「英語」と一言に言っても、いろんな国で用いられており、国によって発音や単語が変わってきます。
私はオーストラリアのワーキングホリデーで英語を勉強しましたが、その後イギリスに留学して発音を徹底的に直されました。
日本での英語の成績は全然よろしくなかったので、英語が話せるようになったのはオーストラリアでのワーキングホリデー生活のおかげです。
ベトナムで知り合ったイケメンオージー(オーストラリア人)の家に一年間転がり込んで英語漬けの生活を送るうちに、オージーイングリッシュを身につけることが出来たのでした。
その後、演劇の本場イギリスで演劇を勉強するために渡英しました。
当初の私はヨーロッパには興味がなく、どちらかというとアメリカ思考でした。
そのため最初はNYに行くつもりだったのですが、俳優の友人に「芝居を勉強するなら絶対イギリスだ」と渡英を強く勧められたり、イギリス人の監督から芝居の手ほどきを受けて感銘するような機会が続き、イギリスへの留学を決めました。
あの時にアメリカとイギリスのどっちを選ぶかで人生は全く違うものになったと思います。
イギリスの演劇界には演劇検定のようなものがあり、それを受けて良いグレードを取っているかどうかが舞台などのオーディションの選考基準に入ってきます。
演劇学校ではこの演劇検定が学校のカリキュラムの一環としてはいっていました。
級によって課題が異なるので、級にあわせて「シェイクスピア」や「レストレーションコメディ(16世紀王政復興時代の喜劇)」を演じました。
が、そもそもね、そもそもの話ですが、
その国には国の人しか知らない所作や文化があるじゃないですか。
その国の歴史や背景や文化のことなんて全然知らない外人が、いきなりやってきてその国の歴史的な芝居を行うなんて無理な話です。
日本に例えて言うならば、平安時代を知らないアメリカ人が紫式部の役をやろうとしてるようなもので。
ということでシェイクスピアの課題の時はジャンヌダルクを演じました。
ジャンヌダルクはフランス人なので。
が、しかしレストレーションコメディは本当に逃げ場がなくて辛かったです。
というように、私のイギリス留学時代は普通の学校に通っていたわけではないので、いわゆる普通の英語の勉強はしておらず、とにかく発音の勉強を沢山し続けました。
発音が悪いと、観客に雑念が生まれてしまい、演技に集中できないので、とにかく流暢なイギリス英語を話すための訓練をしつづけました。
ところでイギリスで習う英語はクィーンの国の英語ということで「クィーンズイングリッシュ」と呼んでる方がいますが、イギリスで「クィーンズイングリッシュを習いに来た」と言うと笑われます。
クィーンズイングリッシュは女王陛下の話す言葉を指し、一般の人々は使いません。
例えば天皇の使う「朕は」みたいなことだと思いますが、とにかくイギリスで言うと必ず笑われます。(こういう「知らないし!」ってことがよくある)
(余談ですが、女王の話し方とかもジョークのネタになってます。ユーモアとジョークが好きな国イギリスでは自国の女王もネタになります。ユーモアのセンスがないとイギリスでは生きていけません。)
それではイギリスの一般的な人々が使う英語を何と呼ぶか。
「スタンダードイングリッシュ」だそうです。
スタンダードブリティッシュイングリッシュ(長っ)ではなく、スタンダードイングリッシュと言ってしまうからには世界で使われる英語の基準という意図が込められます。
このようにして英国の英語は世界の基準なのですよと言うことで、アメリカンイングリッシュは本当の英語ではないということも暗に含めているわけです。
この「スタンダードイングリッシュ」なる言葉はイギリスのミドルアッパークラスあたりの人たちが使います。
私の通っていた演劇学校にはミドルアッパークラスの人と超下町のコックニーの人がいて、全く違う言葉を話し、考え方も全く違うので、同じ国の人とは思えませんでした。
そしてこの「スタンダードイングリッシュ」という単語は後にも先にもここでしか聞いたことがなく、世界で定めたことではなく、どうやらイギリスのミドルアッパークラスの人たちが勝手に言ってることのような気がします。
因みにイギリスの私の発音の先生は、アメリカ人がRを発音するときに出す舌を巻いたような音を真似して「カリフォォルニィア」と言って、「アメリカ人は自分の国の土地の名前も正確に発音できない」と言って笑っていました。
アメリカ人もイギリスのお高くとまったアクセントのことを馬鹿にしていますし、お互い様な感じがしますが。
因みの因みにオーストラリア人の先生は「私たちオーストラリア人が口を大きく開けて発音しないのは、口にハエが入ってくるのを避けるため」と自虐的なギャグで笑いを取っていました。
話変わりますが、日本では他国の悪口を面と向かって言うことはしませんが、ヨーロッパ人たち(特にイギリス・フランス)は他国への批判を皮肉に絡めてユーモラスに話します。
言われた国の人も黙っておらず、皮肉合戦が繰り広げられるのが日常的でした。
これに参加できない人は社交界では相手にされないそうです。
なんか疲れるし、ヒートアップしてくると本気の喧嘩っぽく聞こえて、外から見ていてかなりハラハラするんですが、周りを他国に囲まれたヨーロッパ人ならではの外交なのでしょうかね。
因みに私は超皮肉屋なのでイギリスでも結構楽しくやっていけました。
コックニーの友達くらいなら言い負かすのは簡単でしたが、やはり文化的背景が異なるので歴史的な話が絡まってくると分からないことばかりでした。
(例えば100年前のなんとか戦争の時の女王の有名な言葉を引用してジョークにされたりしても「しらねぇし!」って話で、炭鉱夫が穴掘った時に口にする言葉とか「しらねぇし!」って、そんなことの連続でした。)
イギリスに一生住みたいかって聞かれたら
物価の高さ、食事の味、天気、、、
などの理由で辛いものがありますが
それでもヨーロッパの文化に触れるのは興味深い経験でした。
現在はタイに住んでいて、タイの人にはやたら流暢な英語は通じないので、もはや正体不明の超ブロークンイングリッシュで会話をしているうえに、旦那とは英語とタイ語と日本語の入り混じった我々2人にしか分からない戦時中の暗号文のような会話をしているので、だんだんスタンダードイングリッシュは忘れ去りつつあります。
オージーイングリッシュももう話さないし、若い時に乱用していたギャングスターのような英語ももう話さないし、それはそれでいいんじゃないかと思います。
お後がよろしいようで^ ^
最後まで読んで下さってありがとうございました。
愛と光をこめて
長谷川陽子