出来ちゃった婚
シェークスピアが18歳で結婚したのは1582年11月。翌年5月には長女が誕生しているから、いまでいう「できちゃった婚」だったのだろうか。
米語には、妊娠した娘の親から銃を突き付けられて結婚に踏み切る、「ショットガンウエディング(マリッジ)」という言葉がある。銃こそないものの、日本でも似たような例は少なくなかっただろう。かつては望ましい形の結婚とはされていなかった。
ところが、いまやかなり一般的だ。2004年に生まれた第1子の4人に1人強が「できちゃった婚」による出産で、1980年の2倍以上。25歳未満の出産ではこのケースが多数を占めている。性に関する意識や行動、価値観の変化などが絡み合って生じた流れだろう。
「妊娠したから結婚へ」を裏返すと、妊娠がなければ結婚しなかった、にもつながる。その一方では、晩婚化や晩産化の大きな流れは全く変わっていない。将来の日本の人口を左右するといわれる第2次ベビーブーム世代の女性たちも、その軌道を走っている。
いま30代の前半だが、その半数以上が30歳までに赤ちゃんを産んでいないという。少子化が進むのも当然といえば当然。団塊の世代、第2次ベビーブーム世代に続く第3の塊を政府は期待しているようだが、現状では願いはとてもかないそうにない。
早婚・早産と晩婚・晩産、そして無婚・無産と、さまざまな形が同居する日本社会。結婚や出産は個人に属する問題だけに、打つ手はますます難しい。
2006年3月6日付け
高知新聞朝刊
小社会