格差拡大 | 月かげの虹

格差拡大


【格差拡大】固定化避ける実効策を

 大手と中小企業、正社員と非正社員、都市と地方など、さまざまな格差の広がりが社会のあちこちで指摘されている。

 こうした傾向をあらためて示すように、日本世論調査会が今月行った調査で、所得格差の拡大を感じるとの回答が87%に上った。

 景況感では、景気好転とみる人がその理由として「消費の回復」を最も多く挙げた。一方、悪化と判断する人の主な理由は「消費は未回復」だ。所得の差で必然的にばらつく消費動向が如実に現れたといえよう。

 自由経済下で競争と努力の結果として格差が生じるのはやむを得ない。ただし、競争に敗れた者の切り捨てや放置は格差の固定化を招き、社会の成り立ちにも甚大な影響を及ぼす。

 所得格差を感じる割合が最も高い30代は、就職がバブル後の氷河期に当たり、ニートやアルバイトなどが特に増えたといわれる。「一億総中流」が崩れ、要援護世帯や貯蓄ゼロ世帯の増加も指摘される。

 こうした現象は、晩婚化や少子化に拍車を掛け、経済社会の持続的発展にも影を落としかねない。親の世代の所得格差が、子どもの進学・就職先の格差に波及する可能性を憂慮する声も少なくない。

 リストラ断行などで業績を回復した企業には、ようやく採用枠拡大や賃上げの動きもみえだした。パート・アルバイトから正社員への転換を促す仕組みや、実効性のあるニート支援策の構築も求められよう。

 格差拡大は小泉構造改革の「負の側面」ともいわれるだけに、今国会ではライブドア事件などの4点セットに並ぶ論点となっている。

 与野党とも自らに都合のいいデータを掲げる場面が目に付くが、党利などに絡めず、改革の功罪をしっかり検証し、真摯(しんし)に論議を深めることが必要だ。

 「行き過ぎた改革」批判に「格差発生は別に悪いことではない」と反発する首相も、「弱肉強食社会」を生み出すことは否定する。「ひとたび挑戦して敗れた者も、次に勝つ機会を提供したい」とも述べている。

 確かに、各種の格差固定を避ける上では、「チャンスの格差」排除が不可欠だ。首相には機会の平等保障に向けた具体策を明示する責務がある。

 世論調査は、関東と北海道を両極とする地域間の景況格差を再認識させる結果にもなった。地方圏の底上げも政治の重い課題である。

2006年3月22日付け
高知新聞朝刊 社説