前回、人は笑わせるより悲しませたり怒らせたりする方が簡単と書きました。

芝居もまたしかりで、悲劇の方が喜劇より簡単でした。

誰しも皆、人生において辛いこと悲しいことの一つや二つはある身ですから、自分が悲劇のヒロインになりきって悲劇のどん底の芝居をすれば、観客は自分の人生などと照らし合わせて同調や同情で涙を流します。

なんで悲劇が見たいのか。

みんな頑張って生きてる分、どこかで泣きたいってのもあるようです。

しかし私はそこに物足りなさを感じるようになりました。

悲劇を見たい人は、皆泣く気満々でハンカチを用意してやってきます。

観客が欲しいものを与えてあげればいいだけなので、言うなれば「入れ食い状態」。

演者としてはなんだか手応えが感じられなくなったのです。

それまでは色んな芝居をしていましたが、ある時期から喜劇役者になりました。

喜劇は難しいんですよ。

「笑わせられるもんなら笑わせてみろ!」という観客とか来て、一番前で腕組みして口をへの字にして道場破りみたいにデンッと座っていたりするんです。

そういう客は正攻法ではまず無理なので、

一つのテクニックとしては巻き込む!

いわゆる「客いじり」です。

私はこういう客がいるとまぁ燃えて(萌えて?)しまいます。

下手したら大やけどして、芝居そのものがダダすべりすることもあるんですが、上手くやれれば「サクラだったんちゃうか!」というぐらい場を盛り上げるのに強力な味方にならしめることも出来ます。

「客いじり」は、他の客や演者がヒヤヒヤする場面もあります。

はじめて会った人ですから少しずつジャブを打ち込んで「そこまで突っ込んで大丈夫なの?」「突然怒り出さない?」という境界線を見極めないといけません。

しかも舞台の進行を妨げないように迅速に収束することもいつも念頭に入れておかないといけません。

いじられた人も不快にならないように美味しくしないといけません。

この辺の微妙な機微を瞬時に計算してブッ込む。

そしてそれを成功させた時の快感はエクスタシーそのものでした。

アクション映画のハイライトで、時限爆弾があと数分で爆発するから解除しないといけない!

でも敵もどんどん襲いかかってくるから倒さないといけない!

それら全てをやり遂げて、まさにあと数秒というところで、爆弾解除して世界を救っちまったぜ!

っていうのと同じくらいの達成感です。

ただし、時としてスベることもあります。

こういう時に大切なことは「ハートを強くもつこと」です。

例えどんなに場が白けようと、例えどんなに恐怖のどん底で冬将軍が暴れまくって「寒い寒い寒い!」とみんながコートの襟をたてて両手で自身の身をかき抱いていようと、

絶対に一緒に真冬の国に行ってはいけません。(ハートさえ強ければいっても面白くなるかもだけど^^;)

自分だけは春の陽気の中で

「え?なにかあったの?」

とスッとぼけるくらいの図々しさを持ち合わせないといかんのです。

すると突然シュールな世界に様変わり。

「お前がやったんだ!」

と誰に言われようと

仲間すらも欺く図々しさで

飄々としてることさえできれば、

ピンチなど存在しないのです。

「この世は壮大な芝居のごとく」ですねにひひ

最後まで読んでくださってありがとうございました。

愛と笑いをこめてにひひ

ハセガワヨウコひらめき電球