとその途端に光は消えてしまう。
カメラでは決して写すことはできない。それなのに見える。見えるというより感じると言った方がいいかもしれませんが。
政治家にもスポーツマンにも漫画家にもある。郷土の大先輩横山隆一先生にも、超天才手塚治虫氏にも立派な光背が見えた時がありました。
本人には見えない。キリストも神仏も自分の頭に光の輪がついていたり、光背をせおっていることには気づいていなかったと思いますね。
でもオーラというのはたしかにある。絵や彫刻で見るのとはちがうが、ある瞬間に光り輝く。多分皆さんもオーラを発する人に逢った経験が何度かあるはず。
ところが全く生きていないもの、たとえば漫画のキャラクターにもオーラがあるんですね。手近なところで自分の作品を例にあげるとアンパンマンにはオーラがある。
でてくるだけで明るくなる。シリーズには2000種類以上のキャラクターがあるが、他のキャラクターは人気はあってもオーラを感じない。アンパンマンの光をうけてそれを反射して光っている。
面白いですね。なぜそうなるのかは解りません。偶然のえにしでこのキャラクターに巡り逢えたのは幸運でした。
手塚治虫氏にも無数の人気キャラクターがあるが、オーラを放つのは鉄腕アトム。ディズニーの場合はミッキーマウス。登場しただけで何もしなくても存在感がある。
時々全く素人のひとにアンパンマンの着ぐるみに入っていただくことがある。仕事が終わって感想を聞くと、「人生観が変わりました」という人が多い。どういう風に変わったのかよく解らないがとにかく気分は良さそうである。
南伸坊氏の顔面学(?)によれば歴史上の人物になりきって顔面をメイクして似せてしまうと、精神もその人物になってしまうそうであるが、アンパンマンになりきればアンパンマンのオーラが自分の身体からもでて細胞が活性化するのではないか。
すると心理療法に応用できるかもしれない、なんてね、思う時もあるがオーラわかりません。
やなせたかし「オーラ」
オイドル絵っせい 149
2006年4月1日付け
高知新聞夕刊