そうだそうだ。

インドで列車に乗っている時にこんなこともありました。

インドの長距離列車は鬼です。

4人がけのベンチに大の大人が8人位ギュウギュウ詰めで座って、更には頭の上の荷物を入れる網棚にも人が入ってたりします。

そんな猛烈インド列車で何時間も揺られまくり、

疲れて爆寝していた時のことです。

誰かが私の肩をしつこく揺すって起こすのです。

目を覚ましてみると、目の前に薄汚れたサリーを着た大きな女の人…もといオカマが私を見下ろしておりました。

そのオカマはニヤニヤしながら手を出してお金をせびってきました。

暑さ(30度以上の蒸し風呂状態)と疲れとでイライラしていた私は、睡眠を邪魔された腹立ちにオカマに「あっちいけ」と言って再度眠ろうと思って目を閉じたのでした。

すると、まさかの平手打ちが飛んできました。

あまりの驚きにしばし呆然とし、眠気も吹っ飛びました。

そして正気に戻り、オカマを探すと、人混みをかき分けて既に立ち去りはじめていました。( あの足の踏み場もない激混みの列車の中でオカマの通り道だけモーゼの前で割れた海のように道ができるのです! )

血気盛んな若者だった私は「くぅおらぁぁあ!ちょっと待て~っっ!」と呼び止めましたが、

私の周りのインド人たちが全員で私を押しとどめ「関わりになっちゃいけない」と言ったのでした。

なんでもそのオカマの人たちはダリットと呼ばれ、不可触民(アンタッチャブル)な存在だとか。

不可触民とはインド・カーストの最下層に位置し、何千年も家畜以下の生活を強いられている人たちです。

彼らはカーストにも入れてもらえずに「触れると穢れる」とされ、見ても触れても近づいてもいけないのだとか。

インドでは人が人をそのように扱っているのです。

不可触民の人たちは仕事にもつけないので、ゴミ拾いなどをして生きています。

不可触民は当たり前に住む家がありません。

不可触民は人並みの生活を送る資格を与えられていません。

また不可触民は人間として扱われていないので、心無い人間が不可触民の女の子を監禁して売春させたりするという問題がインドでは絶えません。

この不可触民のオカマたちは、関わると災厄が降りかかるので、みな避けて通ることを逆手に取り「私に関わって欲しくなければ金だしな」と金をせびっているんだそうです。

マイフレンドフォーエバーという映画でエイズ患者の男の子が級友にいじめられて、手から垂れた血を皆の方に向けて「僕の血は毒だ」と言って触って伝染ることを怖れたいじめっ子たちが逃げていくシーンがありましたが。。。

オカマ達は家にもやって来て、お金を払わないと家の前で何日も踊ったりたむろしたりして嫌がらせするそうです。

…なんてかわいそうな人たちなんだろう。

自虐的が行き過ぎて、もうどん底です。

不可触民は何があっても不可触民。

生まれ変わるしか救いはありません。

人間って同じ人間を差別して自分を優位に立たせることでしか、楽になれないってなんなんでしょう。

ホッペの痛みも忘れて心が痛くなる出来事なのでした。