考古学の研究者が、


現代科学じゃ到底発明出来ない

反重力装置を使ったタイムマシーンを発見し

若い頃に何度も古代を行き来していました。


その人は現代の常識を覆す発見と発表を繰り返し

世界に新しい考え方やアイディアを沢山もたらし

考古学の世界だけではなくて

現代地球の文明を促進させることに大いに貢献したのです。


彼は博士となり

研究生を沢山指導するようになります。


そして自分が年を取り、

終活を見つめ始めた時に 


研究生たちをタイムマシーンで

古代に連れていくことを決めます。


常日頃から博士は

「どのようにしてこれだけの世紀の発見が出来たのですか?」という質問に対して


決まって

「タイムマシーンを見つけたので過去を旅してきたからです」と(正直に)答えてきていました。


世間の人はジョークが好きなユーモアのある好好爺と博士を評価していましたが、生徒たちはそれが本当のことであると知っていました。


何故なら、博士から学べば学ぶほど

彼の話は過去を実際に見てきたとしか言えないほど細部に渡って細かく語られ、


また現代人の脳内から想像されたとは到底思えない内容だったからです。


実際,博士が語る話は

現代社会においては荒唐無稽とも取れるものばかりでした。


けれど最初はそうでも

数年すると時代が追いついてきて

彼の話が普通になり,

世間の人々は当たり前のように振る舞い始めるのです。


それは研究生たちにとってはとても不思議な光景でした。


人々は最初の印象を180度覆し、

博士の説を受け入れたというよりも

最初からそうだったかのように人々が振る舞う光景を何度も目の当たりにしました。


まるで朝目覚めると

パラレルワールドに来てしまったような


研究生たちはそんな感覚に何度となく陥ったのでした。


そんなことを何年も繰り返し続けていた研究生たちは

「タイムマシーンに乗るとどうなるのか?」

という実際の体感に興味をもちはじめました。


実際,タイムマシーンに乗って

どこか別の時代に行くことにも

もちろん興味はありますが


それよりも自分の思考がどのように変化するのか

ということに興味がありました。


タイムトラベラーは

別の時代にトラベルをした時点で

少なからずその時代のエネルギーの影響を受けます。


想念もエネルギーで、

その時代の人々が皆で共有する

集合意識がありますから


タイムトラベルをして別の時代に入ると

その時代の集合意識の想念が

トラベラーに流入していくのではないか。


これらの仮説に行きつきました。


タイムトラベルをすると

どのように自分の精神や思考が変わるのか?


ある日、

博士は研究生たちを呼んで

タイムマシーンを起動することを伝えました。


古代の旅は気力体力がものをいいます。

若い研究生たちは興奮しました。


博士は過去から持ち帰った素材の研究が忙しくなって

タイムマシーンに乗らなくなって

気づいたら10年の歳月が流れていました。


実はタイムマシーンは人知れず

博士の研究所があるオンボロビルの

地下にありました。


老朽化が激しくて

今にも崩れそうなそのビルを

博士が頑なに借り続ける理由はそこにあったのです。


タイムマシーンは博士がたまたま見つけた

ビルの横壁の穴に入れ込まれていました。


タイムマシーンは強力な磁気を含んでいることもあり、

迂闊に持ち出すことが出来ず、その穴に収められ、

移動するとビル崩壊のきっかけにもなりそうで

問題先送りのまま長年放置されていました。


そしてタイムマシーンを

起動する時を知っているのは博士だけで

それがいつ行われるのかは誰にも知らされませんでした。


というのも、

博士自身にも分からなかったからなのです。


不思議な話なのですが、

言葉では誰にも説明ができないのですが

その時が来ると博士には自然にわかるのです。


それで何日も経ったある日の事


とうとう博士は

「そのタイミングがやってきたこと」ことを

研究生たちに告げて


その場にいたメンバーと

運よく連絡がついたメンバーと

数人を引き連れて地下室に降りてきました。


その場に誰がいようと

その場に居合わせたことがその人の運命です。


その時の博士はもうタイムマシーンしか見ていません。


なんとその中には

たまたま居合わせた研究生のフィアンセもいました。

それも全て運命です。


タイムマシーンはいつ起動してもおかしくありません。

今までは1人だったのに突然数人連れていくわけですし、眠っていたタイムマシーンですから何が起こるか分かりません。


博士は横穴な取り付けた鉄の扉を開きました。


その扉は赤黒い古ぼけた防火扉のような扉で

長年そこにあったにも関わらず研究生は誰1人として

一切気に留めておらず

そんなところにタイムマシーンが

カジュアルにおさめられていることに一同は目を丸くしました。


そして中からは既に起動状態にあるタイムマシーンが現れました。

タイムマシーンは異形の身体から磁気を放って

その場にいる全員を沈黙させました。


博士はタイムマシーンを一通り確認し

何度も頷くとやっとホッとしたような顔をして

皆に指示を与え、


あっという間にタイムトラベルが実行されて

研究生たちは全く別の時間に飛ばされたのでした。


研究生の1人が気づいた時、

頭の中で博士の声が聞こえました。


それはまるで自分の身体がなくなって

博士の目で見て博士の頭で考えているような感覚でした。


博士はその新しい時代の物置のようなところで

なんだかわからない物を一つずつ確かめながら

「よしよし,これこれ」と言ったり

「これを一つ一つ持って帰ればいいからな」と1人でブツブツと呟いているようでした。


それからしばらくして

研究生の1人が目を覚ますと

自分は先ほどの物置のようなところに寝ていることに気づき、外に出てみると


見たこともない光景が広がっていました。


周囲に近代的建物は一切なく

緑の山や丘が広がっていました。


そこには人がいて

まるで古代の奈良でも彷彿とさせる服装をしていました。


先に起きたのであろう研究生たちは

先住民の中に上手に溶け込んで

女子は頭に花飾りなどをかぶせられて

先住民の子供の遊び相手になっていました。


自分が寝ているほんの少しの時間で

どうしてこんなに打ち解けているんだろう。


もしかして自分はものすごく長い間寝ていたのかな。


そんなことをぼんやり考えていたら


皆から呼ばれたので輪の中に入りました。


先住民たちはニコニコしながら

彼の顔に泥を塗りつけてきたのですが

彼は何故か彼らが顔を洗ってくれていると知っていました。


なんで知っているんだろう?


そしてここはどこなんだろう。


何故かそこは自分が住んでいた地球ではない気がしました。


地球ではあるのかも知れないけれど

自分が住んでいた地球の過去ではない気がしたのです。


けれどそんなことすらも当たり前に受け入れられている自分が不思議でした。


「あれ、そういえば博士はどこに行ったんだろう」


辺りを探しても博士の姿がありません。


最後に頭の中で聞いた博士の声が思い出されました。


博士は何をしていたんだろう。


・・・


つづく…かもしれません^_^


最後まで読んでくださってありがとうございました。


愛と光をこめて

長谷川陽子